2012 Fiscal Year Research-status Report
固相窒素吸収により表面高窒化した生体適合型ステンレス鋼およびβ型チタン合金の創製
Project/Area Number |
24560093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
植松 美彦 岐阜大学, 工学部, 教授 (80273580)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疲労 / 腐食疲労 / 窒素固溶 / 表面硬化 / 窒化物析出 |
Research Abstract |
SUS304を用いて,1100℃および1200℃の窒素環境下で窒素中焼鈍を行った.その際,昇温状態で,封入した窒素の気圧が1気圧(0.1MPa)になるように調整した.また,焼鈍時間は30時間とした.光学顕微鏡観察とEDX成分分析により,1100℃では粗大なCr窒化物が表面近傍に多数形成されるが,1200℃では窒化物寸法がかなり小さく,これは1100℃におけるマトリックスへの窒素固溶量が1200℃より小さいことに起因することを明らかにした.また,表面付近での硬さは1100℃で窒素中焼鈍すると1200℃の場合よりも著しく上昇したが,1200℃の方が窒素の拡散速度が速いため,硬化相深さは1200℃の方が深くなった.回転曲げ疲労試験の結果,表面硬化に起因して1100℃,1200℃いずれの窒素中焼鈍の場合も疲労強度は未処理材よりも大きく向上し,特に1100℃材で顕著に上昇した.しかしながら,腐食環境中で疲労試験を行ったところ,焼鈍材の疲労強度は焼鈍温度や窒化物寸法によらず大気中よりも大きく低下した.SUS304では窒素固溶によって耐食性が向上する事も報告されているが,この場合は窒化物析出によって鋭敏化が生じたためである事を指摘した.一方,β型Ti合金Ti-15Mo-5Zr-3Alを1200℃で0.5,1,2時間窒素中焼鈍(1気圧)したところ,表面にα型Tiが析出するとともに,TiNの析出も認められ,表面が硬化した.窒素はα安定化元素であるために表面近傍にα相が析出し,析出深さは焼鈍時間とともに深化した.β型Ti合金の表面硬化は,窒素固溶,α相析出および窒化物TiN析出の複合硬化である事を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SUS304およびβ型Ti合金ともに,窒素中焼鈍による窒素固溶で表面が著しく硬化することを明らかにしたが,特にSUS304では大気中の疲労強度が大きく上昇することを示しており,生体毒性のあるNiを増やすのではなく,窒素による強化に成功したことは,材料の高強度化という観点からは目的が達成できたと言える.また,表面硬化のメカニズムが窒素固溶のみでなく,CrNやTiNなどの窒化物析出,あるいはα相などの析出に起因することを明らかにしたことは学術的にも重要な成果であり,当初通りの目的が達成できていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
SUS304については,窒素中焼鈍によって大きく疲労強度が向上したが,同時に鋭敏化によって耐食性が低下すると言う問題が生じた.これは粗大な窒化物が多数析出したことによると考えられるため,窒化物を再固溶させるような後熱処理の検討および後熱処理材の組織観察や疲労試験を実施する必要がある.またβ型Ti合金については,若干の疲労試験を行ったもののデータ数が十分でなく,引き続き疲労試験結果の拡充および破壊解析を行う.β型Ti合金についても硬くてもろいTiN相の析出は,疲労強度低下をもたらす可能性があるため,TiNを再固溶させるような後熱処理を検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)