2013 Fiscal Year Research-status Report
応力成分分離可能なμm空間分解能の局所応力測定法の開発
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24560094
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
三宅 卓志 岐阜大学, 工学部, 教授 (70503275)
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Keywords | 局所応力測定法 / 顕微ラマン分光法 / レーザラマン / 実験力学 / 応力・ひずみ測定 / 多軸応力 / 応力成分 / 空間分解能 |
Research Abstract |
応力センサとなるカーボンナノチューブ(CNT)を一方向に配向させながら樹脂中に均一に分散させた単軸の応力センシング膜の作製を行った.具体的には,樹脂硬化時にCNTの再凝集を防ぎ,配向を維持させることができるよう樹脂には,低粘度(約500cps)のUV硬化アクリル樹脂を用い,0.2wt%のCNTを含有する樹脂液を200μm間隔の電極間に滴下し,電極間に±25V,1KHzの方形波を20分間印加して配向させたのち,紫外線を照射して数secのうちに硬化させた. このようなCNTを配向させた膜を樹脂板表面に成形し,4点曲げにより基材の樹脂板にひずみを加えながらセンシング膜のラマン分光測定を行うことによって,応力センサとしての性能(感度,直線性など)を評価した. その結果,膜のラマン散乱スペクトルのピークは,基材のひずみとともに低波数側にシフトし,ひずみを検出できることが確認できた.しかし,スペクトルのピーク波数の移動量はひずみに比例せず,線形関係にないことが観察された.また,各ひずみで膜内の異なる位置の5点を測定したが,5点の測定値は一致せずばらつきがかなり大きいことが明らかとなった. このばらつきの原因について,膜をSEM観察したところCNTが凝集し十分に分散していない箇所が観察された.測定は,80倍の対物レンズで照射光をφ1μmのスポットに絞り行っているが,これはSEM観察されたCNT凝集のサイズと比較して小さく,局所的なCNTの凝集の影響を受けてばらついたと考えられる. 一方,配向については,偏光方向を90°変えてラマン測定を行ってあり,CNTと樹脂のピークの強度比が変化する結果が得られている.このことから,配向度合の絶対値は不明であるものの,膜内でCNTが配向していることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
応力測定用膜の均一性確保に時間を要しているため,研究進捗が計画に比べやや遅れている. 測定は,80倍の対物レンズで照射光をφ1μmのスポットに絞り顕微鏡下で行っており,基材の変形ごとに測定位置が移動することから,同一箇所の追跡測定はできない.したがって,膜内で一定のばらつき範囲内で均一性が確保されないと,測定ごとに測定波数が異なることとなり,多軸にした場合の応力成分分離の精度が保証できない.このため膜の均質性を確保すべく,CNTの含有率や膜厚を変えたり,超音波印加の時間を延長したりと各工程で種々改良を行ったため,実験の数が増加し,研究進捗に遅れが生じた
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Strategy for Future Research Activity |
多軸応力測定のために膜内でCNTの配向を3方向に配向させる方法について検討する.このためには,まずこれまでの研究で明らかとなった膜の均一性の確保が不可欠である.膜の均一性確保のために,CNTの含有率を下げ,また,測定のレーザ照射スポット径を2~5μmと大きくして,空間分解能を犠牲とするがスポット内の平均値が得られるようにして変動を抑える予定である.CNT含有樹脂の塗布方法も滴下ではなく,膜厚を薄く制御できる方法に変更する.これについては,インクジェットの適用もトライする.このようにして,単軸で位置による感度のばらつきの小さい膜を作製できる方法,条件を確立する. 続いて,任意に応力成分比を変化させることができ,顕微ラマン分光装置の試料台に装着可能な2軸負荷治具を作製する.この治具を用いて基材にコーティングした単軸配向膜に2軸応力を負荷し,応力成分間のクロストーク(横感度)が生じないかどうか,単軸の応力センサとしての性能をまずチェックする. 単軸の応力センサ膜が完成したのち,これの3軸への拡張に取り組む.3方向に方向制御した電極の構造と作製方法を検討する.すなわち,電極の形状や配置,電圧印加の方法や印加タイミング制御などにより,面内で3方向に配向させることが可能な方法を検討する. 実部品への適用として,電子部品のはんだ付け部の応力測定を行う計画であったが,研究進捗の遅れから,これの実施は延期する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
センサ膜の安定な作製法の条件確立に時間を要し,これによる研究進捗の遅れのため,予定していた2軸の負荷装置の作製が行えず,これに充てるよう計画していた経費が未執行であるため. CNT含有樹脂の塗布に,インクジェットの利用を計画しており,インクジェットのトライの費用にあてる計画としている.また,インクジェットの適用が良好で,購入可能なグレードのものがあれば購入についても検討する. また,作製が遅れている応力比を任意に変えることができる2軸の負荷装置の作製費に充てる計画である.これにはつかみ部の加工委託費や2軸のアクチュエータとコントローラの物件費が必要であるのでこれに充てる.
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