2012 Fiscal Year Research-status Report
TiO2の熱分解を利用した廉価TiH2からの高強靭性レアメタルフリーチタンの創製
Project/Area Number |
24560099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梅田 純子 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (50345162)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 酸素固溶強化 / 放電プラズマ焼結 / 酸化チタン / 純チタン |
Research Abstract |
酸素固溶強化によるレアメタルフリー高強靭性チタン材の創製を目指し、本年度は、放電プラズマ焼結(SPS)装置を用いた純チタン(Ti)と酸化チタン(TiO2)混合粉末の加圧焼結時におけるTiO2の熱分解挙動解析と解離酸素原子のTi結晶内への固溶現象の検証を目的に行った。回転ボールミル装置を用いてTi粉末とTiO2粒子を混合し、この混合粉末の示差熱重量分析を行った結果、793 Kから1033 KにかけてTiO2の分解を示す吸熱反応を確認し、この温度範囲を用いて焼結体の試作を行った。次に、SPS焼結時における焼結温度および負荷圧力の影響を調査した。673 Kから1273 Kの範囲とし、圧力30 MPa・保持時間1.8 Ksの一定条件で焼結を行った。X線回析の結果、焼結温度が高温になるに従いTiのピークが低角側へシフトし、さらに873 Kから1073 KではTiのhcp結晶におけるc軸の格子定数が顕著に増加した。これは高温焼結を行うことでTi母相中に酸素の拡散・固溶がより進行し、格子間のひずみが増大することでc軸の格子定数が増加したと考える。次に、焼結時の圧力を無加圧から30 MPaの範囲とし、焼結温度1073 K・保持時間1.8 Ksの一定条件で実施した.無加圧ではTiO2粒子が分解しないが、加圧力が増すにつれてTiO2粒子の分解が進行したことから、加圧に伴いTiO2粒子の活性化エネルギーが減少することで酸素の拡散が促進されたと考える。さらに、得られた焼結体から作製した押出材の引張試験を行い強化機構を検証した結果、TiO2粒子添加に起因するチタン母相の強化発現がみられ、その強度増加量は固溶強化理論を用いて算出した固溶酸素による強化作用と良い一致を示した。ゆえにTiO2粒子添加純チタン焼結材の主たる強度機構は、TiO2粒子由来酸素原子による固溶強化であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
粉末冶金法を用いてTiO2粒子由来の酸素固溶強化による完全レアメタルフリー・高強靭性チタン材の創製を目指し、平成24年度は、純Ti粉末とTiO2粒子の固相反応におけるTiO2の熱分解機構を、示唆熱重量分析やX線回析に基づく定量的な解析結果に基づいて考察を行った。その結果、SPS焼結法による添加したTiO2粒子の完全熱分解に要する最適な温度・圧力条件を明らかにした。さらに、次年度課題の1つであるチタン材の高強度化に寄与する酸素固溶の評価に関して事前検討を行った。本年度の研究成果であるSPS焼結最適条件下で作製した、TiO2粒子添加純Ti焼結体を押出加工し、強度特性評価を実施した。実験的検証および理論解析を行った結果、TiO2粒子由来の酸素原子による固溶強化が発現していることを特定した。以上、上記に示したように本年度の課題であるSPS焼結時におけるTiO2の熱分解機構を解明し、次年度課題である高強度化に寄与する酸素固溶に関して事前調査を実施したことから、当初の計画以上に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
TiO2の熱分解により生成する酸素原子を利用した廉価な水素化チタン(TiH2)の脱水素化反応の実証に関して、TiH2への酸素原子の拡散と熱力学的な観点からの還元反応の可能性を検討する。まず、SPSでの焼結温度および圧力をパラメータとし、TiH2の分解と酸素拡散に必要な加圧焼結条件の抽出を試みる。次に、高強度化に寄与する酸素固溶量の定量的評価を、X線回折によるTiのhcp結晶におけるa軸・c軸方向の格子定数の変化に基づき、固溶ひずみ量の変化を算出し、ミスフィット効果による強度増加を見積る。なお、剪断応力と垂直応力の比率が必要となるが、本研究ではSEM-EBSD分析により得られるa軸(0001底面)のシュミット因子の平均値を用いる。また、これまでの結果からc軸方向においてのみ格子定数の増加が確認されていることから、酸素原子の固溶位置を厳密に同定した上で上式を適用する必要がある。そこで、X線回折法を用いて、チタン結晶構造において酸素原子が固溶している位置の同定を試みる。これによりc軸方向にのみ、酸素固溶強化を促進させて耐力向上を図る.また、a軸での格子定数の増加が確認されていない結果についても検証し、hcp構造における0001底面でのすべり変形を拘束させない酸素原子の固溶位置の制御が必要条件になると考える。したがって、hcp構造特有の高強度・高延性を実現するため、ミスフィット効果によるc軸への積極的な酸素固溶強化による高強度化に加え、残留する微量な水素を利用した針状TiH2の分散により、局所的な変形双晶の発生を抑制し、均一変形による高延性発現を試みる。これらの結果を基に、廉価なTiH2粉末の直接原料化によるレアメタルフリー・高強靭性チタン材の製造方法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)