2013 Fiscal Year Research-status Report
溶融フィラーによる高効率伝熱ネットワーク形成とポリマー系複合材料の高熱伝導化
Project/Area Number |
24560107
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
真田 和昭 富山県立大学, 工学部, 准教授 (20363872)
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Keywords | 熱物理学 / 材料試験 / 複合材料 / カーボンナノチューブ / 炭素繊維 / 溶融フィラー / 熱伝導率 / 粘度 |
Research Abstract |
本研究は、表面にカーボンナノチューブ(CNT)を付着させた炭素繊維フィラー含有の高温溶融フィラーとCNT単体含有の低温溶融フィラーを用いて、高効率伝熱ネットワーク構造を形成する高熱伝導性ポリマー系複合材料の開発を目指した理論的実験的研究を行うものである。本年度に得られた結果を要約すると以下の通りである。 (1)低温溶融フィラー/エポキシ樹脂複合材料の熱伝導率は、同量のCNTをエポキシ樹脂に直接分散したCNT/エポキシ樹脂複合材料とほぼ同程度となった。これは、低温溶融フィラーが溶け広がらず、CNTの凝集体を形成したためと考えられる。また、低温溶融フィラー/炭素繊維フィラー/エポキシ樹脂複合材料の熱伝導率は、CNT/炭素繊維フィラー/エポキシ樹脂複合材料に比べて少し高くなった。これは、低温溶融フィラーが、炭素繊維フィラーの間隙で局所的な伝熱経路を形成したためと考えられる。 (2)CNT/高温溶融フィラー/エポキシ樹脂複合材料の粘度は、同量の炭素繊維フィラーをエポキシ樹脂中に直接分散したCNT/炭素繊維フィラー/エポキシ樹脂複合材料の粘度に比べて低くなり、溶融フィラーにより、成形加工性が向上した。また、CNT/高温溶融フィラー/エポキシ樹脂複合材料の熱伝導率は、加熱硬化時に撹拌することで、撹拌しない結果に比べて高くなった。 (3)CNT/炭素繊維フィラー/エポキシ樹脂複合材料と同程度の粘度を有するように調整したCNT/高温溶融フィラー/エポキシ樹脂複合材料の熱伝導率は、加熱硬化時に撹拌することで、CNT/炭素繊維フィラー/エポキシ樹脂複合材料の結果に比べて、約2倍に上昇した。溶融フィラーにより、成形加工性を保ちながら高い熱伝導率を付与できた。しかし、低温溶融フィラー/高温溶融フィラー/エポキシ樹脂複合材料では、熱伝導率は向上せず、今後に課題を残した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、低温溶融フィラーと高温溶融フィラーの作製、溶融フィラーを用いた複合材料の粘度と熱伝導率の評価を行った。高熱伝導性ポリマー系複合材料を実現するための重要な知見は得られたが、溶融フィラーが溶け広がらなかったために、複合材料の熱伝導率が予想通りに向上しなかった。また、低温溶融フィラーに用いた常温で固体状のエポキシ樹脂と炭素繊維フィラーとの接着性が非常に悪いため、溶融フィラーを用いた複合材料の熱伝導率が低下するという問題点も明らかとなった。さらに、高熱伝導率発現のために、溶融フィラーを用いた複合材料の熱伝導特性に関する有限要素解析を行い、微視構造を最適化する必要もある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、今年度に得られた結果と明確になった課題を鑑み、以下の方策で推進する。 (1)常温で固体状のエポキシ樹脂の種類を見直し、高いCNT体積分率でも溶け広がる低温溶融フィラーを開発する。また、炭素繊維フィラーの表面にCNTを付着させたハイブリッドフィラーと、高い炭素繊維フィラー体積分率でも溶け広がる高温溶融フィラーの作製条件を確立する。 (2)溶融フィラーの溶融挙動を考慮して、高効率伝熱ネットワーク構造を形成したポリマー系複合材料の熱伝導特性に関する有限要素解析を行い、高熱伝導化を達成するために最適な低温・高温溶融フィラー配合条件を見出す。 (3)有限要素解析結果に基づき、低温・高温溶融フィラーとマトリックス(液状エポキシ樹脂)を複合化して、高効率伝熱ネットワーク構造を形成するポリマー系複合材料を作製する。また、作製した複合材料の硬化前の粘度と硬化後の熱伝導率の測定、内部構造の観察を行い、高熱伝導性と優れた成形加工性の両立の可能性と伝熱ネットワーク形成手法の有効性を明らかにする。 (4)作製した複合材料の引張・曲げ特性、熱膨張特性を評価し、強度特性を損なうことなく、高熱伝導性と優れた成形加工性を両立する可能性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が生じた主たる理由は、特許出願費用を確保していたが、新規性を証明するだけの十分な結果を得ることができず、出願を延期したためである。 次年度では、特許出願費用として使用する他に、炭素繊維フィラーの表面にCNTを付着させたハイブリッドフィラー、CNT含有の低温溶融フィラー、ハイブリッドフィラー含有の高温溶融フィラーの開発をより一層推進する必要があるため、CNT、化学薬品、実験器具等の購入に使用する予定である。また、作製した複合材料の引張・曲げ特性、熱膨張特性を評価するための試験片を作製する必要があるため、金型等を整備する予定である。
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Research Products
(1 results)