2013 Fiscal Year Research-status Report
確率変動を考慮した複合材料積層補強平板の圧縮特性評価
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24560111
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
末益 博志 上智大学, 理工学部, 教授 (20134661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長嶋 利夫 上智大学, 理工学部, 教授 (10338436)
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Keywords | 複合材料 / 補強板 / 座屈 / 確率論的解析 / 剥離 |
Research Abstract |
補強板の圧縮強度の確率変動は、座屈および座屈後挙動へ影響を与える物理量変動と、座屈後変形の中で補強板の破壊基準となる物理量の確率変動の両方の影響を受ける。 このことを鑑みて、初年度は,①接着部の剥離強度、②板厚、③弾性特性 の項目に関して,統計データの取得実験を実施し,各物理量の空間的な確率変動も考慮した評価を試みた。板厚と弾性特性のデータに関して,平均や標準偏差といった統計量が空間的に変動し一様ランダム過程としてとらえられないことが問題を複雑にすることが判明し、従来の単純な統計処理では空間的な相関を精度よく与えることが困難であるとを判断した.第2年度は、確率量の空間変動を滑らかな関数の和として表し,その有限個の重み係数を統計処理することを試みた。この過程で,空間的に無相関な測定誤差を実際の物理量の変動と若干ではあるが分離できることを示した. 補強板の圧縮破壊起点となることが多いフランジ部端からの剥離発生条件として、剥離長さをゼロとして得られるエネルギー解放率(臨界極限エネルギー解放率)と層間破壊靭性の比較で破壊発生を比較的よく評価できることを示した。第2年度は、この知見から、寸法および材料特性の平均値をもとにモデル化した補強板の圧縮特性の有限要素解析を行い、臨界極限エネルギー解放率を計算した。この解析結果は、以前に実施された補強板の破壊実験により得られた補強板強度と破壊起点とを妥当な範囲で予測しているが、複雑な圧縮特性を完全に表現するには、まだ未知な条件が残されていることが判明した。 最終年度は、2年度までに得られた確率変動を有限要素解析に組み込み、強度や破壊起点などがどのように変動するかを明確にすることが目標である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度までに、積層板の板厚と弾性係数に関して既知な関数を用いて空間的に分布する確率特性の統計処理を行ったこと、隅角部からの破壊条件を実験的に求めたことで本研究課題で予定している数値実験で必要な物理量に関する基礎データが得られたものと考える。これにより,板厚と弾性特性の確率的変動を考慮した補強板の有限要素モデルの作製と圧縮挙動を解析するための基礎が準備された。また確率変動を考えない補強板の数値モデルを作製し、剥離長さゼロの極限のフランジ端でのエネルギー解放率(極限エネルギー解放率)を計算した。この結果はこの研究に先立って行われた補強板の強度実験結果を比較的よく説明している。 上記のように基礎データ取得実験に関しては順調に知見が蓄積できており、これらの量の確率データをさらに.高精度化することが必要であるが、順調に研究が進行しているといえよう。有限要素解析は,確率量の数値モデル化と結果の統計処理という困難な課題が残されているが、基礎解析は可能となっているので、今後の努力で最終強度の確率特性を導くという当初の目標を達成することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年に、基本となる構造及び材料パラメターの確率特性を考慮した補強材のモデル化および補強材の圧縮応答シミュレーション法を確立し、できれば強度と破壊起点の確率特性を明らかにする。 また応力の特異点(パネルとフランジの接着端)から発生するはがれ強度と層間引張強度の空間的な確率特性分布に関して、実験的にデータを蓄積し、より説得力のある強度基準を確立する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の前半に代表者が、5か月間海外研修を行い、英国ブリストル大学にて複合材料破壊問題に関して研究を遂行したが、この間科学研究費からの出費をせず、学内にては大学の経常費の中から消耗品等を出費し、同地の必要経費は個人で支出した。このため、消耗品費等の支出が予定より少なくなったことで年度末に未使用予算が生じた。この予算に関して、年度末(3月27日~3月29日)に、シアトルにて複合材料の研究会が開催され、複合材料のバーチャルテストに関する最新の研究が発表されることが分かり、本研究の今後の進展に大きな影響があることが考えられたので、代表者が多忙のため参加できないので、急遽分担者の長嶋教授に調査及び研究打ち合わせのために出張を願った。宿泊費の領収書が昨年度内に処理できなくなったために少し余分の研究費の残が生じたように見えるが、実質的にはほとんど繰り越してはいない。 分担者の長嶋教授が2014年3月末に海外出張した旅費として大部分を使用し、残りは実験用消耗品として使用予定である。
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Research Products
(10 results)