2013 Fiscal Year Research-status Report
スパッタエッチングにより作製した多機能微細突起物の表面硬化と強度評価
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24560117
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Research Institution | Hiroshima Kokusai Gakuin University |
Principal Investigator |
中佐 啓治郎 広島国際学院大学, 工学部, 教授 (80034370)
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Keywords | スパッタエッチング / 微細突起物 / 表面硬化 / 強度評価 |
Research Abstract |
スパッタエッチングにより作製した微細突起物は、摩擦搬送用のロール、超撥水性膜・塗装用膜・光反射防止膜製造用の型・転造ロールなど、多方面に利用できるが、その寿命を保証するためには、突起物の耐久性向上が必須である。 本年度は、まず、窒素ガスを用いて200Wで2時間プラズマ窒化を行ったマルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2突起物試料について、ナノスクラッチ試験を行った。その結果、同じスクラッチプローブの侵入深さ(5μm)では、プラズマ窒化により突起物の引き倒し強度が約3倍の60μNに増加することが分かった。また、プラズマ窒化を行わない場合には、突起物はスクラッチにより塑性変形するのに対し、プラズマ窒化した突起物は硬いため、曲げ破壊が起こる。ただし、窒素ガスプラズマのみを用いると、突起物の先端がスパッタエッチングされて丸くなる。そこで、アルゴンと窒素の混合ガスを用いて0.5時間プラズマ窒化すると、突起物の形状は鋭いままで、表面が硬くなることを確かめた。 つぎに、プラズマ窒化により硬化した微細突起物が、高分子膜に穴を明けるための型や転造ロールとして、どの程度の耐久性・転写性をもつかの評価を試みた。まず、突起物をもつSUS420J2円板をポリエチレン膜に対して繰返し押し付けた結果、窒化の有無にかかわらず突起物の損傷が少ないことが分かった。今後、プラズマ窒化した突起を、硬質のPETおよびPMMA膜へ繰り返し押し付け、転写形状の観察と突起物の損傷過程を明らかにする。つぎに、高分子膜に効率よく穴を付与するため、外径57mm、厚さ5mmのSUS420J2のリングを作製し、突起物を形成したリングを重ね合わせて幅50mmの転造ロールに組み立てた。今後これについても突起物の耐久性試験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
突起物の先端が丸くならないようなプラズマ窒化の最適条件の探索に手間取ったため、高分子に穴を明けるための本格的な実験ができなかった。また、大学の走査電子顕微鏡が修理不可能であることが分かったので、スパッタエッチングにより製造した突起物の形状の確認や、押し込み試験・スクラッチ試験による突起物の変形を観察するために、広島県西部工業技術センタのSEMを使用した。しかし、予約が必要なことと時間制限があり、研究の能率が悪くなった。また、突起物の焼入れによる硬化の追加研究を行い、その結果を論文にまとめて投稿するのに時間がかかった。ただし、転造ロールの準備、突起物からの高分子の剥離を容易にすると思われるSiCコーティング用のターゲットの購入、突起物へのウレタン樹脂の塗布と剥離(ピール試験の予備実験)など、最終年度での実験への準備は行った。今後は、当該実験に集中できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、まず、プラズマ窒化により硬化した微細突起物が、高分子膜に穴を明けるための型や転造ロールとして、どの程度の耐久性・転写性をもつかを評価する。そのため、各種高分子膜について、突起物の繰返し押し込み試験および突起物付き転造ロールを用いた圧延試験を行い、突起物を走査型電子顕微鏡で観察して損傷状況を調べる。つぎに、窒化した突起物の表面は平滑ではないので、高分子膜に穴を明けるための抵抗増加が予測される。そこで、突起物の上に摩擦係数の小さいSiC薄膜をスパッタコーティングし、突起物の耐久性と穴を明けるための抵抗の変化を調べる。また、3種類の突起物(スパッタエッチングのまま、窒化、SiCコーティング)の上に液体高分子を塗布硬化させ、ピール試験により剥離強度改善効果を調べるとともに、突起物自体の濡れ性と型充填性・はく離特性の関係も調べる。さらに、高分子膜の転写形状をレーザー顕微鏡で観察するとともに、転写膜の反射防止性能および超撥水性能を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アルゴンと窒素の混合ガスプラズマで窒化した突起物のスクラッチ試験および窒化物のX線回折による同定ができなかったので、そのための外部測定依頼費が残った。 平成26年度の助成金は、上記の依頼測定および研究のまとめに使用する。
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Research Products
(3 results)