2013 Fiscal Year Research-status Report
難削材への微細深穴加工のための三次元低周波加振技術の開発
Project/Area Number |
24560124
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
堀尾 健一郎 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60201761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 順一 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (80375584)
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Keywords | 微細深穴あけ技術 / 振動切削 / 3次元加振機構 / 把持機構 |
Research Abstract |
本研究では、難削材料に対する微細深穴あけ技術の実用化を目的とし、加工対象物の低周波振動加振技術の開発を実施する。具体的な対象として、ディーゼルエンジンの噴射ノズル穴加工において、チャック上に固定された耐熱合金製ノズルの表面に対して任意方向に低周波振動(数百Hz前後)を与える手法を開発し、切削主軸の超音波振動加振(40kHz)と併用することによりL/D比20以上、穴径0.2mm以下の微細深穴加工における工具折損防止および工具長寿命化を実現することを目指す。 平成25年度には、昨年までに開発していた加工対象物把持システムについて、ノズルの重量に対して十分な振幅を与えるための把持機構、および加振システムの設計を行い、実機上での実験を可能にした。加振源として、複数のボイスコイルモーターを1つのアンプを用いて振動させ、これらを固定する皿バネの剛性を変化させることによって、加工対象物の表面上で任意の方向でかつ十分な振幅で加振する手法を開発した 具体的な内容として、耐熱合金に対して直径0.3mm、LD比20の微細穴の加工を実施する際に、最もドリル先端部のチゼル部分の摩耗が小さくなる加振条件として振動周波数193Hz、振幅10μmを設定し、これを満たすための機構の設計・試作とバネ剛性の設定方法を開発した。機構の設計にあたっては、穴あけ加工時にドリルより加工対象物に作用するスラスト力による変位が穴の位置決め精度に対して十分小さくなるよう、高い剛性を有しつつ、ドリルの中心軸方向のみに加工対象物が振動し穴径に誤差が生じないよう、システムの共振周波数が水平方向と垂直方向で異なるバネ剛性を決定する手法を開発した。今年度は実際に微細穴加工を実施し、切削時の環境下でのシステムの有効性を検証し、また、2つのアンプを用いてモーターを個別に駆動する手法の開発を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度中には、1年目に試作した加工対象物の把持機構において、加振時の駆動アクチュエーターとして予定していたピエゾ素子において生じる加振力の不足を解決するため、代替の振動素子としてボイスコイルモーターを選定し、把持機構の設計・製作を行っていた。ボイスコイルモーターの加振時の作用力と、板バネの調整による水平・垂直方向の剛性の変更により、加工時の加工対象物の固定と、加振中の振幅を共に満足させる機構の実現に成功している。単独での加振実験に際しては、まず、任意姿勢で固定された把持機構および加工対象物上の各位置に対して、加振時の相対変位を複数のレーザ距離センサによって3次元的に計測するシステムを開発し、これを用いてシステムの検証を行った。検証実験ではドリルの中心軸と一致する任意の方向に対して加工対象物を振幅10μmで正弦波状に振動させることが可能な結果が得られており、振動加工に必要となる諸条件をすべて満たした把持機構が実現できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、まず、25年度内に開発した把持機構をマシニングセンタ内部に設置し、微細穴あけを行った場合の効果について検証する。検証では、幾何学的な振動方向のブレが穴加工の精度に与える結果を検証するため、快削性を有する諸材料を用いて穴あけ実験を行い、振動に伴う微細穴の加工精度の悪化について調査を行う。そののち、耐熱合金に対する微細穴加工実験を実施し、工具摩耗防止における効果を検証する。 また、これと並行して、複数のアンプを用いた正弦振動以外の加工対象物加振技術の開発を行う。こちらは、複数のアンプによって異なる周波数・位相の振動をボイスコイルモーターに与えることによって矩形波等の振動を加工対象物に与えることを目的とする。過去の振動援用切削では、加工対象物側の振動の波形は正弦波に限定されており、これを変化させた場合の工具長寿命化の効果について検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画では、複数のアンプを用いて2つのボイスコイルモーターを独立して駆動するシステムを開発する予定であったが、機構設計の途上で単一のアンプを用いる方法でも正弦波状の振動が発生できることが明らかとなり、こちらの開発を優先したためである。 平成26年度の研究計画では、平成25年度に開発を完了した加振機構を使用し、加工実験を行う。そのため、加工実験に際して使用する工具、材料、スピンドル等の購入を予定している。また、ボイスコイルモーターのアンプを追加で導入し、新しい制御手法の開発を行う。 アンプ導入については、25年度に使用しなかった予算を用いることを予定している。当初の研究計画では、複数のアンプを用いて2つのボイスコイルモーターを独立して駆動するシステムを開発する予定であったが、機構設計の途上で単一のアンプを用いる方法でも正弦波状の振動が発生できることが明らかとなり、こちらの開発を優先した。本来の計画では25年度中に開始する予定であった複数のアンプの同期による制御についての検討を実施するため、新規にアンプ1台を導入する。
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Research Products
(1 results)