2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
關谷 克彦 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80226662)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 切削加工 / 凝着 / 構成刃先 |
Research Abstract |
本研究は,凝着による加工仕上げ面劣化メカニズムおよび工具寿命短命化のメカニズムを明らかにすることを目的としている.これまでに凝着物の安定性を議論した研究報告等は無く,評価手法も確立されていない.そこで,凝着現象の一種である構成刃先が生じた場合,仕上げ面断面曲線が不規則に乱れることに着目し,断面曲線の形状を詳細に検討することにより,凝着物の規模と安定性を評価する手法を想起した.初年度である本年は,まず,本研究に必要なデータ処理のためのプログラム及び実験装置を作成した.凝着物の規模を評価するために,仕上げ面曲線の測定データと工具幾何形状との相互相関係数を求め,凝着物の安定性を評価するために,送り量で仕上げ面断面曲線を分割したそれぞれの断面曲線間の相互相関係数を求める必要がある.これら曲線同士の比較を行う場合,測定者の主観が入り恣意的なデータ整理となる懸念があっため,工具コーナ半径とすくい角及び仕上げ面断面曲線のディジタルデータのみを入力することによって,相互相関係数を求めるPythonプログラムを作成した.また,凝着性の評価は切削抵抗動的成分によっても行うため,多成分切削動力計を組み込んだ実験装置を構築した. ニッケル基合金,チタン合金,ステンレス鋼の切削実験を行い,仕上げ面断面曲線を測定した.従来炭素鋼切削時に生じる構成刃先が数十~数百Hzで成長・脱落を繰り返す事実から凝着物は不安定なものとされてきた一般的な認識があったが,連続旋削では幅広い切削速度域で凝着物は非常に安定しており,これとは全く異なった新たな知見が得られた.また,チタン合金の断続旋削では連続旋削時と同様に凝着物が安定していたが,ニッケル基合金の断続旋削加工で生じる凝着物は連続旋削時と比べ不安定であり,被削材成分等により凝着の安定性が異なることが示唆された.今後,凝着物脱落の条件を明らかにしたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では凝着物の規模を評価するために工具形状と断面曲線との相互相関係数を求める予定であったが,相互相関係数は二つの曲線の差の最小二乗和を用いるため,単純に相互相関係数を求めただけでは,工具の内部に仕上げ面が入り込んでしまう状況で両曲線の差の二乗和が最小となることが判明した.しかしながら,工具摩耗を生じていない状況を想定している本研究では,このようなことは起こらず仕上げ面断面曲線は必ず工具形状の外側に存在する.このため,工具と幾何形状の相互相関係数に代わる評価法を考案する必要があった. 凝着物の大きさが予期されたほど大きくなく,また,生成脱落周期が予期されたものより大幅に長く凝着物が安定して存在し,場合によっては突然の成長・脱落と理解せざるを得ない断面曲線の変化が現れたため,当初の予定より断面曲線測定個所を増加させざるを得ない状況となったと同時に,被削材回転周方向の測定分解能を上げる必要があった.現在は被削材端面旋削側に回転位置が同定できるようにエンコーダを取り付け,切削抵抗測定時にエンコーダ信号を同時に記録すること,及び,断面形状測定時にスケールを印刷した紙を取り付ける等,断面曲線形状が被削材上の個所と同定し易いように対策を講じ,回転周方向分解能は3mm程度まで向上している. 本研究実施の結果,凝着物の大きさが予期されたものより小さかったため,工具欠損防止のために施されているチャンファや丸ホーニングの大きさの影響が現れる可能性を否定できなくなった.市販の工具では,チャンファや丸ホーニングの大きさは工具材料に依存しているため,両者の影響を分離して考察する必要が新たに生まれた.この件については次年度に治具等を作成し,市販工具のすくい面を研磨することによって,チャンファや丸ホーニングの影響が出ない形状の工具を作成し,追加検討したい.
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Strategy for Future Research Activity |
実験手法ならびに凝着物の規模・安定性の評価手法はほぼ確立できたと思われるため,昨年度十分には行えなかった切削実験を行うと同時に,前年度の結果から示唆された刃先形状の影響について調査する.更に,当初より本年度に実施予定していた切削厚さおよび切削中の切削厚さ変化パターンの影響による凝着の安定性について調査する. 昨年度の研究で,本研究で採用した評価法によって工具刃先近傍の断面曲線データのみを使用して凝着の規模を評価すると,チタン合金加工時に生じる凝着物の大きさがK種超硬合金工具使用時よりP種超硬合金使用時の方が小さくなる傾向があった.一般的知見ではP種超硬合金にはチタンが含まれているためチタン合金切削時にはK種超硬合金より凝着し易いとされており,実際,切削抵抗静的成分および動的成分はP種超硬合金工具使用時の方が大きくなる.このため,追試を行い本手法による凝着規模の評価の妥当性を検証したい. 刃先形状の影響については,工具すくい面研磨用の治具を作成し,チャンファおよび丸ホーニングを除去した工具で切削実験を行い工具刃先形状の影響を調査する予定である.チャンファや丸ホーニングを除去すると断続加工時に工具が欠損する可能性が否めないので,本検討は可能な限りの条件下で実施する. 当初の予定通り,切削厚さ及びその変化が凝着物の脱落に与える影響を検討するため,四爪チャック等を用いて,被削材である丸棒の中心を旋盤主軸の回転中心からずらすことで,エンドミル加工の様な切削に伴う切削厚さの変化を再現させ,加工実験を行う.被削材丸棒の一部を予め長手方向に削り取った形状(例えば半円柱形状)とし,適切な偏心量を与えて回転させれば,エンドミル加工で見られる上向き削りや下向き削りを再現することが可能である. 以上のような実験的研究の結果から,凝着物が脱落するための条件を明らかにしたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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