2013 Fiscal Year Research-status Report
極間距離と加工面性状が単発放電痕性状に及ぼす影響に関する研究
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24560146
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
吉田 政弘 東京都立産業技術高等専門学校, その他部局等, 教授 (80220680)
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Keywords | 単発放電痕 / 単発放電痕形状 / 放電痕各部体積 / 極間距離 / 加工反力 / 気泡挙動 |
Research Abstract |
単発放電痕の累積で加工が進行する放電加工は,除去量が大きい単発放電痕の形成が加工特性を向上させる重要なポイントである.これまでに,同じ電気加工条件で放電を発生させても単発放電痕形状にばらつきが生じ,これが放電痕の各部の体積,すなわち,盛上り部,放電痕の底に残留する溶融再凝固層,除去部の体積に影響を及ぼす.また,放電アーク柱により溶融した体積のうち,除去部の体積の割合は放電痕形状に左右され,最大で50%強,通常は10%程度しかなく,除去体積が50%を超える放電痕は盛上り部の体積が少ないことが,これまでの筆者らの研究により分かっている. 前年度において,同一の電気加工条件で極間距離を50,100,200μmと変化させて単発放電痕を発生させたところ,極間距離によって生じる放電痕形状に明らかな違いが見られ,極間距離が広いほど生じる放電痕形状がなだらかな形状となり,放電痕形状のばらつきが少なくなることが分かった.一方,極間距離50μmの放電痕形状は盛上り部分の凹凸が激しい形状になることが分かった.放電痕形状が異なる理由として極間に生じる気泡の挙動と気泡内部圧力の変化が影響していると考えられた.そこで,放電発生時の気泡内部圧力測定のための放電加工反力と気泡の挙動を同時に観察できる測定システムの構築を行った.本年度において,加工反力測定装置と高速度ビデオを用いた気泡の挙動の観察システムが完成している.この実験装置は極間距離を変化させて加工反力と発生した気泡の挙動の観察が同時に行える. 単発放電痕の各種体積の測定には断面形状積算法を用いているが,測定に非常に時間がかかりすぎている.そこで,レーザを用いた新たな測定方法の試みを始めた.盛上り部の凹凸が激しい複雑な形状の放電痕の測定は難しいが,なだらかな放電痕形状では良好な計測が行える可能性が分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同一電気加工条件で極間距離を変えて単発放電痕を生じさせると,放電痕形状に大きな違いが見られ,しかも,同じ極間距離で生じさせた単発放電痕形状には再現性があることが確認できた.よって,放電痕形状は極間距離に影響されることが明らかになった.平成25年度は工作物の組成が単発放電痕形状に及ぼす影響を調べる予定であったが,極間距離と放電痕形状の関係を探究する方が重要と思われた.極間距離が変化すると発生する気泡体積が変わり,発生時の気泡内部圧力と気泡の挙動も変わるはずである.これらの変化が生じる単発放電痕形状に影響を及ぼしていると考えられる.そこで,これらのファクターが単発放電痕形状に及ぼす影響を確認するための実験装置を構築した.平成25年度は実験装置を完成させ,加工反力と気泡の挙動の同時撮影を可能な状態にする予定であった. 一方,単発放電痕形状の詳細な調査方法を断面形状積算法によって実施しているが,非常に時間がかかる問題がある.そこで,測定時間を短縮させるため断面形状積算法をサポートする測定方法の開発にも着手した. 現在までに加工反力測定装置と気泡挙動撮影装置は完成し,極間距離100μmでの結果が得られている.また,単発放電痕の調査方法に関しては,レーザを用いた方法を幾つか試み,ある方法を用いれば比較的なだらかな放電痕形状ならば実用的に十分な測定精度が得られ,部分的に断面形状積算法に置き換えることもできることが分かった. 以上のように,単発放電痕と極間距離の関係,そして,それらを相関的に結び付ける要因を調査できる実験環境を整えることができた.よって,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
極間距離が変化すると極間で生じる放電加工現象の何が変わるのかを明らかにする.すなわち,放電発生時に生じる気泡の内部圧力と気泡の挙動の違いを調べ,これと形成される単発放電痕形状との関係を明らかにする.特に,放電発生初期における気泡内部圧力の減少速度の違いに注目して研究を進める予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験装置費用などの物品費が当該年度では15000円しか計上していなかった.しかし,加工反力と気泡挙動の同時撮影装置が必要となり,その製作の費用として旅費,人件費・謝金,その他の費用に加えて,平成24年度の繰り越し金165500円を利用して604500円を計上した.実際には587100円で購入することができた.このため,17400円が差額として生じた. 実験に使用する工具電極や工作物などの物品費に利用する.
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Research Products
(2 results)