2013 Fiscal Year Research-status Report
自動車用部品の軽量化を実現するステンレス鋼異形鍛造の中空化技術の開発
Project/Area Number |
24560150
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
榎 真一 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80550079)
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Keywords | 成形加工 / 鍛造 / 中空化 / 軽量化 |
Research Abstract |
平成25年度の研究では,アルミニウム合金中子を含むステンレス鋼の鍛造成形解析の解析条件の設定方法を確立することができた. 解析条件として重要なパラメータには,摩擦係数,プレス速度,材料特性,初期温度,熱伝達係数,熱伝導率がある.摩擦係数は平成24年度の研究成果をもとに設定し,熱伝達係数及び熱伝導率は文献値をもとに設定した.本年度は,材料特性及び初期温度に着目して実験を行った. まず,初期温度の設定を確立するために,サーモグラフィによる温度分布測定を行った.外径15㎜,内径7㎜のステンレス鋼の円筒のみを加熱炉で400℃に加熱してサーモグラフィで温度分布を測定した結果,中空部分の温度が550℃以上となり,中空部分の温度が高くなるため,外径7㎜のアルミニウム合金の棒を予め挿入してから加熱するとアルミニウム合金棒が溶融する可能性があることがわかった.そこで,ステンレス鋼の円筒を550℃に加熱した後,常温のアルミニウム合金の棒を挿入した鍛造素材の温度分布をサーモグラフィで測定した結果,ステンレス鋼の円筒は400℃,アルミニウム合金の棒は200℃であったことから,初期温度はステンレス鋼およびアルミニウム合金共に同じ温度ではなく,温度差を設けていずれの素材も温間鍛造となるような設定とすることとした. 次に,材料特性の設定を確立するために,ステンレス鋼およびアルミニウム合金の圧縮試験を行った.いずれの素材も温間鍛造となる温度まで加熱炉で加熱して圧縮試験を行って得られた応力‐ひずみ線図とソフトウェアのデータベースの応力-ひずみ線図を用いて矩形断面形状に横圧縮成形を行った場合の成形実験と鍛造成形解析とを比較した.圧縮試験で得られた材料特性を用いた方が,荷重-ストローク線図,ステンレス鋼およびアルミニウム合金の変形量と変形形状において,実験結果と解析結果が良い一致を示すことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鍛造素材の界面特性が成形性に及ぼす影響の解明にまでは至っていないものの,鍛造実験を実施することに成功して,鍛造成形解析の解析結果である荷重-ストローク線図およびステンレス鋼およびアルミニウム合金の変形量および変形形状と比較することで,解析条件の設定方法を確立することができ,さらに,この設定方法を用いてコの字断面形状を例に異形鍛造解析における成形性の検討を始めている. 鍛造実験は,研究計画で予定していた油圧サーボ式万能試験機,エアハンマーおよび20トン油圧プレスでは,成形ができなかった.万能試験機は高温での試験ができず,エアハンマーでは荷重測定に不具合があり,油圧プレスでは加工速度が遅すぎて温度低下が著しかったことが要因であった.そこで,さらに代替案として,新規に導入した600kNサーボプレスを用いて鍛造実験を行うことで実験を実施することができた.鍛造成形解析での解析条件には,摩擦係数,プレス速度,材料特性,初期温度,熱伝達係数,熱伝導率が重要なパラメータであり,摩擦係数は平成24年度の研究成果で得られた値,プレス速度はサーボプレスから得られた速度に基づく設定値,熱伝達係数及び熱伝導率は文献値を設定することで良好な解析結果が得られることがわかった.また,初期温度は本年度のサーモグラフィの温度測定に基づく値,材料特性は本年度の圧縮試験から得られた温度別の応力‐ひずみ線図を用いることで,実験結果と解析結果の良い一致を示すことが確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
コの字断面形状を例に異形鍛造解析における成形性を検討しており,素材の流れを把握することで,素材寸法および成形条件の決定方法の設計指針を確立する.それと並行して,鍛造素材の界面特性が成形性に及ぼす影響について,特に,締りばめの場合における摩擦係数の測定を行うと共に,本年度の研究で確立された解析条件をもとに検討を行う.さらに,自動車部品を想定した異形鍛造品を対象とした鍛造解析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の達成度が「やや遅れている」であり,平成25年度に国際学会での発表ができなかったため. 研究成果の国際学会及び国内学会での発表を積極的に行うため,次年度使用額分を高専学生の学会発表補助へ充てることを計画している.
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