2013 Fiscal Year Research-status Report
サブナノメートルの粗さと潤滑膜をもつ球・平面間の吸引・接触特性の解析的研究
Project/Area Number |
24560154
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 京右 東京工業大学, 理工学研究科, 名誉教授 (40152524)
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Keywords | ナノトライボロジー / 磁気記録 / 表面・界面物性 / 計算物理 / コンタクトメカニクス / 境界潤滑 |
Research Abstract |
1.最近の磁気ディスク面の表面粗さ測定データによる粗さ接触特性解析の厳密化:関西大学による粗さ測定はできなかったので,最先端ナノスコープを導入している名古屋大学の張准教授に測定依頼した結果,最新の磁気ディスク面を先端半径2 nmのAFMプローブで測定すれば,磁区粒子が計測できることが明らかになった.粗さの振幅特性は計器のソフトで分析できたが,接触解析に重要な突起特性は解析できないこと,また測定データをSummit Plus突起解析ソフトには取り込めないことが明らかになった.そこで,張データを参考に,再度東芝でナノスコープによる測定に挑戦していただくことにした. 2.厚さ0.3 nm前後の流動潤滑剤と厚さ1nm前後の固定潤滑剤の潤滑効果の解明が重要課題である.昨年度はヘッド接触により排除された流動層の修復特性を連続体理論によりシミュレーションしたが,等価粘度がバルクの100倍も大きくなるという問題点があった.そこで新たに,単分子層以下の薄膜拡散流動に関する基礎式を開発し,空気剪断実験による粘度を用いて修復現象を解析できることを明らかにした(2014日本トライボロジー会議春発表予定).また突起接触における固定層の弾性変形を考慮したナノメニスカス特性を解析する理論を開発し,磁気ディスクの潤滑膜固定層への突起接触によりJKR理論に似た結果が得られることを明らかにしつつある(WTC2014発表). 3.スライダの近接・接触記録時の振動特性の解明:昨年論文化したコンタクトスライダの接触振動特性の解析では,ヘッド球面に対するJKR理論に基づく吸着接触力を用いたので,吸着力が過大評価されていた.そこで突起接触理論を用いた吸引・接触特性と,熱浮上量制御によるすきま低減過程を厳密に評価したスライダの接触振動理論を開発し,機械学会情報知能精密部門講演会(2014/3/18)で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.粗さ接触特性を厳密化するために必要な,サブナノメートルレベルの粗さ突起特性の計測は30%の進展であった.関西大学谷教授には期待できないことが判明したので,最新のナノスコープを持っている名古屋大学の張准教授に依頼したところ,高分解能の測定が可能となった.しかし最新機種のデータは,突起特性を分析するSummit Plusでは分析できないことが判明した.そこで26年度には,再度東芝に精密測定に挑戦してもらうこととした. 2.単分子層以下の流動潤滑膜の拡散特性に関する理論を新たに開発し,既存の単分子層以下の潤滑膜の粘度に関する実験データと整合性のある粘度を用いて修復特性が計算できることを明らかにした. 3.メニスカス弾性接触理論を新たに提案し,解析法の改良を行った.突起接触において潤滑膜固定層の弾性接触効果を考慮すると実験で明らかにされているJKR理論特性が得られることを明らかにし,新しい接触メカニズムモデルを提案しつつある. 4.前年度に提案したJKR理論に基づくスライダの接触時の振動理論の曖昧な点を除去するため,各種突起接触モデルに基づく接触特性をもちいてスライダの振動特性を論じた.今後実験データと突き合わせ,どの接触特性モデルが真実に近いかを検討する. 上記2,3,4項は交付申請時には予期できなかった新しい独創的な成果で,これらを考慮すると,全体としては100%以上の進展を得たと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
1.最新磁気ディスクの粗さ計測と突起特性の解明は東芝および名古屋大学の張准教授とと議論しつつ進める.進捗は協力研究者に依存するが,最大限に進展させる. 2.単分子層以下の流動潤滑膜の拡散特性の基礎式を開発し,既存の実験データによる粘度を用いて実験的な修復特性が評価できることを明らかにしつつある.この理論の合理性については批判も多いと予想されるので,部分的な改良も必要と思われる.本年度は理論の厳密化と普遍化を行い,新規性の高い論文をまとめる. 3.約1nmの潤滑膜固定層の摩耗信頼性に寄与する効果は大きいことが知られているが,そのメカニズムに関する理論的研究は皆無である.そこで突起接触におけるメニスカス弾性接触解析により,ガラス球・ディスクの接触特性が実験的に指摘されているJKR理論モデルに近くなることを示した.26年度は固定層の接触応力緩和効果をも解明し,突起接触による固定層の役割を明確にし,その結果を新規性の高い論文としてまとめる. 4.熱突出ヘッドとディスクの吸着特性を,粗さ突起接触における各種吸着特性モデルに基づいて計算し,ヘッドスライダがディスクに接近・接触するときのスライダ振動特性を解析した.26年度は解析結果と既存の実験結果を比較検討することにより理論の厳密化を図ると共に,新規性の高い論文としてまとめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額の29万円は,24年度の初年度で使用できなかった実験用各種ガラス球面の購入費である.その後この実験の必要性が薄れたため未使用となっている.本年度は最終年度なので,25年度に開発した新しい成果を国際会議で発表し,少なくとも3件の英論文を作成するので,国際会議参加費や論文作成費に使用する. 次年度使用額も含めて平成26年度の研究予算は129万円である.新規性の高い理論を3件を提案しようとしているので,2つの国際会議で発表し,3件の英論文をまとめる. 1.会議参加費・旅費 85万円,1-1. 国際会議参加発表 75万円.a.ハードディスク関連の研究成果が発表される,ISPS2013(2013.6に米国Santa Clara大学で開催)に参加発表予定である.b. STLE Tribology Frontier Conference (米国シカゴ)に参加し,メニスカス弾性接触理論を発表する.1-2.国内学会(トライボロジー秋,盛岡)参加旅費 10万円. 2.物品費 合計 44万円.2-1. 計算ソフトMATLAB保守契約更新費 6万円.2-2. 英文添削費 14万円(full paper:3件×4万円 = 12万円,国際会議論文:2編×1万円 = 2 万円).3-3. 論文掲載費 20万円(邦論文:3編×4 万円 = 12 万円,英論文:2編×4万円= 8万円).3-4. 消耗品 4万円(図書費,文献複写費,プリンタ用紙,プリンタインク等).
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Research Products
(8 results)