2013 Fiscal Year Research-status Report
セラミックス製転動体を用いた小径玉軸受の総合的な性能評価に関する研究
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24560166
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
野口 昭治 東京理科大学, 理工学部, 教授 (80349836)
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Keywords | 転がり軸受 / トライボロジー / 機械要素 / セラミックス |
Research Abstract |
本研究では、同じ型番の玉軸受にセラミックス製転動体を組み込んで、様々な性能試験を行い、従来の軸受鋼製転動体との総合的な性能比較を行う。セラミックス転動体の優位性が単一性能だけでなく、寿命等多くの点で優位性が認められれば、転動体だけのコスト ではなく、軸受を組み込んだ製品のトータル的なコストダウン(寿命が2倍に伸びれば、モータ1個分の費用と交換工賃の削減、製品が停止していることによる損出削減)を主張することが可能となり、セラミックス製転動体の普及に貢献できる。さらに、近年低コストのセラミック球の開発も行われており、それも評価対象に加えることにより、用途限定(低荷重用途等)での適用可能性も考えられる。 平成25年度においては、以下の項目について実験を行い、新たな知見を得た。 (1)軽荷重における寿命評価:深溝玉軸受608を用いて、基本定格荷重の20%となるラジアル荷重を加えて寿命耐久試験を行った。窒化珪素球を組み込んだ軸受を10個試験したが、すべての軸受で計算寿命の3倍以上の寿命となった(試験は3倍寿命で打ち切り)。軽荷重限定ではあるが、寿命に対しても信頼性があることを検証した。 (2)グリース酸化劣化特性:セラミックは鉄と比較して熱伝導率が小さく、同じ条件で回転させた場合には温度上昇を低く抑えることができる。回転中の軸受温度が低くなれば、グリースの酸化劣化を抑制できると考え、実験を行った。酸化防止剤だけを添加したグリースを入れて一定時間回転させた後に酸化防止剤の残存量を測定したところ、鋼球と比較して窒化珪素球の方が多く残存していることが確認された。セラミック球を使用するとグリース寿命を延ばすことができることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記述した実施計画通りに進んでいる。平成24年度からの研究であり、深溝玉軸受608を試験軸受とした寿命耐久試験装置を9台作成し、基本定格荷重の20%となるラジアル荷重を加えて寿命試験を行い、軽荷重における耐久性を確認できた。 さらに、セラミック転動体の優位性として大きな意味を持つグリースの酸化劣化を抑制できることをデータとして示すことができた。小型玉軸受の寿命は、疲労はくりではなく、ほとんどがグリースの潤滑性能劣化に起因する焼付きや振動上昇である。グリース寿命を延ばすことができたことは、実用上非常に有効である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究期間としての最終年度である。これまでに明らかにしてきた優位性(電食、高温環境による幾何学的形状変化、グリース酸化劣化特性、軽荷重での寿命)以外の項目でも優位性を示す実験を行う。具体的には、転動体公転すべり(軽量であり、同じ公転速度であっても遠心力が小さくなるので、すべりが小さくなると予想)、内部摩耗(公転すべりが小さいと軌道面との摩耗が少ないと予想)での優位性を確認する。 平成25年度に出た成果を学会へ論文投稿することも計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、前年度に完成させた軽荷重の疲労寿命耐久試験を中心に進めた。計算寿命の3倍(1560時間)まですべての試験軸受が回転したため、回転時間が65日、その準備やデータ処理を含めると1回の実験で70日かかってしまった。この実験をセラミック球で2回、比較の意味で鋼球で1回行ったため、1年の内7か月(210日)を寿命評価実験に費やしたことになり、予定していた他の実験項目が1つできなくなってしまった。このため、予算の消化を次年度へ繰り越すこととした。 平成26年度で前年持ち越した評価項目の試験を加えて行うことで、研究配分予算をすべて使う予定である。具体的には、転動体公転すべり(軽量であり、同じ公転速度であっても遠心力が小さくなるので、すべりが小さくなると予想)、内部摩耗(公転すべりが小さいと軌道面との摩耗が少ないと予想)の評価を実施することで、予算を使う予定である。
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Research Products
(6 results)