2012 Fiscal Year Research-status Report
摩擦面温度制御によるPEEK樹脂軸受の焼付き防止システムの開発
Project/Area Number |
24560172
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
赤垣 友治 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20149909)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トライボロジー / PEEK樹脂軸受 / 焼付き / 摩擦面温度 / 摩耗粒子分析 / 油潤滑 |
Research Abstract |
油潤滑下におけるPEEK複合材料,未充填PEEK及びホワイトメタル(WJ2)の焼付き挙動をブロックオンリング型摩擦摩耗試験機を用いて調べた.実験時,摩擦トルク及びリング表面下1mm位置でのリング試験片温度を測定し,ドレインから排出される潤滑油中に含まれる摩耗粒子の大きさと個数を粒子カウンターで測定した. (1)WJ2,PEEK及びPEEK複合材料の焼付き挙動は摩擦面温度に強く依存した.WJ2は約80℃を超えると摩擦係数が急増し焼付きを発生した.PEEKは約100℃,複合材料は約140℃に達すると摩擦係数が増加し始め,PEEKは120~130℃,PEEK複合材料は160~180℃を超えると急激に摩擦係数が増加し焼付きを生じた.このように,PEEK複合材料は,焼付き限界温度が高く優れた材料であることがわかった. (2)3種類のブロック材料に対する焼付き限界曲線をすべり速度10~20m/s,荷重294~1200の範囲で求めた.10m/s以下のすべり速度では,すべての材料で荷重1200Nまで焼付きを発生せず,限界荷重を求めることができなかった.しかし,すべり速度が15m/s以上の高速下では,すべての材料で焼付きを発生したが,焼付きに遷移する温度は実験条件にかかわらず各材料に固有な温度であった.焼付き限界荷重はPEEK複合材料が最も高く,PEEK複合材料はPEEKやWJ2よりも耐焼付き性に優れた材料であることがわかった. (3)WJ2の焼付き過程で発生した摩耗粒子数は,焼付き開始前から増加し始め,焼付きを生ずると急増した.しかし,PEEKやPEEK複合材料の焼付き過程では,焼付き前に摩擦係数が増加したにもかかわらず摩耗粒子は増加せず,焼付きの発生によって摩耗粒子数はわずかに増加した.このように,PEEK材料は摩耗粒子が発生しにくい材料であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施予定の実験を行い,PEEK樹脂材料の焼付き挙動や摩耗粒子に関する重要な知見を得ることができた.しかし,試験片の表面粗さがわずかに異なる場合や再利用ブロック試験片を用いた場合など,焼付き開始温度は同じであったが,実験開始から焼付きを発生するまでの時間が大きく異なることがあった.焼付きを回避することを目的としている本研究において,これは非常に重要な問題である.残念ながらまだ原因を究明するに至っていない.この結果は,表面粗さがPEEK樹脂の焼付き挙動に多大なる影響を与えることを示唆している.また100~120℃程度の摩擦熱を経験するとPEEK樹脂に変質等の変化が生じ,摩擦摩耗挙動が変化することが予想される.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の結果を基に,平成25年度は摩擦面温度を低減するためのエアジェットクーラーによる強制冷却システムを設計・構築する.更に,エアジェット強制冷却法の冷却特性(摩擦面温度低減効果)を明らかにし,最適な冷却条件に関する知見を得ることを目的とする.平成26年度は,摩擦面温度低減による焼付き防止効果の実証試験を行う.以下に示す要領で実験を進める. (1)エアジェット強制冷却法の冷却特性:エアジェット供給流量,供給エア温度とPEEK樹脂軸受の摩擦面温度の関係を調べ,軸受温度低減に必要なジェット流量,供給温度を求める. (2)エアジェット強制冷却ノズル位置の決定:軸受面冷却位置,ノズルの配置,エアジェットの供給角度などの最適値を決定する. (3)流体潤滑状態,流体潤滑から混合潤滑・境界潤滑への遷移過程,混合潤滑・境界潤滑から焼付きへの遷移過程の各々において,摩擦面温度低減(強制冷却)により摩擦摩耗挙動はいかなる影響を受けるか?また発生する摩耗粒子はどのように変化するのか? 以上の実験結果を総合的に判断することにより,樹脂軸受の潤滑状態の変化,焼付きへの遷移を防止する効果の最も高い冷却方法を見出すことができる.また,焼付き損傷の程度の低減に効果のある手法を見出すことができる.最終的には,摩擦面温度から焼付きの予測を行い,危険と判断された場合には自動的に強制冷却を開始し焼付きを防止するシステムにレベルアップすることができる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし.
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