2013 Fiscal Year Research-status Report
超音波振動による十字型振動体の共振を利用した六角ナットの高精度締付法の開発
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24560176
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
岡田 学 長野工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70249788)
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Keywords | Fixing Element / Bolted Joint / Ultrasonic Vibration |
Research Abstract |
4個の超音波振動子を取り付けた十字型振動体を利用したねじレンチを開発した。4個の振動子の振動を十字型振動体で合成することによって、振動子が1~2個の場合に比べて強力にナットを加振することができる。 ナットにボルト軸方向の振動を加えながら締め付けると、座面では摩擦が減少し、ねじ部では摩擦が増加することは振動子が1~2個の場合でも観察していたが、4個の振動子の振動を合成することによって振動子が2個の場合と比較して座面の摩擦の減少とねじ部の摩擦の増加が同一条件でそれぞれ2倍以上の変化率を示した。すなわち、超音波振動の入力パワーを増加させることによって、ねじ部品の場合にも表面の摩擦係数の変化幅を増加させることができることを明らかにした。 具体的には、本研究で試料としているM10並目ボルトの場合に35Nmの締付トルクを加えた場合で,、座面で15%の摩擦減少、ねじ部で20%の摩擦増加になっており、締付トルクがもっと小さい条件では、座面で最大40%の摩擦減少、ねじ部で最大120%の摩擦増加の変化が得られた。 軸力のばらつきの減少については、4個の振動子を取り付ける十字型振動体の2種類(振動子の軸線のオフセットあり/無し)を使ったレンチのいずれにおいても、「超音波振動あり」の条件で軸力のばらつき(標準偏差で評価)が増加することがわかった。 振動体は有限要素解析による振動解析で振動の様子や共振周波数等のシミュレーションを行い、形状や寸法を検討してから製作した。その駆動については、1つの基準信号に同期した4台の増幅器によって4個の振動子を駆動する駆動系を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに振動子が2個と4個の十字型振動体を開発し、その振動子の振動を合成して1つの強力な超音波振動を作ってナットを加振しながら締結を行うねじレンチと、その改良版を開発し、その効果について調べることができたことは予定通りの進展であった。ただし、それによって得られる摩擦力の変化については「ねじ締結体全体では予想した減少ではなく増加であった」、「効果の大きさは目標としている摩擦力半減(倍増)にはまだ達しておらず、20~40%程度の摩擦トルク・軸力の変化(締付終了時)」という部分ではまだ予定通り(想定通り)ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、平成26年度は振動子をさらに増やして6個の振動子を取り付ける十字型振動体を開発して実験を行うことを予定していた。しかし、これまでの研究から十字型振動体で振動子を増やすことによる効果の変化について一定の知見が得られた。その一方で、将来の市販化や産業化にはコンパクトで電動化などに対応しやすい形状が適する。そこで、十字型振動体よりもスリムな形状でありながら複数の振動子の振動の合成が可能な手法としてY字型振動体を取り上げる。これについて有限要素解析を利用して形状や寸法の解析を行い、振動体の試作とそれを用いた締結実験を行ってその有効性を確認すると共に、十字型振動体を利用した場合との比較を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果発表の外国旅費の実際の支出、及び超音波振動子駆動用増幅器の購入価格、ひずみゲージ,接着剤,洗浄用溶剤等の費用が、それぞれ当初の予想よりも少なかったことによる。 振動体の振動解析に利用する有限要素解析ソフトのライセンス料が平成26年度から改定されること(年間60千円増加)に対応するほか、締結実験の軸力測定にワッシャ型ロードセル(定価199千円)を導入して測定精度を向上させる。
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Research Products
(3 results)