2013 Fiscal Year Research-status Report
フレキシブル有機EL半導体の屈曲性改善とその設計手法の確立
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24560178
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
小林 敏郎 津山工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70563865)
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Keywords | 有機EL / フレキシブル / 屈曲性 / 発光効率 / 薄膜 / 設計工学 / 実験力学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「フレキシブル有機EL半導体の屈曲性の改善とその設計手法の確立」であり、有機EL半導体に用いられる有機薄膜層の変形特性を測定し、屈曲性に悪影響を及ぼす脆弱な層を明らかにして、(a)脆弱な有機薄膜層の高強靭化(混合層化)、あるいは(b)他材料への置き換え、により屈曲性を改善する手法の確立を目指している。 代表的な有機EL半導体素子を構成する薄膜層の単層膜引張り試験を実施して、薄膜層の延性を定量測定し、屈曲性に悪影響を及ぼすと考えられる低延性層を把握した。また、この低延性層に高延性材料を混合した混合層では、延性が改善されることを確認した。更に、混合層を用いた有機EL半導体素子では、素子性能が低下する副作用が懸念されたため、素子構造の設計を見直し、基本素子、混合層適用素子、混合層適用新構造素子の3種類の有機EL発光素子を試作して、基本素子と比較して混合層適用素子では発光効率が低下するものの、混合層適用新構造素子では、基本素子とほぼ同等の発光効率が得られることを確認した。また、製造時の残留応力などを推定するために、ナノインデンテーション法を用いて、有機薄膜の弾性係数を測定するとともに、塑性変形特性の概略を数式化した。さらに、別の素子構成層組合わせについても低延性層を特定した。 これまでの試験結果から、本研究で提案したフレキシブル有機EL半導体の屈曲性改善手法は原理的に成立する見通しが得られた。これに伴い、従来の電子工学的な取り組みによる素子設計、素子性能評価、耐曲げ性評価、というプロセスを経た思考錯誤的方法から、電子工学的取り組みと並行して機械工学・設計工学的手法を組み合わせる方法にシフトすることにより、素子の電子特性と機械特性の両者を兼ね備えた高性能な有機EL半導体素子の開発が期待できるとともに、研究開発期間ならびに開発費用の低減が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度は、(2)おおむね順調に進展している。 理由は、本研究の目的は、「フレキシブル有機EL半導体の屈曲性の改善とその設計手法の確立」であり、有機EL半導体に用いられる有機薄膜層の変形特性を測定し、屈曲性に悪影響を及ぼす脆弱な層を明らかにして、(a)脆弱な有機薄膜層の高強靭化(混合層化)、あるいは(b)他材料への置き換え、により屈曲性を改善する手法の確立を目指しており、研究実績の概要欄に記載のとおり、2種類の基本素子構造に対しては、上記の(a)及び(b)の両者が原理的に成立する見通しが得られ,本研究で提案した設計手法の有効性が示されたからである。 また、実験手法に関しては、H24およびH25年度に担当した学生の熱心な取り組みと創意工夫により、現象の解明と、測定条件などのノウハウも蓄積することが出来、さらに,これらの内容についても、学会で発表し、学術誌へも論文投稿することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2種類の基本素子に対して、本研究で提案した設計手法が、原理的に成立する見通しを得た。現在、データ蓄積による信頼性向上と、学術的な解析・考察を継続して実施中である。さらに一般化のために、他の素子構造、素子構成材料に関してもデータ取得を行い、提案手法の更なる可能性を見極める。 また、研究成果の発表に関しては、H24年度に国際会議で1件発表し、H25年度は国際会議で3件発表することができた。今後は、学術的な解析・考察を充実させて、国際的な学術誌への投稿を目指す。 さらに、発光している素子の変形・屈曲試験手法についても調査を行い、次ステップへの足がかりとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本素子に対しては、本研究で提案した設計手法は、原理的に成立する見通しが得られたが、データ蓄積による信頼性向上と、学術的な解析・考察を継続して実施中である。さらに一般化のために、他の素子構造、素子構成材料に関してもデータ取得を行い、提案手法 の更なる可能性を見極める。また、研究成果の発表に関しては、H24年度及びH25年度に国際会議で発表したが、学術的な解析・考察を充実させて、国際的な学術誌への投稿を目指す。さらに、発光している素子の変形・屈曲試験手法についても調査を行い、次ステップへの足がかりとしたい。 次年度使用額(B-A)は約90万円である。 電子顕微鏡による観察に協力いただいている兵庫県立大学の内海教授に、研究分担者となって頂き、研究の高度化を行う予定である。また,発光している素子の変形・屈曲試験手法について検討して、素子パターン形成用マスクを新作するなどして、取得データの信頼性を向上させる。
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Research Products
(7 results)