2013 Fiscal Year Research-status Report
気液マイクロ流の界面形状制御を支援する多重スケール解析
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24560185
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
杉山 和靖 独立行政法人理化学研究所, 技術開発ユニット, ユニットリーダー (50466786)
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Keywords | 気液二相流 / 流体工学 / シミュレーション工学 |
Research Abstract |
本研究では,毛細血管を通過できる微細気泡の寸法制御を見据え,界面の分裂,気泡の生成に至るまでを再現する計算手法の整備を行っている.計算対象は,数十μm程度の流路幅を持つT字型マイクロチャネル気泡発生装置内の流動である.これまでに,アスペクト比 (流路幅/流路厚さ) の大きな薄厚チャネルの仮定の下,高さ方向の速度分布に放物分布近似を施し,二相流れの基礎方程式系を導出した.そして,ラプラス則と二次元オイラー・ダルシー方程式が満たされるように,速度ポテンシャルに対するラプラス方程式を境界要素法で解くことによって,気液界面分布の時間変化を捉える方法を提案した.当該年度は,主に,(i) 複雑な幾何形状の扱いを可能とすること,(ii) 界面移動を安定に扱うことを目的として,計算スキーム,アルゴリズムの整備を進めた.チャネル壁,界面に離散点を配置してラプラス方程式を数値的に解くため,密行列の問題として実装した.そして,解像度と解の収束性の影響を調べ,計算手法の検証を行った.また,時間発展に伴い表面張力による界面の平滑化作用が高波数域で不十分となり,界面分布に非物理的な振動が生じてしまう問題に対処するため,平滑化処理を導入した.そして,処理の頻度や平滑化度合いが計算結果に及ぼす影響を調べた.開発した計算コードを用いて,T字型マイクロチャネル内の気液二相流の過渡的挙動を解析した.その結果,気相流路・液相流路の合流部において,気液界面が移動しながら変形し,分裂に至る過程を捉えることが可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに,気液界面分裂に至るまでの数値予測が可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究を継続して行うとともに,T字型マイクロチャネル内気液二相流の数値解析を実施する.まず,計算方法の課題として,気液界面の分裂後,気泡が継続的に生成する挙動を予測するため,境界面のトポロジー変化を捉える計算スキーム,アルゴリズムの実装を行う.そして,流路形状や作動条件 (気相・液相流量, 気相流入部・液相流出部圧力) をパラメータとして生成気泡径を数値予測する.従来の実験によると,(i) 液相流量を上げると,生成気泡径が小さくなるとともに,生成周期が長くなる傾向にあり,流量がある臨界値を越えると,気泡生成が起きなくなる, (ii) 臨界流量での生成気泡径は,低レイノルズ数流れであるにもかかわらず,粘性影響を指標するキャピラリ数ではなく,慣性影響を指標するウェーバー数で整理できる.本研究では,これらの気泡径制御に関わる実験的事実に着目し,気泡生成におけるスケール則に関わる動力学的機構の解明を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
身内に不幸があり,当初計画していた研究打ち合わせ,学会発表を目的とした出張を行うことができなかったため.また,当該年度の研究においては,計算データ量が予想よりも少なく,前年度に取得したPCクラスターのストレージに収まり,当初計上したハードディスクの費用が節約されたため. 計算の前処理・後処理で用いるソフトウェア,および,大規模計算によって得られるデータベースを保存するためのハードディスクの物品費として使用する.また,研究打ち合わせや学会発表を目的とした旅費として使用する.
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