2013 Fiscal Year Research-status Report
フラクタル構造体によって発生する乱流の減衰およびエネルギー移動機構の実験的解明
Project/Area Number |
24560190
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
牛島 達夫 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50314076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 博貴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10626873)
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Keywords | 乱流 / フラクタル / 熱線流速計 |
Research Abstract |
本研究の目的を達成するために,速度勾配全成分測定用8線式熱線プローブで円柱後流の速度分布測定と,全長を2mから3mに延長した小型風洞(断面13cm×13cm)で,フラクタル構造体を通過して生成される乱流のより下流までの減衰特性の調査を行った. 乱流の非線形エネルギー輸送を調べるために,8線式熱線プローブを作成し,昨年製作した較正用風洞で,流速およびヨー角ピッチ角を変更し,熱線からの電圧と速度の間の検定を行った.近接の3本の熱線と主流の方向の関係から速度3成分を同時に推算することができ,8本の熱線の中の4つの組み合わせにより,4箇所の速度ベクトルを同時に算出し,速度勾配の全成分測定が可能であることを示した.しかし,測定のための熱線が1か所に集中して張られているために,通常の単線式やX型に比べ,プローブの寸法が大きくなったことによるプローブ周囲への流れの影響も観察された.円柱後流での測定では,単線式やX型熱線と同等の測定ができることを確認し,更に,他研究者の他の形式の速度勾配測定用熱線プローブの渦度測定結果とも同等の結果が得られることがわかった. 延長した小型風洞では,フラクタル構造体によって生成された乱流の減衰について,流れ方向成分だけでなく,垂直成分の乱れについても,計測を行った.本研究で用いたシェルピンスキー四面体を通過して生成した乱流では,四面体の形状に起因する後流速度分布の発達によって,乱流がべき乗則に従って減衰する部分と,最下流でべき乗則に従って減衰する部分と,両者を繋ぐ遷移領域からなることがわかった.これらの領域は,フラクタル構造の多重性を示す繰り返し段数を変更しても,最小要素の大きさと構造全体の大きさの比のn乗でまとめられることがわかった.また,電動トラバースの導入により,横方向の乱流拡散による影響も測定できるようになった. 以上,当初の計画はほぼ達成された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,3年間で,フラクタル構造体(シエルピンスキー四面体)から生じる乱流の特性(特に速度勾配全成分の統計量) を風洞実験によって調査する予定であり,その2年目では,標準格子乱流および円柱後流乱流での8線式プローブ動作確認を計画した。1年目に,8線式プローブの試作は行ったものの,較正のための治具が間に合わなかったため,2年目の最初は,ヨー角ピッチ角の較正が可能なトラバースを2台の回転トラバースを組み合わせて製作した.その後,プローブの動作確認のために,円柱後流での乱流速度分布を測定した.初めに,速度成分の分布を,I型およびX型熱線流速計の結果と比較し,ほぼ同様に測定可能であることを確認した.次に,他研究者の渦度測定用に4-X型プローブおよび12線式プローブの円柱後流での速度勾配の乱流統計量についても比較を行った.円柱からの相対的な距離や,プローブの乱流渦に対しての相対的な大きさが異なるので,完全な一致は見られなかったが,ほぼ同等の計測結果が得られた.しかし,較正曲線を使った電圧速度変換プログラムでは,較正時に明らかになったプローブの流れ場への影響の考慮が不十分であり,改良が必要である.そのため,標準格子乱流での動作確認は行わなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年は,フラクタル構造体であるシェルピンスキー四面体によって発生した乱流について,本研究で開発した8線式熱線プローブを用いて,乱流の測定,特に非線形のエネルギー移動機構解明のために速度勾配の全成分とその組み合わせた統計量について調べていく予定である.乱流の変動速度勾配については,等方性乱流について,詳しい調査結果が数値計算であるので,初めに,昨年実施できなかった標準格子乱流(実験で実現できる準等方性乱流)について,測定を行う.それ同時に,速度電圧変換プログラムにある問題点を修正する.最後に,フラクタル乱流による場合の測定を行い.格子乱流の結果と比較しながら,フラクタル乱流のエネルギー移動機構を明らかにしていく.フラクタル乱流は格子乱流に比べ,非平衡状態状態の乱流が広範囲に維持されるので,乱流の平衡/非平衡を統一的にまとめられるようなデータ整理方法を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
秋に予定していた国際会議発表を年度末開催のものに変更したため,報告に間に合わなかったためである. 既に,年度末の海外出張は完了しており,その他は,当初の計画に従って,研究を実施する予定である.
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Research Products
(5 results)