2012 Fiscal Year Research-status Report
静電場中での複合ジェットの安定性と微小粒子・カプセル形成への応用
Project/Area Number |
24560194
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉永 隆夫 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40158481)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エレクトロスピニング / エレクトロスプレー / ジェット / 表面張力 / 非線形 / 静電場 / ドリッピング / コーンジェット |
Research Abstract |
近年,食品,化粧品,医薬,製薬工業等の多くの分野で微小粒子やカプセル,微細ファイバーの需要が高まっており,これらを静電場中での流体ジェットを用いて形成する試みが主に実験的に行われている.本研究の目的は,このような静電場中での流体ジェットのうち,単相もしくはコア部と円筒部よりなる複合のジェットにおいて,ジェットの不安定性のメカニズムを明らかにし,崩壊もしくは微粒子化やカプセル化を引き起こすパラメータ領域,素材組み合わせなどを解析的に予測することを目的とする. 当該年度は,単層ジェットについての解析を行った.解析ではジェットが長さ方向に電位差のある同軸の金属円筒シース内にある場合を考え,長波近似のもとで得られたジェットの非線形方程式を数値解析により調べた.その結果,ノズルから噴出するジェットの崩壊モードは,表面張力が支配的で大きな液滴が形成されるドリッピングモードと静電力が支配的で先端の細い円錐形状が形成されるコーンジェットモードの二種類であることが示された.さらに,どちらのモードが現れるかは,電気ペクレ数と電気・流体力比の二つのパラメータにより決定され,各々のモードが現れるパラメータ領域が明かになった.さらに,ドリッピングモードで形成される液滴径の大きさは,電気ペクレ数が小さくなければ,電気力が流体力に比べて大きくなるにつれて径が小さくなる.このことは,同時に行った線形解析の結果と定性的に一致するが,線形理論ではどちらのモードが現れるかは判定できない. このように本解析で得られたモードパラメータ領域に関する知見は,これまで主に実験的に調べられてきたモード遷移が,理論的に予測できることを示しており、今後の実験における材料の撰定や現象の予想に大きく寄与できるものと思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り当該年度には単相ジェットのモデル化と解析を行い,進行状況は概ね順調である.導出した方程式の数値解析により二つのモードが現れ,その存在するパラメータ領域を特定できたことは評価に値する.ただ,他のそれほど重要ではないと思われるパラメータ,特に,ウェーバー数の影響についてはドリッピングモードでその影響が現れると思われる.また,コーンジェットモードは最終的にはスピニングモードかスプレーモードになることが予想され,それらについても解析結果を詳細に調べる必要がある.以上は,すでに作成した数値プログラムで,パラメータ値の設定だけの問題であり,原理的な困難さはないと思われる.一方,問題設定では同軸金属円筒シースがジェット表面電荷分布に与える影響は一定としているが,それらの影響をさらに詳細に調べることは,ジェットのコントロールという観点からも重要であり今後注意が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
すでに述べたように単相ジェットに関しては,数値解析で一部調査が必要なパラメータ領域があるため,今後も引き続き行う.一方,計画通り次年度からは複合ジェットの解析に移る.この場合コア部に加えて円筒部の解析を行う必要があり,単相ジェットの場合よりもはるかに複雑になる.手法はこれまで行ってきた複合ジェットの解析と同じではあるが,コア部と円筒部での電場や内外界面での表面電荷分布の取り扱いに注意を要する.予想される方程式は,コア部と円筒部の連立方程式に加え,圧力に関する全流れ場での常微分方程式を各時間ステップで解く必要がある.そのため,まず半無限長さジェットの解析を行い,複合ジェットがコーンジェットモードのうちエレクトロスピニングのようなファイバー状になったときの非線形安定性について調べる.一方,ドリッピングモードやスプレーモードの場合のような有限長さジェットではジェット先端部の振る舞いが,圧力場との関係において数値解析プログラムの作成では注意が必要である.次年度の最終的な目標は,カプセル形成のための表面張力、静電場の強さ,粘性や誘電率などのパラメータの設定を明かにすることである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究経費は601,350円(次年度交付予定額600,000円+今年度の繰越額1,350円).交付申請書では物品費20万円,旅費40万円であるが,物品費25万円,旅費25万円,その他10万円とする.内訳は,物品費は計算機CPUおよびストレージの更新,旅費は国内出張で物理学会(徳島,神奈川)および流体力学会(東京)を予定している.その他は学会登録費,および論文掲載費に充てる.
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