2013 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤溶液における薄膜の安定化機構に関する研究
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24560204
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
脇本 辰郎 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10254385)
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Keywords | 界面活性剤 / 薄膜 / サーモキャピラリー効果 |
Research Abstract |
平成25年度は実験装置を改良して測定の信頼性を向上させるとともに,界面活性剤分子の吸着密度数が膜の安定化に及ぼす影響を明らかにした.本研究では,界面活性剤溶液薄膜にレーザーを照射して局所的に加熱し,温度差に伴う表面張力差(温度マランゴニ力)により膜に張力を加えて穿孔を誘起する.膜の安定性が高いと穿孔に至るまでの時間(以下,穿孔時間と表記)が長くなるので,穿孔時間が膜の安定性の指標となる.前年度までに,実験法を確立していたが,レーザービームの強度分布が穿孔時間に与える影響が非常に大きいことがわかったため,今年度はビームの強度分布の管理を厳密に行い,測定の信頼性を向上させた. 前年度までに表面粘性や界面間の静電気力により膜が安定化されていることが推測されたので,特に陰イオン性の界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムを用いて濃度の異なる溶液を作成し,活性剤分子の吸着密度が膜の安定化に及ぼす影響を調べた.吸着密度はGibbsの吸着式より算出し,吸着密度と穿孔時間の関係を明らかにした.その結果,30nmol/m^2以上では吸着密度に対して線形的に穿孔時間が増加し,安定化効果が徐々に強くなる一方で,それ以下の極微量の吸着密度では安定化効果が不連続的に強くなることがわかった.活性剤無添加では膜が形成されないことから,極微量の活性剤の添加で液表面の構造的な変化が起こって膜が形成され,その後さらなる吸着密度の増加に応じて膜が安定化されるものと考えられる. また,さらなる活性剤溶液薄膜の安定化要因を検討した.低濃度の非イオン性活性剤では,活性剤分子の液面への吸着が遅く,液面が伸長すると一時的に吸着密度が下がる.これによる濃度差マランゴニ力によって伸長を抑制する力が働く.この効果を考慮して穿孔現象を数値シミュレーションしたところ,この効果が安定化に有意に寄与していることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,レーザービームの強度分布が穿孔時間に与える影響が非常に大きいことが判明した.前年度までに実験法を確立させたはずであったが,今年度になって,穿孔時間の再現性が得られない場合がしばしばあった.その原因がレーザービームの強度分布の僅かな変化にあることがわかったが,この問題解決に時間を要した.このため,当初計画では平成25年度中に干渉縞による液膜厚さ分布の測定や膜流動のPIV測定の手法を確立させる予定であったが,現在もそれらの実験手法の検討を継続中である. 数値シミュレーションによる流動解析については順調に結果が得られており,表面粘性,濃度差マランゴニ力の安定化効果を考慮したシミュレーションが可能となっている.今後,シミュレーションの条件に対応した実験を行い,実験とシミュレーションの結果を比較して膜の安定化効果の要因や膜のレオロジー特性を明らかにしていく予定である. 実験における遅れがあるため,現在の達成度の状況としては「やや遅れている」と自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように,干渉縞による液膜厚さ分布の測定や膜流動のPIV測定ができていないため,早急にこれらを実施する.また,吸着密度が膜の安定化に及ぼす影響だけでなく,分子の化学的性質や分子鎖の絡み合いの程度などが及ぼす影響についても調べるため,活性剤の種類を変えた実験も行う予定である.さらに,膜の安定化要因として界面に吸着している分子の静電気反発力を考え,これを考慮した数値シミュレーションを行う.研究の最終目標として,実験結果とシミュレーション結果を比較検討し,表面粘性,静電気反発力,濃度マランゴニ力などの安定化効果が膜の安定化に及ぼす効果を定量的に評価し,膜の安定化メカニズムと膜流動のレオロジー特性を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「研究実績の概要」や「現在までの達成度」で述べたように,実験の手法上の問題があり,当初の計画通りに研究が進まなかった.このため,次年度使用額が生じた.当初の計画では,干渉縞による液膜厚さ分布の測定や膜流動のPIV測定の実験法を確立させる予定であり,これらの測定に必要な経費を計上していたが,経費の全額執行に至らず,約15万円が次年度使用額として繰り越された. 次年度使用額としての約15万円は,干渉縞による液膜厚さ分布の測定や膜流動のPIV測定に使用するために計上していた経費である.進捗は遅れているが,これらの測定は平成26年度に実施するので,測定に要する機材・材料のために15万円を執行する計画である.
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Research Products
(4 results)