2013 Fiscal Year Research-status Report
デジタルホログラフィによる粒子流速計測法の高精度化に関する研究
Project/Area Number |
24560213
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
近江 和生 大阪産業大学, デザイン工学部, 教授 (10144536)
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Keywords | 流体工学 / 3次元流体計測 / 粒子画像流速測定法 / ホログラフィー / トモグラフィー |
Research Abstract |
位相シフト方式のデジタルホログラフィを3次元の粒子流速計測法に適用し、撮影ホログラムからの再生像の画質を大きく高めて粒子の位置捕捉精度を高めるとともに、手法そのものをトモグラフィによる計測手法とハイブリッド化することにより、流速測定の実用性と精度を向上させることを研究の第1目的としている。この研究目的に向けて平成25年度は、2光路方式のホログラム像撮影系において、参照光と物体光の光路にそれぞれAOM素子と2台の独立のデジタルファンクションジェネレータを導入し、ヘテロダイン方式により2光路間に一定の周波数偏差を発生させ、それを動画撮影カメラで時系列的に撮影することにより、位相シフトホログラム画像の記録を行った。その結果、この周波数変調方式の位相シフトホログラフィの記録系では、従来のピエゾステージ方式の位相シフトホログラフィに比べて、高速かつ安定した位相差ホログラム画像の記録が可能であることが確かめられた。 一方、トモグラフィによる粒子像の3次元認識手法については、前年度における複数カメラの撮影法と校正方法、トモグラフィの再構成アルゴリズムの高精度化と効率化、再構成画像からの粒子位置捕捉アルゴリズム等に関して一定の評価が定まったため、平成25年度は長時間露光による粒子像(すなわち粒子流跡線)のトモグラフィ再構成の研究に研究の主眼を向けた。2次元画像による粒子流跡線の可視化では、流跡線同志の不可避的な交差と流跡線の方向判定という大きな問題があるが、3次元流跡線をトモグラフィにより再構成する場合には、各カメラの撮影像における流跡線交差の影響は容易に除去できる。流跡線の方向判定のためには、流跡線の撮影光源に連続光レーザとパルスレーザとの2種類のレーザシートを併用し、流跡線ベクトルの始点に形状的な特徴を付けて撮影することにより、再構成した3次元流跡線上でその方向判定を行う画像処理手法を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3次元の画像流体計測を可能にする2つのキーテクノジーのうち、トモグラフィの研究は実用性や精度の点で満足すべきシステムが整いつつあり、現在はそれを位相シフト方式のデジタルホログラフィとハイブリッド化することを念頭において、長時間露光の粒子像(流跡線像)の3次元再構成に適用する技術の開発に主眼をおいている。ただし3次元再構成した流跡線像を画像解析し、その形状的特質から個々の粒子の3次元速度を復元する部分の研究については、実際の流体実験で撮影される流跡線像のクオリティ上の問題もあり、現状で必ずしも良好な速度分布結果が得られない場合も見受けられる。流跡線の撮影画像は、撮影光学系の特性による解像度の問題や像自体のハレーション等の問題があるため、短時間露光による粒子の瞬時画像と比較して、その幾何学量を正確に見積ることには困難な部分が多いことを認識している。 一方の位相シフトデジタルホログラフィの研究については、新たな位相シフト方式の実装とその検証をほぼ完了しており、撮影した位相差ホログラム像から粒子の立体像を再現する計算処理系も順調に開発が進行しているが、光路の厳密な位相を扱うこの手法は単純なインラインホログラフィ等に比して、計測対象である流体の密度変化や屈折率変化には敏感に反応することに留意する必要がある点を確認した。流体自体やそれが接する固体境界における光学特性をよく認識せず位相シフト法を適用すると、再生像に明瞭な位相縞が発生し、そこに再生粒子像が重なると、その粒子の正確な奥行計測はほとんど不可能になる。よって、位相シフトホログラフィではこの位相縞を発生させない粒子ホログラム像の撮影が肝要であり、とくにマイクロチャンネルの流れへの応用では、チャンネル素材の光学特性による位相縞発生が重要問題となる。平成26年度は、この問題点を位相シフト法応用面での重要課題と位置づけて研究する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究では、位相シフトホログラフィでのホログラム像撮影における流体自身および流路容器の光学条件を適正化して、再生像に生じやすい位相縞の問題解決に研究の主眼を置く予定である。それと並行して前年度に引き続き、粒子の再生画像からその奥行き位置を高精度かつ効率的に決定する新たな画像解析アルゴリズムの開発とその検証にも研究の重点を置く。ホログラム再生像から個々の粒子の奥行き位置を決定する画像解析手法については数々の方法が提案されているが、その多くは再生された粒子近傍の画素輝度や輝度の微分量の奥行き方向変化を判断材料としているのに対し、本研究では再生断面における粒子像輝度ピークの幾何学的形状変化に着目して合焦位置を決定する方法をさらに発展させた手法を試みる。 この一方で、トモグラフィによる粒子画像計測の研究は、前記のようにカメラの長時間露光による流跡線像からその3次元再構成像を高解像度で再現し、そこから各粒子の変位ベクトルを的確に評価する手法の実用化に研究の主眼をおく。そのための具体的な取り組みとして、流体中のシード粒子の粒径と形状の均一化を高度のレベルで実現するとともに、カメラの撮影光学系をさらに高精度化して、撮影される流跡線像の実解像度を上げること、照明用の連続光レーザをAOMを用いてスイッチングし、それをパルスレーザ発光のトリガパルスと同期させることで、粒子の短時間および長時間露光画像における時間情報の精度を高度化すること等を試みる予定である。同時に3次元流跡線像の画像解析アルゴリズムにさらに吟味を加え、デジタル化に伴うサンプリング誤差の影響を最小化するための解析手法についても検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定であった消耗品類の若干の値下がり、実験補助の学生アルバイトの一時的中断等による。 今年度の研究実施により新たに判明した、デジタルホログラフィならびに計算機トモグラフィの実験設備における問題点の改善のため、必要な機器等購入の補填予算として使用する。
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Research Products
(5 results)