2013 Fiscal Year Research-status Report
ポリマー液体及びソフトマター中に発現する構造と熱エネルギー伝搬特性
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24560218
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小原 拓 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (40211833)
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Keywords | 熱工学 / 分子伝熱 / 界面熱抵抗 / 液体 / ポリマー / 固液界面 / 固体表面 |
Research Abstract |
ポリマー液体やソフトマターを対象として、その構造に発現する不均一性・非等方性に着目し、熱輸送の特異性を分子動力学シミュレーションにより解析するのが本研究の目的である。直鎖アルカンを液体として選択し、(a)バルク状態の液体、(b)気液界面、(c)SiO2(シリカ)固体の各種結晶面と接する固液界面について、液体の構造や吸着・移動など分子の挙動を観察し、熱輸送特性を解析する。本年度は以下の成果を得た。 1. バルク液体の熱伝導解析法についての検討を完了した。アルカン分子のモデルとして広く用いられているAll-Atom (AA) モデルとUnited-Atom (UA) モデルを適用して熱伝導現象をそれぞれ再現し、熱流束を構成する各種分子熱輸送メカニズムの寄与度を比較した結果、AAモデルにおいては、分子が力学的エネルギーをもって空間中を移動することによる熱輸送の効果が大きく、分子間で分子間力の作用によりエネルギーを伝搬することによる効果が相対的に小さくなっていることが明らかとなった。気体分子運動論を念頭に比熱や拡散係数を比較することにより、AAモデルが過大な比熱を生じさせていることに問題があることがわかった。 2. 気液界面におけるアルカン液体の構造や分子の移動の特性を解析した。空間に固定した座標上で界面特性を計測する一般的な気液界面解析法では、界面位置が振動することにより特性が平均化され失われてしまう。本研究では、気液界面を捕獲して界面特性を観測する手法を適用し、分子の配向や自己拡散係数が界面近傍で大きく変化する様子を捉えた。 3. SiO2-アルカン界面近傍における液体構造と輸送特性について解析を進めた。固体表面の構造の違いにより液体分子の吸着・移動特性が大きく異なることや液体中の熱輸送特性が界面近傍で大きく変動することなどを見出しており、現在系統的な解析を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直鎖アルカンのバルク飽和液に対する解析により、All-Atomモデルによる熱伝導の分子動力学シミュレーションがもつ問題点を初めて明らかにすることができ、今後の同種のシミュレーションに対する示唆を与えると共に、本研究における分子モデル選択において指針をもつことができた。また、気液界面・固液界面の計算系を構築し、液体構造や分子の挙動を中心とした成果を得ることにより、本研究における主な研究対象について来年度に行う解析の準備を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる来年度は、固液・気液界面の構造と分子挙動について精度の高い解析結果を得て、これらに輸送特性の観点から考察を加えると共に、界面近傍領域における熱輸送特性を明らかにする。また、これらの成果から熱工学的な知見をまとめることにより、本研究を完了する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)