2013 Fiscal Year Research-status Report
石油代替合成燃料としてのジメチルエーテルの利用技術に関する基礎研究
Project/Area Number |
24560219
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
金野 満 茨城大学, 工学部, 教授 (90205576)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 光太郎 茨城大学, 工学部, 准教授 (10455470)
|
Keywords | ジメチルエーテル / 噴霧 / 燃焼 / 高速度観察 / モデル / 反応 / 数値解析 |
Research Abstract |
本研究は,バイオマス等の多様な資源から大量安価に製造可能な合成燃料であるDMEの実用化を図る上で利用技術の根幹となる噴霧燃焼の詳細を明らかにし,そのモデル化を図ることを目的としている.3年間の全体研究のうち,初年度である平成24年度は,超高速度光学観察に注力し,実機相当の雰囲気条件におけるDME噴霧を1,000,000コマ/秒で撮影することに成功し,噴霧形状や貫徹力といったマクロ特性の他,分裂・蒸発過程を詳細に捉えることができた.また,Zhao等のDME酸化に関する詳細素反応モデルの簡略化を試み,着火遅れや主要中間生成物の濃度履歴を再現しつつ計算負荷を大幅に軽減することに成功した. 平成25年度は,DMEの燃焼噴霧の高速度観察を実施し,従来の軽油噴霧燃焼の観察も行って両者の違いを明らかにした.DMEの蒸発は軽油噴霧に比べて圧倒的に速いこと,火炎保持位置が上流側に位置すること等を明らかにした.また,火炎輝度は軽油噴霧に比らべて圧倒的に低く,燃焼過程で煤を生成していないことも分かった.この観察結果を参照して分裂,液相長さ,蒸発特性を再現する物理モデルを構築した.この物理モデルと昨年度作成した反応モデルをカップリングさせたDME噴霧燃焼モデルを用いて実験と同様の条件で数値解析し,実験で得られたDME噴霧燃焼の特性を概ね再現できることを確かめた.ただし,着火遅れがやや長い傾向があり,次年度の課題となった. また,半導体レーザを用いた吸光分光法によるDME噴霧内燃料濃度の計測に取り組み,雰囲気圧力に対する広がり係数を明らかにするなど,定量計測に資する分光基礎データを取得した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの2年間で,①DME噴霧の超高速度・詳細拡大観察,②酸化反応に関する簡略モデルの開発,③噴霧モデルの開発,および④レーザー吸光分光法による濃度計測の基礎データ取得等を実施し,ほぼ当初の研究計画通りの成果を得ることができた. ①では,過給機関および自然吸気機関に相当する高温・高圧場(920K/6.0MPa,800K/4.5MPa)におけるDME燃焼噴霧を1,000,000コマ/秒の超高速度で詳細観察することに世界で初めて成功した.DME噴霧では蒸発速度が分裂速度を上回るため,軽油噴霧のような分裂・液滴形成・蒸発といった一連の過程を経ずに噴霧周辺から蒸発すること,火炎は不輝炎で煤粒子を全く生成しないこと,等を明らかにした. ②ではZhao等の詳細祖反応モデルをベースに感度解析を行って主要反応を選定して化学種数29,素反応式数37の簡略モデルを作成した.作成したモデルは温度700~1500Kの範囲で着火遅れおよび主要中間生成物の濃度履歴をよく表現できた.計算負荷は,詳細素反応モデルに比べて約1/10に軽減し,実用的な数値解析に用いる目途を得た. ③では,上記①の噴霧観察結果をベースに分裂・蒸発・液相長さのサブモデルを開発し,DME噴霧の特徴である速やかな蒸発特性を表現できた.また②の反応モデルとカップリングさせて,燃焼噴霧に対しても大まかな特徴を再現することのができた.ただし,着火時期は実測に対してやや長く,今後の改良が必要なことが分かった. ④では,噴霧内DME濃度の定量計測に欠かせない雰囲気による吸収線の圧力広がり係数を取得した.噴霧内濃度計測には至っていないが,次年度以降の定量計測の目途を得た.
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には,当初の計画通り,①半導体レーザを用いた吸光分光法によるDME噴霧内当量比の計測を行い,②前年度までの噴霧観察結果を合わせて各種サブモデルの改良を行い,③それらをカップリングして,実験と同じ定容容器場およびエンジン場におけるDME燃焼噴霧の数値解析を実施し,DME噴霧燃焼の総合的理解に努めるととともに,DMEの燃料特性に適した噴射系・燃焼系を提案を目指す. ①では,本年度取得した吸光基礎データをもとに定容容器に噴射されたDME噴霧内当量比分布の測定を試みる.本年度取得した圧力広がり係数によれば,実機相当の雰囲気では吸収線の広がりが大きく,S/Nが低下して精度良い計測が困難なことも考えられる.その場合は,より吸収の強い吸収帯を使用するか,計測雰囲気圧力条件を低下させることで対応する. ②では,開発したモデルの着火時期に実測値との誤差があったため,この修正を最大課題として取り組む.反応モデルの再現性は確認できているので,空気導入に関連する物理モデルに問題があり,噴霧内当量比分布の予測精度が不十分である可能性が高い.上記①のレーザ吸収分光法による計測結果を参照してモデルの改良を図りたい. ③では,②で改良したサブモデルをCFDコードに移植し,前年度までの定容容器を用いた噴霧観察結果と比較して,広範な条件で噴霧特性を適切に表現できることを確認する.必要に応じてモデル調整を行う.そして,燃料噴射圧,噴孔径等の噴射パラメータがDME噴霧の空気導入と当量比分布に及ぼす影響について検討し,軽油噴霧とも比較してDME噴霧に適した噴射条件を明らかにする.さらに,排気清浄化の観点から,一酸化炭素および窒素酸化物の生成特性を数値解析により明らかにし,噴射条件,燃焼室条件,EGR(排気再循環)の効果と限界について検討する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初平成25年度に予定していた国際学会への参加を平成26年度にしたこと,および噴霧観察や当量比計測のための光学部品,配管部品等の購入が研究の進捗状況により予定より少なかったため. 旅費については,2014年10月20~23日にバーミンガム(イギリス)で開催されるSAE International’s Powertrains, Fuels & Lubricants Meetingに出席するために使用する.また,噴霧観察追加実験,噴霧内当量比計測のために光学部品および配管部品等を購入する予定である.
|
Research Products
(2 results)