2013 Fiscal Year Research-status Report
MEMS技術を利用した単気泡下の限界熱流束(CHF)の発生機構の解明
Project/Area Number |
24560241
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
大竹 浩靖 工学院大学, 工学部, 教授 (40255609)
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Keywords | 熱工学 / 沸騰 / 限界熱流束 / 核沸騰 / MEMS / キャビティ / 気泡 / 伝熱促進 |
Research Abstract |
本研究は、MEMS技術にてマイクロメートルオーダーの微細な円孔を加工し、この一点のみから発生する制御された沸騰気泡システムを作り上げ、その制御下の単一沸騰気泡による限界熱流束を実験的に検討するものである。 初年度に引き続く平成25年度は、電子回路用銅薄膜製プリント基板および超鏡面加工を施された電子回路用シリコンウエハーを加熱面として実験的検討を行った。具体的には、マイクロメートルオーダーの傷しかないプリント基板上にウェットエッチングにより、また、ナノメートルオーダーの傷しかないシリコンウエハー上にMEMS技術(ボッシュ加工対応Deep RIE)にて、それぞれ数十μmの円孔キャビティを作り、これを沸騰核として、核沸騰および限界熱流束の実験を行った。つまり、人工的に制御されたキャビティのみから発生する制御された沸騰気泡システムを用いて、沸騰熱伝達および限界熱流束の機構の解明を試みた。なお、加熱面の加熱は昨年度同様、銅薄膜への直接通電加熱により行った。温度計測も、銅薄膜の電気抵抗の温度依存性を利用して行った。 その結果、(1)低圧条件(0.01MPa)ではあるが、銅薄膜製伝熱面の場合、制御された沸騰気泡システムにて、単気泡での限界熱流束を確認し、詳細な高速度撮影動画を取得することができた。この画像解析の下、低圧下では、加熱面寸法の数倍の直径を持つ単気泡が離脱後、離脱気泡底部に加熱面と同等の直径を持つ筒状の気泡が生成、上部の気泡と合体し即座に離脱する現象を確認した。つまり、気泡離脱後の過熱液層と次に生成された気泡の成長が限界熱流束のモデル化の鍵となることを示唆した。(2)シリコンウェハー製伝熱面の場合には、周辺から気泡発生が顕著であった。この事実に基づき、プリント基板製伝熱面上に、これより面積の小さいシリコンウェハー製伝熱面を重ね合わせることで、約5倍の沸騰熱伝達の促進の事実を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「2年目は、圧力が限界熱流束に及ぼす影響を実験的に検討する」ことが達成され(大気圧(0.1MPa)と低圧(0.01MPa)で実験)、一定の成果が得られた。また、本研究の主目的である、『MEMS技術にて、微細な円孔を加工し、この一点のみから発生する制御された沸騰気泡システムでの沸騰実験』を行うことができ、重要な高速度撮影結果を得た。ただし、基本的な大気圧下条件での『一点のみから発生する制御された沸騰気泡システムでの沸騰実験』までには至らなかった。この原因としては、未だ、微細なMEMS加工円孔が唯一有効なキャビティとはなっておらず、加熱面周囲から多くの沸騰気泡の発生が認められたためと考えられる。今後、これに関する改善が求められる。ただし、これを利用した、伝熱促進方法は確立しつつある。また、現状では高圧条件での実験結果が不足している。より多くの実験結果の蓄積が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度(最終年度)では、2年目の計画であった「圧力が限界熱流束に及ぼす影響を実験的に検討する」、特に、高圧条件での実験を行い、総合的に圧力が沸騰熱伝達および限界熱流束のメカニズムに及ぼす影響を実験的に検討する。この実験実施のための実験装置には、基本的に大きな変更はない。 また、当初の最大の目的である『一点のみから発生する制御された沸騰気泡システムでの沸騰実験』を大気圧下および高圧力下で実施する。なお、本実験システム(一点のみから発生する制御された沸騰気泡システムでの沸騰実験)では、大気中に浮遊する微細なゴミ(数マイクロメートルオーダーの塵や埃等)の除去が必要とも考えられるので、これらを排除可能なヘパ・フィルターを有するクリーンブースの導入を引き続き検討し、必要とあれば、最終的には、クリーンブースを導入し、より理想化された実験条件を整備する予定である。 加えて、最終年度の主目標である「限界熱流束のモデル化」に挑む。低圧条件では、既に、「制御された沸騰気泡システムにて、単気泡での限界熱流束を確認し、高速度撮影動画を取得すること」ができている。詳細な画像解析結果を蓄積し、その結果を考察し、モデルを進める。大気圧条件および高圧条件での高速度撮影も随時実施し、それらのモデル化も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、本研究の最大の目標である『一点のみから発生する制御された沸騰気泡システムでの沸騰実験』、特に限界熱流束実験の安定的な実施のためである。すなわち、本実験システムでは、大気中に浮遊する微細なゴミ(数マイクロメートルオーダーの塵や埃等)の除去が必要と考えられる。特に、熱流束の大きい限界熱流束付近では、微細なゴミからの気泡生成も十分に考えられる。そこで、これらを排除可能なヘパ・フィルターを有するクリーンブースの導入を引き続き検討し、必要とあれば、これを導入し、より理想化された実験条件を整備する予定である。なお、平成24年度の実施(収支)状況報告書でも、同様な理由を記述したが、平成25年度では主として熱流束が低い低圧条件の実験が多かったため、クリーンブースの導入には至らなかった。平成26年度は、さらに高い熱流束の実験を計画しているので、これの必要度はより高くなる。 次年度使用額が生じた理由の欄で記述したように、次年度使用額と翌年度分として請求した助成金と合わせた金額を有効に使用し、これまでの実験で得られた事実および十分な調査をした後、大気中に浮遊する微細なゴミ(数マイクロメートルオーダーの塵や埃等)を効率よく除去可能なヘパ・フィルターを有するクリーンブースの導入計画し、より理想化された実験条件を整備する予定である。
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Research Products
(5 results)