2013 Fiscal Year Research-status Report
化合物半導体結晶成長安定化のためのダイナミクスに関する研究
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24560244
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
菊田 和重 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90214741)
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Keywords | 化合物半導体 / 結晶成長 / 伝熱 / 可視化 |
Research Abstract |
GaAs単結晶成長における非常に複雑な熱・物質移動現象の解明を目的として,実機を模擬した結晶成長実験装置を用いた可視化実験ならびに数値シミュレーションを実施した. 結晶成長時には粘性が大きく異なる2つの流体が互いに逆方向に回転する相対運動を行っているため強制対流と自然対流が共存する場であることのほか,結晶の成長に伴いGaAs融液が減少することにより両対流が競い合うことで一層複雑な挙動を示す.そのため長い時間軸上では非定常な結晶成長の様相を示すことになる. 昨年度概ね確立できた可視化手法を用いて,今年度は結晶成長に伴う融液の量の減少の際の強制対流と自然対流の競合場についての詳細な可視化実験を行った.その結果,結晶成長初期の融液が多い場合には双方の回転による強制対流よりも自然対流による大きな循環流が結晶成長界面に与える影響が大きく,結晶成長中期,後期では融液の減少に伴い自然対流よりも強制対流が支配的な場となり,結晶成長界面に与える影響が大きいことが明らかになった.一方,数値シミュレーションでは,実験の検証を行うためのモデリングを行った.粘性の異なる2流体を模擬可能としたほか,自然対流の影響を確認できるようになった.結晶と融液が入ったるつぼの双方の回転のモデリングに困難を極めており,強制対流を組み入れた計算がまだできない状況にある.次年度にはモデリングを完成し,実験結果の検証を実施予定である. 以上本年度の可視化実験により,結晶成長に伴う融液の量の違いによる結晶成長界面での強制対流と自然対流の影響を確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度概ね確立できた可視化手法を用いて,GaAs融液の量の違いによるるつぼ内での融液の非常に複雑な流れを捉えることができ,結晶成長界面での強制対流と自然対流の影響を明らかにすることができた.結晶成長時には,この2つの対流が大きく影響して成長界面の状態を決定することになるため,今年度の研究成果はとても意義のあるものとなった.また,数値シミュレーションの方でも実験結果を検証するまでには至らなかったものの,着実にモデリングは進んでおり,有効なツールになりつつある. これらの成果から,おおむね本研究は順調に進展しているものと評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により,可視化実験からは融液の複雑な挙動が明らかになってきた.それを数値シミュレーションにより再現することにより,非常に複雑な結晶成長のメカニズムを明らかにして行く.そのためには数値シミュレーションの精度を上げて行く必要があり,回転による強制対流の影響を加えて行くことを初めとして,凝固潜熱を加えるほか結晶成長界面形状をある程度予測できるようなモデルにまで発展させる必要がある.次年度はこのモデリングを完成させ,結晶成長メカニズムを明らかにするほか成長界面制御手法の提案を行う予定である.
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