2013 Fiscal Year Research-status Report
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24560245
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
花井 宏尚 群馬工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30312664)
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Keywords | ナノサイズ / 粉体 / 燃焼 |
Research Abstract |
粉体はこれまでと同じ真球のポリメチル酸メチル樹脂を用いた.粉体サイズは0.1,0.5,0.8ミクロンおよび5.0~200ミクロンである. 実験は,定容器を用いた球状火炎伝播実験,およびノズルバーナーを用いた定在火炎実験を行った.定容器は円筒形状8 Lの容積を持ち,円筒軸が垂直になるように容器を設置した状態で粉体を容器下部から高圧空気流を用いて容器内に噴射する.着火はニクロム線を用いて容器中心で行った.ノズルバーナーは,ノズル出口直径20 mmで,火炎の安定化のため水素パイロットを用いた.粉体の供給は,本実験に合わせ開発した平歯車式微量定量粉体供給装置を用いた.本装置は,凝集しやすい極微小粉体を少量でも安定に供給することができる. これまでの論文で,数十ミクロン程度のサイズの粉体ではふく射伝熱に起因する振動的な火炎伝播現象がみられることがわかっている.しかし,それは対流のない微小重力環境でしか観察されていない.そこで,ナノ粉体では粉体の沈降が生じないため噴射時の強制対流を十分に治めてから0.8ミクロンの粉体を用いて実験を行った.結果として圧力波形,高速度ビデオ画像ともに明確な振動現象は見られなかった.これは,振動がふく射の平均吸収距離に依存する現象であるため小さな粒子では振動周波数が高く,振幅が小さくなってしまうことと,重力下では自然対流の影響を受け振動が観察でき難くなるためである. ノズルバーナーを用いて火炎構造の観察を行った.ナノサイズの粉体ではマイクロサイズの粉体に比べ火炎後方に形成される揮炎は小さくかつ暗くなるものの依然として存在した.ただし明確な予混合火炎の存在が確認できた.これは,噴霧の場合と異なり,粉体は気化熱の大きさや気化機構の違いによりガス化しにくいため,マイクロメーターオーダー以下の粉体でも火炎前縁で完全にガス化することは困難であるためである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粉体について:使用しているポリメチル酸メチル粉体は,真球状で微細な粉体でも凝集が生じにくい.また比較的粒度分布の小さい粉体を使用しているため,粉体粒径毎の特徴がよく出ている.ただし,ナノサイズ以下の粉体は,安定供給に乏しく多くの粉体を使用する実験は現時点で行えていない. 粉体の分散について:ノズルバーナーを使用するに当たり粉体の定量安定供給が重要となる.これまで代表者が使用していたホッパー型粉体供給装置は,大きな粉体,大量供給には適しているが,径の小さなバーナーへの供給には適していない.そこでモジュールの小さな平歯車を用いた粉体フィーダーを設計・製作し使用している.これに旋回龍を用いた粉体混合チャンバーを組み合わせることにより,ナノサイズの粉体でも安定な供給を達成している. 振動火炎の観察:従来の論文より,ポリメチル酸メチル粉体の伝播火炎に,ふく射伝熱に起因する振動現象が,実験的にも数値的にも発生することが明らかにされている.これは,伝導・対流よりも弱いふく射により生じるため対流の強い重力下では観察が困難であった.また無重力下でさえ数µm程度の粉体では観察できていなかった.ナノサイズの粉体は,強制対流の影響を完全に取り除くことができるため各サイズに対し実験を試みたが振動現象を観察することは出来なかった.これは小さな粒子で観察できなかった微小重力実験と一致する. 火炎構造の観察:上記の粉体フィーダーを用いることでバーナー上に安定な火炎を形成することができた.粉体が小さくなると揮炎が消滅することも期待したが,プラスチック粉体のガス化の困難さからナノ粉体においても揮炎がみられた.
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Strategy for Future Research Activity |
燃焼速度の計測を行う.ノズルバーナーを用いて定在火炎を形成し角度法から粉体火炎の燃焼を詳細に計測する.これは本研究において,微細な粉体では予混合火炎が明確に表れるため可能となった.また燃焼ガス中の燃え残りの観察,NOx濃度の計測を行う. レーザー計測を使った火炎構造の解明を進める.PIVを用いて定在火炎における粒子の消滅を各粉体径に対し明らかにしたい.また,ナノサイズの粉体は搬送空気との間にスリップが生じず,よりガス燃料の火炎に近い構造を持つことが期待できる.これは大きな粉体において,粉体の慣性力により粉体正面の火炎が燃料過濃状態で形成されることが緩和されることを意味する. PDPAを用いれば,火炎前後の粉体の状態についてより詳細にとらえることが可能である.粉体の気化開始位置,完全消滅位置を粉体径をパラメーターに明らかにしたい. 振動現象について,粉体濃度,着火タイミングをより広範に変化させることで,振動の有無を確実にしたい.なお数値解析ではふく射モデルに簡易モデルを用いているため定量的な評価が難しい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ保存のため2TB以上のハードディスクドライブを購入する必要が生じたが,購入価格が2万円以上であったため購入不可となってしまった. 平成26年度年度初めにハードディスクを次年度助成金と合わせて購入し,これまで蓄積した高速度ビデオカメラの画像ファイルのバックアップを作成する.
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