2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
義岡 秀晃 石川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80259845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 亨 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50612016)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 機能材料 / 熱工学 / 凝固 |
Research Abstract |
本研究は,過冷却による凝固を利用して,熱電性能の向上につながるミクロ組織の高配向化と微細化を,熱的操作ワンパスで達成させる新しい材料製造法を開発することを目的とするものである.研究の初年度である本年度は,上記目的を達成するための試験装置を組み上げ,その性能試験を兼ねた熱電半導体の過冷却凝固の実験を行った.供試試料としては,将来の環境発電デバイスへの進展を考え,常温付近で性能を発揮する Bi2Te3系を供試した.本年度で得られた具体的な成果内容を以下に示す. (1)試料を不活性雰囲気のもとで融解させ,任意の過冷却状態と温度勾配のもとで凝固させることのできる実験装置を製作した.試料を融解するための加熱系には,赤外線加熱炉を使用した.試料の酸化を抑えるため融解・凝固を行うための供試体全体を密閉石英管内に設置し,石英管内を不活性ガスで充填するための排気系を設置した.本過冷却凝固法の製造原理においては,任意の過冷却状態と温度勾配を如何に設定するかが課題となる.この問題に対して試料成形金型の両サイドに冷却体と蓄熱体を設置することにより,凝固温度付近において約40K/mmまでの温度勾配の任意設定が可能になった. (2)温度勾配については組織の微細化と指向性の両方に効果的に作用することが低融点合金を用いた予備実験から明らかにされた.また初期に過冷却された領域では非過冷域に比べて微細な組織が形成されることが示された. (3)熱電材料であるBiTe系の凝固組織は無数の柱状ファセット形態のBi2Te3化合物結晶からなり,それらは概ね壁面から垂直方向に成長することが確認された.壁面近傍の過冷却領域では結晶の配列間隔は規則的で緻密な方向性組織となっていることから本手法の高性能熱電材料製造への応用の可能性が明らかにされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した当初の計画通り,供試体,加熱系,冷却系,駆動系,測定機器から構成される装置を製作した.また材料調査を行い,将来の環境発電デバイスへの進展を考え,供試試料にはBi2Te3型を選定した.以上の装置と試料により,凝固に伴う潜熱の除去に過冷却と外部冷却とを併用する手法を試行した.凝固条件の一つである温度勾配の設定は,赤外線管状炉を使用し,不活性気密雰囲気中に設置された金型に冷却体と蓄熱体を設置するなどの工夫を施すことにより達成された. しかし,BiTe融液が融解容器を構成する一部の部材と反応し浸食させる問題が生じた.この問題を解決するため容器の材質と形状を一部変更するなどの改良を余儀なくされた.また過冷却度を大きくするための冷却壁面の性状および試料融液とのぬれ性の問題に絡んで冷却体としての材質選びに試行錯誤の時間を要した.現在では,上記問題を概ね解決し,試料の注湯性を向上させて良好な試料融液の金型内成形を達成させている. 得られた凝固組織は無数の柱状ファセット形の化合物結晶からなることが観測された.それらは概ね壁面から垂直方向に成長しており,壁面近傍の過冷却領域では結晶の配列間隔は規則的で緻密な組織となる結果を得た. 以上,研究の初年度計画において優先事項であった実験装置を組み上げとその性能試験を兼ねた凝固実験を行うことができた.装置システムは,気密性,昇温性,注湯性,冷却操作の条件設定などの要件を満足し,また成形して得られた材料組織は指向性を持った繊維状結晶で構成されることが明らかとされた.しかし,今年度計画で掲げたSEM/EBSD等の分析装置を用いた組織の配向性,濃度分布等の定性・定量分析,ならびに熱電性能特性の分析と性能評価にまでは至っていないため,これらが次年度に先送りされた課題となる.以上のような理由から今年度達成度をやや遅れていると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに,熱電材料であるBi-Te系を供試し,過冷却凝固の実験を行うための装置を組み上げ,本装置システムの性能試験を行った,また凝固に伴う潜熱の除去に過冷却と外部冷却とを併用する手法を指向し,Bi2Te3の化合物結晶が繊維状に配列するファセット形態の組織を観測することができた. 今後の方針としては,まず,マクロな熱的操作条件(過冷却,温度勾配,初期組成)と得られるメゾスケールのミクロ組織のモフォロジー(形態,配列間隔,成長方位)との関連性を明らかにし,次いで,電子線後方散乱回折法(EBSD)によって分子スケールの結晶格子の配向性について調査する. EBSD法による分析は,分析試料の準備段階から技術が必要とされ,経費も掛かることから,まずモフォロジーを押さえてから特定のサンプルに対して調査することとした.現時点ではまだモフォロジー調査の段階であることから,EBSD法による結晶配向性分析を外部に委託するための費用が本年度から次年度に繰り越されている. 製造プロセスとしては,如何に大きな過冷却の状態を設定するかという課題に対して,2段階冷却などの対策を講じながら,マクロ・ミクロ観察の実験を行い,組織制御方法の確立を図る.組織制御された材料に対してバルク材料としての熱電性能特性(ゼーベック係数,電気抵抗率など)を定量分析し,組織学的な視点から熱電材料としての性能評価を行うとともに,現象論的な立場から凝固プロセスに関する基礎研究を進める.最終的に,熱電変換の優先方位への配向性が高く,微細な繊維状組織を有した高性能な熱電変換材料の創製に資する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方針でも述べたが,分子スケールの結晶格子の配向性を調査する前準備として,まず結晶モフォロジーと熱的操作パラメータとの関連性を明らかにしておくことが先決との判断から,EBSD法による結晶の配向分析を外部に委託するための経費として約10万円を次年度に繰り越した. 翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画については,上記の外部委託による調査分析料のほか,前年度に引き続き実験を行うための試料,組織観察用品,装置改良の資材,温度センサ,情報収集ならびに研究発表旅費等に使用する予定である.
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