2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560246
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
義岡 秀晃 石川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80259845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 亨 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50612016)
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Keywords | 機能材料 / 熱工学 / 凝固 |
Research Abstract |
本研究は,過冷却凝固を利用した組織制御によって,高性能な熱電変換材料を熱的操作ワンパスで達成させる新しい材料製造法を開発することを目的とするものである.前年度までに,実験装置を組み上げ, BiTe系の熱電材料を供試した実験を行い,過冷却と外部冷却とを併用による冷却操作によって,結晶の成長方向を指向制御できることを確認した.本年度は,凝固相に現れるミクロ性と熱的な操作パラメータとの関係について明らかとすることを目的として,過冷度と温度勾配を変化させた実験を行い,凝固中の温度を測定するとともに,凝固後の試料に対しては顕微鏡による組織観察,X線アナライザーによる組成分析,ならびにEBSD法(電子線後方錯乱回折法)による結晶構造解析などを行い,熱電変換材料の高性能化の可能性について検討した.本年度で得られた具体的な成果を以下に示す. (1)凝固組織は無数のBi2Te3化合物と共晶マトリックスからなり,Bi2Te3の結晶モフォロジーは板状ファセットとなること明らかとなった. (2)ファセット状の化合物結晶の自由成長機構が,結晶まわりに発達する温度濃度共存場,過冷場と関連づけて,従来のデンドライト結晶の成長モデルとの比較のもとで示された. (3)ミクロ組織に関しては,過冷度ならびに温度勾配が大きいときほど,結晶数密度が大きくなり微細組織が形成されること,また,繊維状組織の指向性は温度勾配が大きくなるほど向上することが明らかとなった. (4)結晶構造(原子配列)に関しては,温度勾配が大きい条件下では,六方晶系となるBi2Te3結晶のC軸が冷却面とほぼ平行となるように配向することが明らかとなった.C 軸面では熱電変換の性能指数が高いことが知られているため,本研究が提案する方法が高性能な熱電変換材料の開発に利用できることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度では,供試体,加熱系,冷却系,駆動系,測定機器からなる装置を組み上げ,生活温度域で性能を発揮するBi2Te3型の熱電材料を試料として選定し,凝固に伴う潜熱の除去に過冷却と外部冷却とを併用する手法を試行して,無数の板状ファセット形の化合物からなる結晶群に対して,指向性や傾斜性などのミクロ特性の制御が可能であることを明らかにした.以上,初年度計画において優先事項であった実験装置の組み上げとその性能試験を兼ねた凝固実験を行うことができた. 平成25年度では,前年度に引き続き,非一様な過冷却場を発現させた凝固実験を行い,研究計画通りに,マクロな熱的操作条件(過冷却,温度勾配)と得られるメゾスケールのミクロ組織のモフォロジー(形態,配列間隔,成長方位)との関連性について追究し,結晶寸法の微細化には過冷度と温度勾配を大きくすることが有効であり,結晶成長の指向性には温度勾配が支配的となるなどの成果を得ることができた.さらに,電子線後方散乱回折法によって分子スケールの結晶格子の配向性の調査を行い,本研究で提案する手法によって,結晶モフォロジーの指向性のみならず原子スケールにおいても,熱電変換効率を高める結晶構造の配向制御が概ね可能であることが明らかにされていることから,今年度の達成度をおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに,Bi-Te系熱電材料を供試し,非一様な過冷却を発現させた凝固実験を行い,結晶成長の原資として過冷却と外部冷却とを併用する方法によって,板状ファセット形態の繊維状結晶群が指向性を持って形成されること,また,分子スケールにおいては,熱電変換にとって有利な方向に結晶の原子配向が整えられることが明らかとされた.本製造法を実用化するための技術的な課題としては,成形試料と金型との剥離性の問題や壁面核生成の制御の問題が挙げられる.これらの問題に対しては,現在,金型表面と冷却面にコーティングを施す表面改質による方策を検討し,現在試行実験を行ってる. 今後の方針としては,引き続いて装置細部の改良と凝固実験を行い,過冷却,温度勾配,初期組成などの凝固パラメータと,結晶モフォロジー,組成分布,結晶構造などの凝固相に現れるミクロ性との関係に関するデータを積み上げ,現象論的な立場から凝固メカニズムの解明に取り組むとともに,実験的理論的に高性能な熱電変換材料を創製するための最適操作条件を明らかにすることを目標とする.分析手法としては,これまでの顕微鏡等によるミクロ解析に加えて,バルク材料の熱電性能特性(ゼーベック係数,電気抵抗率など)についても調査し,熱電変換材料としての性能評価を行う.最終的には,化合物の結晶様式をとる機能環境材料の材料プロセスの高度化を図るとともに,本研究が提案する過冷却凝固法による高性能熱電変換材料の製造法の確立を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験によって作製した試料に対して,結晶構造解析を行うには,電子線後方錯乱回折法(EBSD法)が用いられる.EBSD法を行うためには,試料の前処理として,観察面をイオンミリング等の特殊機器を用いて表面処理する必要がある.本研究では試料の前処理から結晶構造解析までの一連の分析作業を外部委託しており,計画通りに研究を推進するための分析結果の情報は,順次に外部委託先より受け渡しがなされているものであるが,複数持ち込んだ試料の一部が年度をまたいで継続分析中であり,複数の依頼分をまとめて会計処理するために,経費を次年度に繰り越した. 繰り越した研究費は,当初の計画通り,EBSD法による結晶構造解析の外部委託による調査分析料として使用する予定である.また,翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は,上記の調査分析料のほか,前年度に引き続き実験を行うための試料,組織観察用品,装置改良の資材,温度センサ,情報収集ならびに研究発表旅費等に使用する予定である.
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