2013 Fiscal Year Research-status Report
超音波瞬時振動数を用いたヒートシール多層薄膜構造の評価技術
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24560264
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 卓見 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40274485)
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Keywords | 機械力学・制御 / 超音波 / 診断 |
Research Abstract |
ヒートシールは,表層-基材-接着層の3層からなるシール材を2枚用い,互いの接着層を重ねて加圧,加熱して接着層を溶融し密閉する.各層の厚さはミクロンオーダーであり薄膜の多層構造である.このような対象に超音波を投射した場合,各層で反射した波動が多重に干渉・重畳して,各反射波の振幅がどのように変化したか全くわからず有効なシール強度の評価ができない.本研究では,ヒートシールに投射・反射した超音波パルスの瞬間的な振動数(瞬時振動数)に着目してシール強度を評価する手法を開発している.平成25年度は以下の知見を得た. 1.当初は,超音波の基本振動数により瞬時振動数の感度が変化し,最も感度のよい基本振動数が存在するとの予想をしていたが,実際は,各超音波探触子の瞬時振動数の特性に評価感度が大きく依存することがわかった. 2.ガウス関数を用いた解析的な超音波パルス波形を用い,波動が干渉・重畳する単純な二層間の反射について,各超音波探触子の瞬時振動数特性による影響を解析的に考察した.単純な瞬時振動数特性を持つ場合は重畳超音波の瞬時振動数を解析的に求めることができ,その変化特性を把握できたが,複雑な瞬時振動数特性を持つ探触子では解析的結果はまだ得られていない.実際の探触子には複雑な瞬時振動数特性を持つものもあり,今後の課題である. 3.ヒートシールは外部から加熱して接着層を溶着させるため,加熱部と接着層間の不純物が接着不良に大きく影響を与えることがわかってきた.中間不純物に対する超音波パルスの変化に関するデータも得られ,新たな知見となってきている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の個別目標は,以下の3つから成っている. 1.シール強度を意図的に変化させたヒートシールサンプルを作成し,これに対して提案した手法を適用し,瞬時振動数からシール強度が実際に評価できるかを確認すること.2.瞬時振動数とシール強度との関係を理論的に説明すること.3.超音波の基本振動数により瞬時振動数の感度が変化するか,また,最も感度のよい基本振動数が存在するかについて調査すること. これらの中で,最初の1.は複数のサンプルにおいて,接着度の違いに対して確実に瞬時振動数が変化することを確認しており,目標は達成している.2.については,単純な瞬時振動数特性を持つ探触子については理論的に完全に瞬時振動数の変化を説明したが,複雑な瞬時振動数特性を持つ探触子に対しては課題が残している.3.に関しては,超音波の基本振動数よりも個々の探触子の瞬時振動数特性が影響することがわかった.これは2.で残した課題を解決することで明確になると判断している.一方,接着不良に大きく影響する中間不純物の検出にも本研究が有効であることがわかってきており,当初の見込みとは異なる切り口での進展も見られる.以上を総合して研究はおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは平成25年度の研究結果の成果発表を行う. 複雑な瞬時振動数特性を持つ探触子について,まずは波動が干渉・重畳する単純な二層間の反射を対象として,各超音波探触子の瞬時振動数特性による影響を解析的に考察する.さらに,複雑な瞬時振動数特性に対しても,接着強度と瞬時振動数の関係を解析的に明らかにすることを目的とする.この結果から,ねらった層に最も感度のよい瞬時振動数特性を見出すことができ,どのような探触子を選択すれば精度良く検査できるか調査する.これを拡張し,一般的な薄膜多層構造物において指定された場所をピンポイントで精度良く検査できる技術として本手法を確立させる.また,加熱部と接着層間の中間不純物が接着不良に大きく影響を与えることや,中間不純物とシール表面との間にも関係があることがわかってきており,このような中間不純物に対する高精度の検査技術として本研究の応用をはかる. 以上について,得られた結果を取りまとめ最終的な成果発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は学会発表を主たる活動と考えていたため,当初の配分額60万円は概ねその目的に消化した.一方,平成24年度からの繰越額34.4万円があり,これに25年度の若干の余剰額約6万円を加えた額が平成26年度への繰り越し額となった. 中間不純物とシール表面との関係調査に有効な振動数等の仕様を持つ超音波探触子があり,これがほぼ繰り越し額で購入できるため,これを購入して効果的な実験を実現する.また,次年度の予算を有効に利用して,国内・国際会議を問わず実績の成果発表を積極的に行う.
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Research Products
(3 results)