2012 Fiscal Year Research-status Report
非線形制御系の安全性確保に向けた新しい解析的検証手法の開発とその展開
Project/Area Number |
24560276
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
堀内 伸一郎 日本大学, 理工学部, 教授 (30181522)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 機械力学・制御 |
Research Abstract |
本研究の目的は,制御系の性能保証のための新しい解析的手法を開発し,実際的な非線形制御系への適用例からその有用性を評価することである.そのため,新たなアプローチとして,上限と下限をもつ区間の演算である区間解析を制御系の性能保証に適用し,制御系の安定性が保証できるシステムパラメタの変動範囲を区間解析の逆問題として求めることを検討している.求められたシステムパラメタの範囲であれば,どのようなパラメタ変動でも制御システムの性能が保証できることになる. 平成24年度は区間解析の逆問題を解くアルゴリズムの開発,及びその制御系検証への具体的適用方法を検討した. まず,システムの安定性を保証できるパラメタの許容変動範囲を区間解析の逆問題として解くアルゴリズムを検討した.一般に逆問題は順問題を繰り返し解くことによって解くことができることに注目し,一種のbisection methodによって許容できるパラメタの範囲を徐々に絞っていくアルゴリズムを考案し,線形システムにおける簡単な例題に適用した.線形システムの安定性はその固有値で決定されることから,固有値が安定な範囲内で変動することを保証できるパラメタの範囲を,考案したアルゴリズムで求めた.その結果,計算効率の面では問題があるものの,考案したアルゴリズムで区間解析の逆問題を解くことができ,パラメタが変動する線形システムの性能保証に適用できることがわかった. さらに,この手法を非線形システムに適用すべく,非線形システムの安定性保証に用いられるリアプノフ関数に着目し,アルゴリズムの改良を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,考案した区間解析の逆問題解法アルゴリズムは線形システムにおいては当初の予想通り,良好な結果を与えた.すなわち,線形制御系において,制御系全体の安定性を保証できるシステムパラメタの変動範囲を決定することができた.この手法は変動するシステムパラメタが複数ある場合でも,それぞれのパラメタの許容変動範囲を求めることが可能である点が特徴である.この成果により,本研究の基本的アプローチの妥当性が確認されたと思われる. ただし,bisection methodによる順問題の繰り返し解法は,パラメタ数が多くなると計算時間の面で問題があることがわかった.すなわち,逆問題を解き,解を得るまでに必要な計算時間が,パラメタの数に対して指数関数的に長くなるという問題である.この問題解決のためにはより効率的な逆問題解法アルゴリズムを検討する必要ある. また,この手法を非線形システムのリアプノフ関数に適用すると,別の問題があることが明らかになった.すなわち,リアプノフ関数は安定性の必要条件しか与えず,必要十分条件ではないことに起因し,求めたパラメタの許容変動範囲がかなり保守的になるという問題があることが判明した.非線形システムの性能保証に対して,可制御領域などの別の評価基準を用いることも検討している.このような問題の解決に向けて多くの時間を要している. 以上の研究結果の一端は,1件の国際学会誌査読付論文と4件の国際学会口頭発表として公表した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では,平成25年度は区間解析の逆問題解法アルゴリズムを車両モデルと車両運動制御系に適用し,実際的な制御系の性能保証に向けての開発手法の有用性を検討することが目標であった.「現在までの達成度」で述べたように,考案したアルゴリズムは,変動パラメタの数が多くなると指数関数的に計算時間が長くなるという問題をもつことがわかった.また,リアプノフ関数に対して区間解析の逆問題を適用し,制御系の安定性を保証できるシステムパラメタの変動範囲を求めると,得られた結果は本来の許容変動範囲よりかなり保守的になることも明らかとなった. そこで,平成25年度は当初の予定を繰り下げ,これらの問題の解決に向けて (1)逆問題解法アルゴリズムの改善,新たなアルゴリズムの検討 (2)非線形システムへの適用方法検討 をまず実施する.これらの検討の後に,実際的な車両運動制御系への適用を行い,改善アルゴリズムの効果,非線形システムへの有用性を確認する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として,逆問題解法アルゴリズムの検討のための高性能ワークステーション,学会発表用のノートパソコン,データ保存のためのハードディスク,データ整理のためのグラフ作成ソフト,ベクトルグラフィックソフト,車両運動制御系への適用を検討するための車両運動シミュレーションソフトCarMakerの購入費用を計上する. 旅費として,学会発表のための海外出張旅費および国内出張旅費,昨年度に引き続いてヨーロッパ各国での研究動向調査のための海外出張旅費を計上する. 人件費として,ネイティブによる論文添削料,その他として学会誌論文投稿料などを計上する.
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