2012 Fiscal Year Research-status Report
熱音響システムの高効率化のためのハニカムセラミックスの検討
Project/Area Number |
24560281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小塚 晃透 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (60357001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 久一 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (30277842)
坂本 眞一 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (40449509)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 音響 / 熱音響 / 振動 / ヒートポンプ / ハニカムセラミックス |
Research Abstract |
熱音響システムは、熱と音響のエネルギ変換システムである。多数の微細孔を有する熱音響変換素子に音波を放射すると、微細孔中の媒体が膨張(冷却)・収縮(加熱)することで、微細孔の中で熱の移動を行うことが可能である。平成24年度は、直線管中に形成した定在波音場中の音圧分布を測定するとともに、各種の熱音響変換素子を定在波音場中に配置して、素子の両端に発生する温度差を測定することを行った。 本研究で用いる基本的な実験装置は、内径42mmのステンレスの直線管で、一端にスピーカを設置して他端を反射板で塞いだ閉管である。まず、長さ1500mmの管中に、スピーカに226Hz、10Wの電気入力を与えて音波を放射し、管内の50mm間隔の位置について圧力センサを移動させて圧力を測定した。管の中央と両端が極大となる圧力分布となり、定在波音場が形成されていることが確認された。 次に、この音場中に熱音響変換素子を挿入して、その両端の温度差を熱電対で測定することを試みた。音場中の位置により、得られる温度差は変化するので、最大の温度差が得られる位置に熱音響変換素子を配置して両端の温度を測定することとした。用意した熱音響変換素子は、ハニカムセラミックス6種(壁厚、孔径が異なる)、ステンレス金網を積層させたもの8種(針金の径、目の間隔が異なる)、ガラス管を束ねたもの(外径1.3mm、内径0.8mmのガラス管を860本束ねる)、セラミックス管を束ねたもの(外径0.47mm、内径0.24mm、数千本を束ねる、準備中)である。 セラミックス管以外について実験を行ったところ、いずれの材料においても温度差の発生が確認されたが、材料により違いが現れた。最も高い温度差を得たものは、ハニカムセラミックスの微細孔のものであった。ハニカムセラミックスは開口率が大きく、均一な微細孔が確保されていることが優位に作用したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
音響管中の圧力分布については、計画通りに測定することができ、定在波が形成されていることが確認された。また、熱音響変換素子として、各種材料、形状、等について検討する計画であったが、実施することができたのは限られた材料についてである。 ハニカムセラミックスについては、任意形状のものを製作することが困難であり、既製品より選択した。より微細な孔径のもので高効率な熱音響変換が期待されるが、入手できていない。そこで、外径0.4mm、内径0.25mmの微細な孔径を持つセラミックスチューブ数千本を束ねて熱音響変換素子とすることを検討した。入手して実験を試みたが、設置することが困難であり、実験に至っていない。手作業で配置する必要があるが、約3000本をすべて平行に並べる必要があり、容易ではない。 しかしながら、ステンレスメッシュに関しては、様々な種類のもの(線径、目の間隔が異なる)が入手可能であることがわかり、順次入手しては鋭意実験を行っている。数十枚を積層することで熱音響変換素子となるために、複数種類のものを組み合わせて用いることも考えられ、自由度が大きい。これまでの実験においては、ハニカムセラミックスに近い温度差を得るものもあるが、現在のところまだハニカムセラミックスの方が上である。 また、音場中の数値シミュレーションに関する検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、引き続きステンレスメッシュを用いた熱音響変換素子について検討を行うと共に、熱から音への変換を含むループ管方式の熱音響変換システムについての研究を開始する。 熱音響変換システムでは、温度差を与えて音波を発生させることができる。そして、ループ管方式の熱音響変換システムを用いれば、熱エネルギを投入して低温を発生させる熱音響冷却システムが構築できる。このシステムは、ループ状の密閉管内に2つの熱音響変換素子を設置して、一つ目の変換素子に温度差を与えて自励発振により音波を発生させ、2つめの変換素子でその音波を用いて温度差を作り出し、低温側を冷却システムに利用するのである。 このシステムの実現のためには、温度差により管内の媒体を自励発振させる上で、音から熱への変換と同様に熱音響変換素子の最適化を図る必要がある。さらに、ループ管方式の熱音響変換システムは、直線管に比べて各種要素が複合化された状態であるため、考慮しなければならない項目が多数ある。熱音響変換素子に関すること以外に、配管の内径、湾曲配管の曲率半径、熱音響変換素子の設置位置などの各要素の影響を評価することが必要である。 これらの各要素の影響を、数値シミュレーションにより予測すると共に、実験で検証を行う。実験装置の製作には多大な時間と研究資源を必要とするため、事前に音場をシミュレートすることを検討し、効率的に研究を進めることを図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たに製作するループ管を構築するためには、各種長さの音響管を製作する。また、微調整のための少しずつ長さの異なる管、湾曲する管、枝分かれする管等、多数種の音響管を製作する。さらに、熱電対、圧力センサ、必要な電気部品等を用意する。
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