2013 Fiscal Year Research-status Report
熱音響システムの高効率化のためのハニカムセラミックスの検討
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24560281
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小塚 晃透 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (60357001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 久一 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (30277842)
坂本 眞一 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (40449509)
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Keywords | 音響 / 熱音響 / 振動 / エネルギ変換 / ハニカムセラミックス / 3Dプリンタ / ヒートポンプ |
Research Abstract |
熱音響システムは、熱と音響のエネルギ変換システムである。多数の微細孔を有する熱音響変換素子に音波を放射すると、微細孔中の媒体が膨張(冷却)・収縮(加熱)することで、微細孔の中で熱の移動を行うことが可能である。平成25年度は、熱音響変換素子を3Dプリンタで製作することを試み、素子の両端に発生する温度差を測定することを行った。 本研究で用いる基本的な実験装置は、内径42mmのステンレスの直線管で、一端にスピーカを設置して他端を反射板で塞いだ閉管である。この音場中に熱音響変換素子を挿入して、その両端の温度差を熱電対で測定する。これまでに、熱音響変換素子としてハニカムセラミックス、金属メッシュの積層体、微細ガラスチューブの束、等を用いて実験を試みてきた。ハニカムセラミックスは薄い壁のため開口率が大きいなどの特長があるが、数種類の既製品から選択する必要がある。金属メッシュは直線状に貫通する穴を得ることが難しく、ガラス管は開口率が低いという問題がある。また、いずれも選択肢は既製品から選択することになるため、自由に設計することはできない。 そこで、3Dプリンタを用いて、熱音響変換素子を製作することを試みた。3Dプリンタは、自由な形状の熱音響変換素子を製作することができる。導入した3Dプリンタは、溶融積層成型方式(FDM方式、溶解した樹脂を細いノズルから放出して積層する方式)であり、0.5mm程度の薄壁を構築することが可能である。ハニカムセラミックスに比べれば厚い壁であり、音波を遮ることになるが、スリットにすることで開口率を確保し、熱交換のための壁の表面積を広げられると考えられる。各種熱音響変換素子について、同条件の音場について実験を行ったところ、最大の温度差はハニカムセラミックスの25℃であるが、3Dプリンタによる素子でも20℃程度の温度差を得ることができ、予想以上の温度差を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初の計画では、熱音響変換素子としてハニカムセラミックスを用いて、各種材料、形状、等について検討する計画であった。しかし、ハニカムセラミックスについては、新たな孔径、壁厚の素子を製作するには、新たに金型を製作する必要があり、任意形状のものを製作して評価することは困難であることが分かった。より微細な孔径のものができれば、より高効率な熱音響変換ができると期待されるが、入手できていないため検証することは困難である。また、ハニカムセラミックス以外の素材として、金属メッシュおよび微細チューブに着目して熱音響変換素子として使用することを試みた。いずれも問題があり、また既製品から選択することになるため、微細流路の形状、寸法を設計することはできない。 そこで、3Dプリンタに着目した。薄い壁が作成できない、高温での使用ができない、などの問題もあるが、自由に形状を設計できることは微細流路の形状サイズを変化させて評価するためには適している。また、条件を最適化すれば0.5mmの薄壁が構築でき、ハニカム形状ではなくスリット形状とすることで、開口率と表面積を両立でき、ハニカムセラミックスに準ずる温度差を実現する手法を確立した。 また、熱音響変換素子の両端に温度差を与えて音波を発生させる、熱音響エンジンの研究にも着手した。これまでに、ハニカムセラミックスの片側の端面にニクロム線を巻き付けた熱音響変換素子を製作し、両端開放のガラス管中の1/4の位置に配置して、自励発振することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は、引き続き3Dプリンタで熱音響変換素子を製作し、評価を行う。また、この方法では三次元的に形状を変化できるので、流路方向に変化を与えることも検討している。両端で孔の径が異なるテーパー状の微細流路や、熱音響素子内で流路を曲げることでスパイラル状の微細流路などを製作することを検討している。 また、熱から音への変換を含むループ管方式の熱音響変換システムについても検討を行う。熱音響変換システムでは、温度差を与えて音波を発生させることができる。そして、ループ管方式の熱音響変換システムを用いれば、熱エネルギを投入して低温を発生させる熱音響冷却システムが構築できる。このシステムは、ループ状の密閉管内に2つの熱音響変換素子を設置して、一つ目の変換素子に温度差を与えて自励発振により音波を発生させ、2つめの変換素子でその音波を用いて温度差を作り出し、低温側を冷却システムに利用するのである。 このシステムの実現のためには、温度差により管内の媒体を自励発振させる上で、音から熱への変換と同様に熱音響変換素子の最適化を図る必要がある。現在取り組んでいる3Dプリンタによる熱音響変換素子は、樹脂であるので高温で使用するエンジンとしては使用できない。3Dプリンタで製作した熱音響変換素子を母材として、耐熱性を持つ材料に複製することが必要であり、材料、製作方法を検討する必要がある。 また、最終年度であるので、これらの手法に関して特許を出願し、その研究成果を国際会議、論文、等に発表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
音場中の圧力測定に必要な計測機器を購入することを検討したが、予算が不足した。そこで、次年度分の予算と合算して計測機器を購入するため、次年度使用額が生じた。 翌年度分として請求した予算と合算して、使用する予定である。
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Research Products
(9 results)