2013 Fiscal Year Research-status Report
流体静圧軸受を用いた超精密加工機の自律振動抑制システムの研究開発
Project/Area Number |
24560292
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
井上 吉弘 岐阜大学, 工学部, 准教授 (00176455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 実 岐阜大学, 工学部, 教授 (20183379)
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Keywords | 円管噴流 / 臨界レイノルズ数 |
Research Abstract |
実験は作動流体を水として行い,円形噴出孔直径は6 mmで,測定用円管の内径は38 mm,長さは270 mmであり,噴出孔基準のレイノルズ数は600~1300である。流れの可視化には蛍光染料法を,流れ状態の測定には熱線法をそれぞれ用い,流れの操作には環状パルス噴流を用いた。以下に本研究で得られた結果の要点を示す。 (1) 円管内噴流を可視化観察した結果から,(a) 噴出孔から形成される噴流コラム外周には不安定波動が出現し,その波長はレイノルズ数によって変化する,(b) 噴流コラムの挙動はレイノルズ数の影響を強く受け,コラムの崩壊が観察されない場合,崩壊位置が非定常に揺動する場合,(c) 崩壊位置が噴出孔近傍にほぼ固定される場合の存在を示した。さらに,噴流コラム外周におけるエントレイメント作用によって管内にはリターン流れが誘起され,その強さがレイノルズ数の増加とともに増大することを指摘した。 (2) 熱線センサを開発し,一様流中で速度を変化させた実験から静的特性を調べ,一様流中に設置した円柱背後において動的特性を調べ,確認した。 (3) 円管内噴流において熱線センサを用いた実験を行い,噴出孔直径の5.5倍下流に設置されたセンサ出力の解析から,リターン流れによる大規模な変動と噴流コラム外周面に現れる短周期変動を検出した。 (4) レイノルズ数1100の円管内噴流に,環状パルス噴流を1パルスだけ印加した可視化画像から,(a) 印加直後に噴流コラム外周面で渦の巻きあがりが生じる,(b) 巻きあがった渦輪は噴流コラムの局所的な乱流化を促進する,(c) 局所的に乱流化された流れはすぐに流下し,噴流コラムは元の状態に戻るという一連の事象を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,超精密加工機械の軸受装置として流体静圧軸受を利用することを前提として,その低振動化に取り組むものである。振動変位の発生要因には,次のものが考えられる。(1) 流れの乱流化:円管内流(臨界レイノルズ数約2300),(2) 不安定流れ:絞り部下流(円管噴流,噴流レイノルズ数,面積比),(3) 流体力学的振動:配管分岐部等,(4) 機械力学的振動:系全体(軸受剛性等)。従来の軸受設計では,おもに(1)に対して注意が払われ,使用流体の粘度や流量などを適切に選択して,低振動化が達成されてきた。一方,(2)~(4)の臨界現象についての研究は十分に行われておらず,設計指針も示されていない。本研究は,特に(2)の現象に注目するものであり,管内噴流の流動状態を検出できるセンサの開発と,センサ情報に基づくフィードバック制御により軸受低振動化の実現を目標としている。 本年度は,前年度に引き続いて,作動流体を水とした模型実験を実施し,絞り部下流の円管噴流で現れる臨界現象を詳細に調べるとともに,環状パルス噴流を用いた流れの操作を行い,円管噴流とパルス噴流の干渉場を可視化観察することができた。したがって,研究計画に従い,概ね予定通りに研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究スケジュールは次のとおりである。(1) 臨界レイノルズ数における環状パルス噴流の効果の検証,(2) 別形式のアクチュエータの開発,(3) 取得データに基づいたシミュレータのLabVIEWによる開発,(4) 油静圧軸受内において使用可能なセンサの開発。熱線センサ設置箇所およびアクチュエータ設置箇所を前年度までの結果に基づき検討し,フィードバック制御を実施する。そして,油静圧軸受試験機への適用実験に着手し,測定点数および制御点数の最小化を進めるとともに,試験機の軸受すき間,潤滑油粘度等を変更し,制御試験を実施して知見を積み重ね,一般の流体静圧軸受に適用できるよう,軸受能動的制御法の一般化を考察する。
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