2012 Fiscal Year Research-status Report
脊椎形状に着目した分類による人体振動特性と人体振動モデル構築にむけての検討
Project/Area Number |
24560300
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
玉置 元 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (60315752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 卓也 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (50220736)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人間機械システム / 人体振動特性 / モデル化 / 生物・生体工学 / 機械力学・制御 |
Research Abstract |
将来的に日本人の成人標準振動特性を把握する事を最終目的に,本研究では百人規模の日本人を被験者とした振動特性の測定を行い,人体振動特性の代表値として何が適当であるかを明らかにすることを第一の目的とし,またその結果を元に人体モデルの雛形を構築する事を第二の目的とする.初年度の今年度は,大人数での測定にむけての下準備として,幾つかの初期検討を数人から数十人程度の被験者で行った. 被験者の姿勢を表現する代表点について,MRI計測での脊椎形状と,写真撮影などの外部からの脊椎形状との比較などから検討したが,MRIから得られる脊椎形状と振動特性の間には良い関係性が見出せなかった.これは,MRI測定は臥位(仰向けの姿勢)であり,振動特性測定時の着座状態とは脊椎形状が異なるためであると考えられ,座位での姿勢の特徴点の抽出には向かないと判断し,ISOが最近発行した加振実験時の着座人体の人間工学に基づいた姿勢表記に関するテクニカルレポート(ISO/TR 10687)に基づく指標値を用いて姿勢を表現することとした.腰椎湾曲など3指標値と,本研究独自の骨盤傾斜など3指標値を導入することとし,これより他の研究との比較や,ISOへの意見発信が容易になると考えられる. 比較的容易に測定でき被験者に負担の少ない頭部の加速度伝達率と座面での駆動点動質量の測定を行い,グループ分けについて再検討を行った.背筋を伸ばした直立時とリラックス時の2姿勢での振動特性の変化量によってグループ分けすると言う方法は,申請時までに行った予備実験では確認されたが,今回必ずしも明確でないことがわかった.代わりに,頭部の伝達率,および動質量と上記6つの姿勢の指標値との相関の検討から,それぞれの1次共振周波数と腰椎湾曲及び骨盤傾斜との相関が高いことが示された.振動特性と姿勢,特に腰椎部付近の形状との関係が高そうであることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は25年度以降の大規模実験のための初期検討を行うことが目的であり,概ね予定通り進展していると考えている. 本研究申請前の研究結果で確認された被験者のグループ分け方法を用いて,被験者をグループ分けし各グループでの代表値をみることで,全被験者の代表値よりも適切な振動特性の代表値が得られると考えていたが,追実験を行い検討した結果,予定していたグループ分けでは必ずしも明確にグループ分けできない可能性が出てきた.そこで更に検討を行った結果,振動特性として1次共振周波数については骨盤傾斜や腰椎湾曲との相関が高いことが示唆され,グループ化を行うと言う考え方の他に,むしろ相関の高い部位の形状により振動特性が決まるという考え方の方が有用である可能性があることが分かった. 以上の検討に多くの時間を使ってしまったが,その他にも,簡単ではあったが入力レベル依存性の確認や腰椎部の測定なども行い,25年度の大規模実験時の問題点などの検討を行った.これにより測定条件を増やすと被験者が感じる負担は単なる足し算以上に増加する傾向にあることがわかったため,25年度の大規模実験では,できるだけ被験者の負担を軽減しシンプルに実験を行うことにし,当初の予定以上に実験条件を絞り込んだものとする必要があること,代わりにそれを補うために少人数での腰椎部の詳細な応答測定を行い,姿勢と振動特性の関係を脊椎系の振動モードの観点から検討することで有用な知見が得られそうであることが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果を基にして,被験者数を増やした百人規模の加振実験を行い,人体振動特性の代表値の検討と把握を行う. 1,被験者数百人規模の加振実験:加振実験を行い頭部の伝達率と動質量を測定する.その際に被験者の脊椎形状を一緒に測定する.なお,事前に以下の対応を行う.できるだけ被験者の負担を軽減するための実験方法や実験条件の検討,実験手順に慣れる等の準備を十分に行う.被験者の安全性,実験参加・中止の自由,個人情報の扱いなどの説明を含む実験計画により,学内研究倫理委員会に実験内容を諮り,実験承認を受ける.また,同内容の説明をし十分に納得してもらった上で被験者から参加同意書を得る. 2,少人数での詳細加振実験:脊椎,特に腰椎部の応答などを詳細に確認するための追加実験を行う.頭部の伝達率,動質量の他に,脊椎,特に腰椎部に着目して24年度に行ったものより詳細に腰部の伝達率を測定する.モード解析を行い,振動モードの観点から,姿勢変化と振動特性の関係を検討する.なお,1の実験と同様の事前対応を行う. 3,代表値の検討と把握:引き続き振動特性の代表値としてより適切である表現を検討する.グループ分けにより,それぞれのグループに代表値を考える方が良いのか,グループ分けせず代表値は1つとし,例えば振動特性と相関の高い腰椎湾曲や骨盤傾斜などによりある程度の幅を持たせる様にするのが良いのか,などが考えられる.また,従来と同様に周波数毎の平均値を用いることで代表データをより適切に表現できるのか,あるいは統計値としては中央値や,また統計値を周波数毎に求めるのではなく,固有値(固有振動数等)毎に適用する方法等があり,これらの統計値,その適用段階の違いにより得られる代表データの特徴を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
被験者の姿勢測定用として購入を予定していた3次元画像計測システムが販売終了になってしまい,代わりになるシステムを検討したが,同様のシステムは見つけられず,またモーションキャプチャーでの代用も検討したが予算的に難しかったため,研究分担者が別目的で保有している3次元画像計測システム(申請時に参考にしたシステム)を利用させてもらうことにした.浮いた分の助成金は,3次元画像計測システムに不足していたオプション品の補充,実験中に断線してしまった座面上の人体からの反力を測定するフォースプレートのケーブルの交換,25年度の大規模実験に備えて頭部加速度測定用の加速度センサ1式分(3個)の購入に充てた.その残りを25年度に持ち越しとした. 25年度は,本助成金を追加で行う少人数の被験者の被験者謝金,また海外学会での24年度の成果発表と,人体振動の先進国であるイギリスのサウサンプトン大学の人体振動研究ユニットを訪問し,ISOやEUの動向の調査および本研究のディスカッションを行い,また最新の研究の紹介や実験設備の見学をさせていただく旅費等に充てる予定である.
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Research Products
(3 results)