2013 Fiscal Year Research-status Report
高効率モータのための高速電磁界解析手法を応用した形状最適化技術の開発
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24560319
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 浩太 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20322828)
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Keywords | 形状最適化 / 電磁界解析 / 有限要素解析 |
Research Abstract |
本研究課題は,モータに代表される電磁機器の効率等を改善するための形状最適化およびそれに必要な電磁界解析技術に関するものである。特に,位相最適化に注目してそのアルゴリズムの改良を目指している。位相最適化は,最適化する形状に制限や仮定を持たせず,場合によっては完全にランダムに作成した初期形状から最適形状を求めるため,設計者の予想を上回る画期的な特性を持つ形状が得られる可能性がある。 これまでの研究で,ON/OFF法を元にした位相最適化アルゴリズムにいくつかの改良を加えてきた。ON/OFF法では,格子状のメッシュに材料のあり/なしの状態を表すビット情報を配置することで形状を表現する。そのために,表面形状が階段状になってしまう問題点がある。そこで,材料が半分存在する状態を追加し,2値ではなく,3値で材料配置を表現する手法を開発した。今年度はこの手法に改良を加えて,従来手法よりも効率的に最適形状を見出せるようにし,その成果を国際会議で発表した。 提案している最適計算アルゴリズムでは形状を変化させながら解析を繰りかえす必要がある。その計算過程において,形状に加えた変化とそれによる評価値の変化を記憶して,その学習情報を用いて最適計算を高速化する手法を開発した。 開発してきた最適化手法をモータの形状最適化に適用するために,永久磁石同期モータを対象とした有限要素法による磁場解析プログラムを作成した。そして,モータの回転子内部の磁性体形状を最適化することで,モータが発生するトルクを最大化する最適化を行った。その結果,フラックスバリアと呼ばれる磁束を回転子の外に導く空隙構造が生成され,トルクが上昇することを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モータの特性を評価するために必要な電磁界解析には時間がかかることが多く,最適化計算を困難にしている。そのため,電磁界解析の高速化が重要になる。本研究では,デフレーション法とよばれる高速化手法を導入した。この手法を用いるためには固有ベクトルの計算が必要であるが,それにかかる計算コストが高い問題があった。そこで,簡易的な手法で疑似的な固有ベクトルを生成する手法を採用し,この手法が二次元格子メッシュを用いた磁場解析でも有効であることを確認し,磁気シールドの形状最適計算を高速化できることを確認した。 開発してきた最適計算プログラムでモータの解析を行うために,近年普及が目覚ましい永久磁石同期モータを対象とした有限要素磁場解析プログラムの作成を行った。有限要素法ではメッシュ分割が必須であるが,モータのような複雑形状のメッシュ分割を自作プログラムで作成するにはかなりの労力を必要とするため,本研究では,市販ソフトを用いることとした。そして,生成されたメッシュ情報を元に,回転子の形状最適化を行うプログラムを作成した。ただし,回転子の移動に伴うメッシュの変形,境界条件の設定,磁性材材料の非線形磁気特性の取り扱いなどは一部未完成である。また市販ソフトで生成したメッシュは三角形メッシュであるのに対し,最適化プログラムは四角形メッシュを前提に作成してある。現状では両者をマッピングすることで結合することができたが,メッシュ同士の不適合により,最適計算で得られた形状に凹凸が多くみられる問題や,最適化計算の収束性が悪い問題が見つかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から引き続き,モータの電磁界解析の高速化を目指す。特に,高速化手法の一つであるデフレーション法をモータの有限要素解析に適用して最適化計算の高速化を目指す。これまでは線形計算で高速化できることを確認してきたが,非線形計算においても高速化できるかどうかの検討を行う。さらに,類似の高速化手法であるマルチグリッド法にも着目し,両者を結合した手法が非線形計算において有効かどうかの検証を行う。また,25年度に学習機能を持たせることで最適化計算を高速化する手法を開発した。現状ではわずかな効果しか確認できていないが,今後も引き続き改良を加えて大幅な高速化を目指す。 モータの形状最適化において,現状では市販ソフトを用いてメッシュを生成しているが,最適化プログラムとの結合において,メッシュの不適合からくるいくつかの問題が生じており,それの改善を行う。最適化プログラムは格子メッシュであることが前提条件となるため,形状を最適化する領域だけは格子状のメッシュになるようにメッシュ修正プログラムの作成を行う予定である。これにより現状の最適化プログラムの解析精度の向上を図る。 最適化の対象としている永久磁石同期モータはその電源としてインバータが用いられる。そのインバータ回路の高効率化も重要な課題である。そこで,インバータ回路とモータを合わせた総合効率の向上を目的とした最適化にも取り組む。ただし,電源を含めたモータの解析にはかなりの計算コストが必要となるため,無限要素などのデフレーション法以外の高速化手法を組み合わせる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は予定していた国際会議を1件,国内開催の国際会議に変更したため,旅費の支出が予算よりも少なくなり,26年度への繰越額が発生した。 26年度は国内外で成果発表および論文の提出を予定しているために使用額が生じている。 研究遂行に必要な情報収集および成果発表のため,国際会議および国内の研究会等に参加する予定であり,そのための旅費に用いる。また,モータ等の電磁機器の電磁界解析では,メッシュ作成や解析後のデータの可視化のために専用のソフトウェアが必要となり,その使用料の支払いに用いる予定である。
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Research Products
(3 results)