2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560320
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 孝紀 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50235339)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 放電診断 / 発光分光分析 |
Research Abstract |
本研究は、トルエン,キシレンなどのように大気中への排出量が多い環境汚染化学物質を,大気圧放電を用いて効果的に分解・無害化処理メカニズムを解明し適切な制御を可能とするため,汚染物質分解に用いられる放電特性と放電分解効率の向上などの関係を見出すことを目的としている。本年度は発光分光法(OES:Optical Emission Spectroscopy)により,大気圧放電中のガス温度,電子温度,電子密度などのプラズマパラメータを計測する手法の確立を目指した。 放電プラズマの発光からガス温度、プラズマ中の電子密度等を導出するためには発光スペクトルの高分解能測定が不可欠であり、そのため、本年度に日本分光工業製の25cmシングルモノクロメータ(分解能0.05nm)を導入し、光学測定系を構築した。また、発光強度が比較的高く、かつ安定したプラズマが発生可能な、低気圧グロー放電プラズマを用い、測定系の動作確認を行った。窒素の特徴的な発光がみられる第二正帯および第一負帯の発光スペクトルのいずれにおいても、従来の結果と一致するスペクトルが得られた。特に、第一負帯の390.60 nm付近に回転励起の発光スペクトルによるブロードなピークについても計測されており、ガス温度の導出も可能であることがわかった。本年度は分光器の波長の刻み幅を0.05 nm,入出射スリット幅を0.05 mmとしたので,分解能は0.16 nmであったが、スリットの調整で高分分解能測定も可能であることを確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発光分光測定システムの構築とその動作確認に時間を要したため、ガス温度の導出および電子密度の導出までに到達できていない。特に、分光器の出力を光電変換・増幅部および分光器の波長変更部分の自動化に時間を要したため、計画よりもやや遅れた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に実施予定であった気体放電の発行分光診断を25年度の始めに実施する。複数の針電極で構成される電極(電極間隔15 - 30 mm程度)を平板電極と対向させて多数針-平板電極を構成し,放電チェンバ内に設置する(現有物品)。放電チェンバには集光レンズ等を取付け,放電の発光を分光器(平成24年度購入備品)に導いて詳細な波長分解測定を行うシステムを開発する。窒素-酸素混合ガスに微量の希ガスを添加したガスを放電チェンバに導入して発生させ,TRG-OESおよび線強度比較法から電子温度 Te を導出する。また,発光スペクトルのStark広がりから電子密度 neを,窒素分子のsecond positive bandのスペクトル形状からガス温度 Tgを導出する。 発光分光診断測定の実施に並行させて、in-situ IRASによるラジカル測定に必要な消耗品の選定、装置改良部の設計図の作成を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
in-situ IRASによるラジカル計測システムの構築とラジカル測定法の確立 FT-IR(現有物品)の赤外光(直径約9 mm)をミラーを用いてFT-IR本体から一旦外部に導き,放電プラズマ中を往復させた後に検出部へ戻すように装置を改良する。この装置を用いて大気圧放電中のラジカルと短寿命の分解生成物を in-situ IRAS により測定する技術を確立させる。 この方法により,環境汚染物質分解に寄与するとされているラジカルの検出を試みる。H2O由来のラジカルの分解反応への寄与が論文等で指摘されているので,放電チェンバへ供給するガスの湿度・組成などを変化させ,OH,HO2などの検出を目指す。 IRAS測定では,赤外活性な分子の吸光度を比較的容易に測定できるが,濃度の絶対値の決定に困難さがある。本研究では,放電チェンバに供給するガスの種類,組成,湿度を変化させたときのラジカル濃度の相対値の変化を把握し,環境汚染物質の分解率,効率,分解生成物の種類と生成量との関係を明らかにし,環境汚染物質分解に適する放電条件を提案する。 本年度の繰越金については、本年度実施できなかったガス温度および電子温度測定において必要となる消耗品の購入に充てる。
|