2013 Fiscal Year Research-status Report
分散電源・能動的負荷を含む負荷系統の動特性オンライン把握
Project/Area Number |
24560331
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白井 康之 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (60179033)
|
Keywords | 配電系統 / 負荷モデル / 動特性 / システム同定 / 安定度 |
Research Abstract |
これまで安定度解析における配電系統は主に静的な特性しか持たない機器で構成されていると仮定されてきた。しかし、近年の電力自由化の流れや分散型電源の普及、またそれに伴うパワエレ機器の導入などにより、配電系統に動的な特性を持つ機器が増加している。このような状況下では従来の安定度解析手法では精度の良い安定度評価に不十分である可能性があり、負荷の動的な特性まで評価可能な手法が求められている。 これまで負荷の動特性を把握する手法として雷害等の系統事故時に計測されたデータから特性を把握する手法や物理的な構造に基づいたモデル、又はその複合型などが提案されている。しかし、これらの手法では局所的な特性の把握にとどまってしまう可能性があり、また実際には常に変化をし続ける負荷のモデルとしては不十分な可能性がある。そこで本研究室ではこれまで、実際の系統に微小な電力擾乱を注入し、その応答から配電系統の動特性を把握する手法(微小擾乱注入手法)の開発、提案を行ってきた 分散型エネルギーの普及などに伴い複雑化してきている負荷の動的な特性まで模擬可能な新たな負荷モデル化手法として本研究で提案している微小擾乱注入手法の有用性を検証するため、模擬負荷系統による有用性検証実験を目的とし、昨年度、実験室スケールの模擬電力系統(2kVA,220V:同期発電機とリアクトルを用いた配電線モデル)を構築した。 この模擬系統に任意の微小な有効無効電力変動、高調波電流を注入できる装置を製作し、微小電力擾乱を注入してその系統応答を解析して負荷特性を求める実験を実施した。系統シミュレーションツールで実験系統を構成し、詳細モデルと求めた負荷特性モデルを用いた簡易モデルで過渡安定度シミュレーションを行い、比較することにより提案手法の実用性について確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に、模擬負荷系統における動特性測定の基礎実験に関しては、発電機モデルと模擬送電線用リアクトルを用いて模擬配電系統を構築し、有効電力/無効電力の微小モジュレーションを注入装置も製作した。モジュレーションのパターン(例えば正弦波状(周波数可変)、チャープ状、三角波状など)の選択、有効無効電力の同時注入、各相独立注入などについて測定手法の基本検討実験が実施できた。その結果、各部の電圧・電流・電力に現れる応答を測定し,これからシステム同定を行い、それぞれの状態変数間の伝達関数を導出することができた。この成果については、論文発表を行った。 本年度は、主に、電力系統シミュレーションツールを用いた種々の分散電源を含む負荷系統のオンライン動特性測定実験について、回転機系分散電源、定インピーダンス・定電流・定電力負荷の割合を変えた混合負荷や、より実系統に近い種々の特性を持つ負荷系統を構成し、その動特性を提案手法によるオンライン計測からシステム同定を用いて求めるシミュレーション実験を実施した。 また、模擬電力系統を増強し、模擬負荷、太陽光発電用パワコンなどを導入し、回転機とインバータ系電源・負荷を含む混合負荷の実験のための設備整備を行った。予定していた研究計画を前倒しして、順調に進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の目的は、分散電源などの導入が進んできた負荷系統の動特性のオンラインデータからの系統的な測定手法の提案・開発を行い、その有用性評価と負荷状態の把握・監視、保護、制御の可能性について、具体的なハードウェア構成を明らかにしつつ、モデル実験および計算機シミュレーションによって検証を行うことにある。 モデル実験系統とシミュレーションコードの整備がほぼ整ったので、今後、提案手法の有用性を検証するため、太陽光発電や燃料電池を想定したインバータ電源を含む負荷モデル系統を実験室レベルで構築し、種々のパターンの電力外乱や高調波電流を注入したときの応答から、動特性を推定する基礎実験を行う。さらに、より実負荷系統に近い複雑な系統構成での、提案手法の検討を行うため電力系統シミュレーションツールを用いて、種々の構成の負荷電力系統を構築し微小外乱による動特性のオンライン測定とこれによる運転状態監視の検証を行う。 負荷系統の動特性の把握が可能になれば、より詳細な安定度計算が可能となる。また、変電所側から見た負荷側の分散電源の連系状況、運用状況が推定できると考えている。分散電源の導入形態やその制御法の確認、新しい監視・制御システム技術の開発につなげることを計画している。
|