2012 Fiscal Year Research-status Report
高調波発生源を同定する開閉器内蔵樹脂一体型電力状態観測センサに関する実験的研究
Project/Area Number |
24560337
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
古川 達也 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90173525)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 電力工学 / 電気機器工学 / 計測工学 / 電力機器 / スマートセンサ情報システ ム / 数理工学 |
Research Abstract |
研究代表者が従前から提案してきた樹脂一体型電力状態計測センサの筐体構造が活線工事を実現する目的で、比較的大型化していたため、本センサ方式を一般配電系に設置されている三相柱上開閉器に内蔵させることが本研究課題の主目的であるので、初年度となる平成24年度では、一般配電系で普及している種々の柱上電力開閉器の筐体構造ならびに配電線線間距離の調査を行った結果、樹脂センサ部のコンパクト化を一層進めなければならないことが判明した。 そこで、コンパクト化した樹脂筐体(目標値1.5kg以下)で、6.6kV配電系へ設置した場合、鉄鋳物構造を取る電力開閉器内で絶縁耐力を満たしているか否かを科学研究費「一般配電系における有害高調波及び電力負荷状態観測に関する実験的研究」(平成21年度~23年度基盤研究(C),研究代表者:古川達也,課題番号21560303,研究経費総額3,600 千円)の支援で開発した「計測分圧回路を考慮した数値電界解析法」によって、実配電系における計測状態での各部の電位状態を考慮した絶縁電圧耐量シミュレーションを実施し、最適な樹脂筐体の寸法設計を行った。その結果,開閉器に内蔵した場合は、三相電線間の距離が従前より1/10とかなり狭くなるが、使用予定のポリアセタール樹脂の絶縁電圧耐量を十分満たしていることが、明らかになった。さらに、この設計にしたがって、ポリアセタール樹脂を業者に委託、製造してもらい、次年度、研究室内での実配電系規模での負荷電流時の電流センサ部出力実験へと繋げることができた。 また、本提案センサを用いた電力計測系実現のため、瞬時電力、有効電力の計測回路を検討し、アナログ乗算LSI素子を使うことによって、計測された電圧・電流波形から、リアルタイムで電力計測ができることを実験で確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学研究費と民間等との共同研究の支援を受けて、研究代表者が従前から開発してきた樹脂一体型電力状態計測センサには、活線工事を実現するための取り付治具が存在するので、大型化し、かつ比較的重量もあった。本研究課題では、従前の方式から治具部を取り除いて、一対の電極板からなる電圧センサと一対の逆直列接続二連コイルからなる電流センサを樹脂ブロック内に埋没させ、コンパクト・軽量化を検討した。この実現に対する技術的問題である鋳鉄で構成される柱上開閉器内で8.4kV程度の絶縁耐量をクリアできることを数値電界解析で明らかにすることができたが、学会論文誌等に発表するには至らなかった。しかし、計測系に関しては、アナログ乗算LSI素子を用いて、瞬時電力を計測できることを実証でき、これに関しては、電気学会計測研究会で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、数値電界解析に関して、学会誌論文発表ができなかったので、平成25年度の課題とした。平成25年度以降は、柱上開閉器を模した鋳鉄構造に筐体内に本提案センサを設置した場合の数値電磁界解析の実施、さらに、同鋳鉄筐体を外注し、研究室内に以前の科学研究費の支援を得て構築した模擬配電系に上記センサを設置して、実配電系に相当する負荷電流を通電して、電流センサの出力特性を把握する。 また、従前から開発してきた、計測実行、計測結果を遠隔地からネットワークを介して取得する際に用いた高価な産業用コンピュータシステムに代わって、廉価で使用環境に比較的依存しないシングルボードコンピュータで多チャンネルの電圧計測を実現し、インターネットを介した計測データ配信システムを実現する。 さらに、柱上開閉器内で電線に電極を噛ませることなく計測回路等へ電源供給を行うため、「配電系用電圧・電流波形遠隔計測システムの検討」(電気学会論文誌A, 第131-A巻4号)で提案した電磁集電装置の基本になる磁気コアを導入するため、最適コア形状を設計・試作し、計測用シングルボードコンピュータに給電する方式を実現し、本研究課題をより実用性の高いものへと発展させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に行われた数値電界シミュレーションに基づいて設計・試作した樹脂筐体に電圧・電流センサを埋め込んで、電力計測センサ部とし、さらに、柱上開閉器を模した鋳物構造物を企業に外注し、平成13年度科学研究費の支援を受けて申請者の研究室内に構築した模擬配電系に本提案樹脂一体型センサを実装し、同科学研究費で整備した三相200V スライダックと現有の大電流電源用変圧器(仕様:三相、容量20kVA、一次/二次電圧比:200/5、一次二次結線: Y-Δ 接続、B種絶縁、左尾電機工業所製)で降圧した低電圧を用いて、三相模擬配電線を三相短絡状態にし、300A 程度の実配電線に近い電流で実験を行い、電流センサ部の特性について調べる。 この際、周波数成分解析には、科学研究費「一般配電系における有害高調波及び電力負荷状態観測に関する実験的研究」(平成21年度~23年度基盤研究(C),研究代表者:古川達也,課題番号21560303,研究経費総額3,600千円)の支援で開発した産業用コンピュータシステムを用いた遠隔計測システムでの処理結果と精密電力計測器との較正を行うため、電流・電圧、有効・無効・皮相電力、力率、位相角、高調波等の精密計測を行うことができる「日置電機製パワーアナライザ3390(800千円)」を計上する。なお、申請者の研究室には、6.6kVを発生できる三相の高電圧発生装置がないので、三相配電系絶縁耐力試験に関しては、他の会社に委託する。 さらに、平成25年度では、三相柱上開閉器の鉄鋳物構造を考慮した三次元電磁界解析を行うため、平成23年度国立大学校費で導入したCOMSOL MultiPhysicsなる総合三次元ソフトウェアを援用し、鉄鋳物構造での三次元的渦電流損をも把握した解析に着手する。
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