2012 Fiscal Year Research-status Report
窒素準安定励起分子の各種大気汚染物質による衝突脱励起反応速度係数の測定
Project/Area Number |
24560344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 進 千葉工業大学, 工学部, 教授 (00265472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 晴雄 千葉工業大学, 工学部, 教授 (90083849)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 窒素準安定励起分子 / 大気汚染物質 / 反応速度係数 |
Research Abstract |
大気汚染物質を放電プラズマにより分解除去する研究が行われている。このとき大気中で放電プラズマを発生させ分解除去するが,大気の主成分である窒素の活性種の影響を受けることが推測できる。そこで,窒素中の活性種,中でも6.2eVという高いエネルギーを長い時間保持できるN2の準安定励起分子N2(A3Σu+)の大気汚染物質による反応速度係数を知ることができれば,有害物質の分解過程を推測できることになる。即ち,大気中の汚染物質によるN2(A3Σu+)の衝突脱励起反応速度係数(失活レート)を多くの物質について調べておくことが重要である。 ここ数年,シックハウス症候群を引き起こす主な物質であるベンゼン,アセトン,トルエン, ホルムアルデヒドに注目して調べたが,現在はキシレンについて検討している。先ず,m-キシレンによるN2(A3Σu+)の失活レートについて検討したところ,その値は(4.4±0.6)×10-9 cm3/sであった。そして,o-キシレンにおいて測定したところ,N2(A3Σu+)の失活レートは(2.3±0.3)×10-9 cm3/sであった。さらに,p-キシレンの測定を行い,失活レートを決定したところ,(6.5±0.9)×10-9 cm3/sとキシレンの異性体の中で最も大きな値であった。 また,酢酸エチルにおけるN2(A3Σu+)の失活レートは10-9 cm3/sとキシレンと同じオーダーであることを明らかにしつつある。 このように失活レートを決定することができたが,キシレン混合ガスにおいては測定を繰り返すと過渡電流の測定が不可能になる現象が観測された。そこで,その原因を調べる目的で,電極表面のオージェ電子分光法による電極表面分析とフーリエ変換赤外分光光度計による電極表面分析を行い,CH2とCHが検出され,これらが測定を不可能にしている原因であると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シックハウス症候群の主な発生物質であるまだ検討されていない,ガス状物質におけるN2(A3Σu+)の衝突脱励起反応速度係数を決定する予定であるが,現在検討しているキシレンが放電により分解し,電極に付着することにより,測定を困難な状態にすることがわかった。このキシレンの分解生成物として付着している物質を特定するためにオージェ電子分光法(AES)とフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)によって特定を試みた。この検討に時間を要し,当初予定に比べ多少の遅れが出ているが,概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,シックハウス症候群の原因物質として注目されている揮発性有機化合物である酢酸エチル,p-ジクロロベンゼン等を対象ガスにしてN2(A3Σu+)の実効励起寿命を測定する。この際に,これらのガスに特徴的な放電特性がないかを電流-電圧特性から検討する。また,表面解析等によりN2(A3Σu+)による酢酸エチルやp-ジクロロベンゼンの分解過程を検討する。 測定がうまく遂行できないときは,N2に混合する別の環境汚染ガスに変えて,測定を行う予定である。この環境汚染ガスの選定には,測定する申請者らにも配慮し,また毒性,環境への影響等を考慮して選定することを心がかける。 得られた成果を国際会議(International Conference on Phenomena in Ionized Gases(ICPIG,スペイン), GEC)や国内の学会で発表しながら論文として報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として,電子部品,試料ガス,フランジ類やガスケット等を購入する予定である。 また,旅費として国内旅費を使い国内の学会に参加し,外国旅費を使い国際会議(International Conference on Phenomena in Ionized Gases(ICPIG,スペイン)に参加予定である。
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