2013 Fiscal Year Research-status Report
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24560347
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
加藤 正平 東洋大学, 理工学部, 教授 (80103571)
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Keywords | サージ / コイル / 変圧器 / 数値電磁界解析 / 光電界センサ |
Research Abstract |
平成24年度で準備した計測システムと解析システムの拡充、増強を行い、実モデルの電圧、電流分布の測定を行うとともに、コンピュータ解析モデルの電圧、電流分布の結果も得ることができた。 実験的な研究 これまでの測定システムでは、電流測定に電流トランスフォーマ(CT)を使用し、電圧測定に高インピーダンス電圧プローブを使用する方式を採用していた。しかし、平成24年度の予備実験では電流波形は解析と良い一致を示すにもかかわらず、電圧測定では周期が大きな振動と、初期に逆極性となる電圧が現れた。この原因として電圧ケーブルに使用する金属シースによって電圧測定点とオシロスコープ間の往復サージが現れることが考えられる。そこで、絶縁して信号を得る光ケーブルとポッケルス素子使用の電界センサから成る電圧測定システムを検討した。これによって、大きな振動は見られなくなり、解析と同様な単極性の巻き線間電圧を測定できた。しかし、電圧分布は解析とは異なった。 解析的な研究 大量の計算量を必要とするモーメント法、およびFDTD法の対策としてGPUおよびマルチコアによって、平成24年度購入の計算システムの増強を行った。これによってこれまでの処理能力を140%にすることができ、巻線内の電圧や電流、電磁界分布のパラメータ解析も可能にできた。このシステムによって、モーメント法では実験モデルと同一の解析モデルを使用することができ、電流分布と巻き線間電圧を求めることができた。電流分布は伝搬時間がほぼ光速になることをのぞけば、実験結果とよく説明できる値、時間変化が得られた。すなわち、電流の初期に減衰する階段状のサージ電流が巻線内を伝搬する。また、巻線の内部ほど、このサージ電流の到達前に逆極性の電流が大きくなることが明らかになった。しかし、電圧分布は実験とは異なる結果となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験的研究では、ケーブル接続による被測定電圧への影響が少ないポッケルス素子を使用する電圧測定が可能であることが明らかになり、より精度の高い測定を行えるようになった。すなわち、電圧プローブによる測定に現れた周期が大きな振動の除去、および逆極性の電圧が現れることがないことを確認することができ、解析波形に近い波形になった。この結果を得るためにポッケルス素子電界センサのサージ応答特定を調べた。ステップ応答から本研究で必要な1ナノ秒以下の立ち上がり時間を有し、入力電圧と出力電圧間に最大3Vまでの線形性が成立することを明らかにすることができた。したがって、巻線に限らず、サージ電圧、電流のように高周波成分を含む信号を光ケーブルで絶縁して被測定場所から離れてオシロスコープを使用した波形観測が可能である。 電流について、電流トランスフォーマによる測定結果があり、高速のオシロスコープの使用によって精度の高い測定が実現されている。 解析的な研究では、平成24年度の計算システムに、GPUを追加した計算能力の増強を行い、コイルモデルの電磁界解析を行うことが可能になった。これまでのモデルから、さらに細分化した導線モデルについて、モーメント法によって高精度なシミュレーション結果が得られた。 また導体の絶縁被覆をモデル化するFDTD法では、実験モデルと同じ幾何学サイズの解析はメモリ容量と計算時間の制限から実モデルの1/2の計算モデルで電流、電界を求めることにした。これによって、導体長が1/2になり、伝搬時間を2倍にすることで実験結果と比較検討した。その結果、電界センサで測定される電圧波形はFDTD法と同様の変化をするが、波高値の分布は実験値より小さくなった。誘電体を含む電界解析の有効性は、太陽光発電パネルについて検証し、学会発表を行っているが、さらに小さなセルによるモデルの精度を調べる必要性が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
電圧測定では、電流に比較して測定とシミュレーションの差が大きくなっている。平成25年度では、この原因として測定系の問題と考え、ポッケルス素子を使用した電界センサによる電圧測定を行ったが、シミュレーション結果との差を解消することはできなかった。 したがって、まず、シミュレーションの問題点を考える必要がある。モーメント法ではコイル導線の誘電体を考慮することが困難であり、伝搬時間が光速で決まり、測定の時間的関係との差が生じる。しかし、電圧の値は測定に近いものと考えられるので、モーメント法による電圧解析を行う。一方、伝搬時間について測定との差が少ないFDTD法では、セルの大きさを調整して数値的安定性を高めて解析精度の向上を図る必要がある。 電界センサの使用で測定系のケーブル反射現象は抑制できたが、ステップ電源の持つ固有の減衰振動は避けることができない。したがって、測定した電流波形と電圧波形に高周波振動が重畳しており、測定系の周波数特性や、ステップ電圧源の信号に含まれる高周波成分が原因と考えられる。これを除去した理想ステップ電源による巻き線の電流、電圧分布を求めるには数値信号処理が必要となる。そこで、周波数領域と時間領域における畳み込み積分(コンボリューション)を使用した測定結果の処理を行い、理想的ステップ電源を使用するシミュレーション結果との差がどのようになるか調べる。 最後の、本研究の目的である、巻線構造におけるサージ伝搬現象の電磁界現象としての解析から、巻線を回路構成部として扱う回路解析のための等価回路表現を、測定結果とシミュレーション結果から求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験と解析結果の比較検討したところ、解析精度を向上するために、計算資源の増強(メモリ、計算速度の高速化)の必要性が生じた。メモリ、並列計算用GPUの購入には本年度予算では購入資金が不足するため、次年度予算と合わせて購入することにしたため。 計算資源の増強(メモリ、計算速度の高速化)の必要性のため、メモリ、並列計算用GPUの購入に使用する。
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