2012 Fiscal Year Research-status Report
環境適合絶縁油中の沿面放電特性とストリーマ進展機構に関する研究
Project/Area Number |
24560351
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
花岡 良一 金沢工業大学, 工学部, 教授 (90148148)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 環境適合絶縁油 / PFAE油 / 菜種油 / 油中沿面放電 / 油中ガス成分分析 / ストリーマ進展 |
Research Abstract |
PFAE油中に浸した固体誘電体板間の隙間を進展するインパルス沿面放電とフラッシオーバ電圧(FOV)の関連性を調べた。2種類の電極構成:「絶縁油/プレスボードの単一界面を持つModelI」と「固体誘電体板間に狭い隙間を設けたModelII(間隔ΔD=0.1mm~2.0 mmの範囲)」を使用した。プレスボードの片面には針電極と対向電極(接地電極)を取り付け,裏面に背後電極(BSE:接地銅棒)が有るものと無いものを準備した。針電極に波高値Vp=0~±140 kV(±1.2/50μsと±1.2/1000μs)の雷インパルス電圧を印加し,沿面放電現象を鉱油と比較して調べた。特に注目すべきは、ModelIIの沿面放電特性において,ΔD=0.1mmの場合,①両絶縁油中で,BSE無しのストリーマ長は極めて短く,FOVは非常に高い。②両極性ストリーマ長はBSEの存在により大きく拡張され,FOVはBSEが無い場合より極めて低い。この場合,負ストリーマの進展長は正ストリーマより長く,ModelIの場合とは逆の関係となる。これは,狭い隙間を進展するストリーマの特徴と言える。③狭い隙間を進展するストリーマの成長は,ModelIに比べて大きく抑制され,放電電流パルスは,印加電圧の波尾長でも長く持続する。そのため,ストリーマの進展速度は減速する。これは正ストリーマで顕著である。 また、生分解性の高い菜種油中の交流沿面放電による油中ガス分析を行い,鉱油と比較した異常診断の評価から次の知見を得た。両絶縁油中で生じる溶解ガス成分の種類は大体同じであるが,菜種油中でCOの溶解量が鉱油に比べて多い。異常診断の結果,両絶縁油中の交流沿面放電は,電気協同研究が定める診断基準では「中~高エネルギー放電」,IECが定める診断基準では「低エネルギー放電」と診断され、菜種油は鉱油とほぼ同等の診断基準で内部異常が評価できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究では,前記の研究成果に加えて,架空絶縁電線表面に水滴が付着した湿潤状態における波頭長Tf≦8.0μsを有する雷インパルス電圧印加時の沿面放電進展長特性と進展様相を詳細に観測し,沿面放電進展に及ぼす水の効果を明らかにしている。湿潤状態における負極性沿面放電は,水滴表面に密着した進展と同時に,水滴中に電荷を注入しながら進展する。そのため,乾燥状態のときに現れる放電先端のジャンプ現象は殆ど見られない。これらの結果は,気中・油中沿面ストリーマの進展機構を考察する上で重要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
植物油ベースの代替絶縁油中における沿面放電現象の研究では,主として交流高電圧印加時の沿面放電における「ストリーマ進展様相,進展速度分布,放電電流(または放電電荷),放電光,放電開始電圧,フラッシオーバ電圧の計測」,「背後電極と対抗電極の有無の効果」,「放電後に生じるトラッキングの発生と放電進展に及ぼす効果」,「絶縁油中の水分と放電進展との関連性」,「劣化絶縁油中の放電特性」,「放電による誘電損失tanδの変化」などを順次明らかにして行く予定である。また,絶縁油中のバリア放電,コロナ放電,交流火花放電,正・負直流火花放電,インパルス放電など各種放電に伴って発生するガス分析を行い,放電形態と放電条件による絶縁油中のガス成分マップを作成し,絶縁油の劣化と絶縁性能の関連性を評価すると共に,機器の異常診断技術の発展ならびに環境適応型変圧器の長期信頼性確保に貢献する。さらに,これらの研究結果を詳細に検討し,沿面放電現象の統一的な性質,沿面放電の発生と進展メカニズム,ストリーマ進展からフラッシオーバに至る過程とフラッシオーバの発生要因を考察し明確にする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究では,昨年度(平成24年度)使用の対応供試絶縁油各種(低粘度シリコーン油,菜種エステル油,菜種原油,パームヤシ脂肪酸エステル油(PFAE油),大豆油,ひまわり油,他)、および対応固体材料各種(電極用金属:ステンレス板,タングステン線,他、固体誘電体材料:プレスボード,ポリエチレン板,PMMA板,エポキシガラス積層板,他)の購入,ガス,絶縁油成分分析試料作成用の実験容器(特注),気体窒素(99.999%純度)の購入など,主として研究に必要とする材料・装置の消耗品費として使用する。また,一部の費用は,油中ガス分析依頼費用として使用する。
|