2012 Fiscal Year Research-status Report
パルスパワーによるハイブリッドナノカーボンの創製と固体高分子型燃料電池への応用
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24560355
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
今坂 公宣 九州産業大学, 工学部, 准教授 (40264072)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パルスパワー |
Research Abstract |
本研究ではパルスパワーによるカーボンナノチューブ(CNT)の水溶化技術を基盤技術として水溶性ナノカーボンを生成し、固体高分子型燃料電池の電極材料に利用するとともに、CNT水溶化技術をさらに深化させ、水溶性ナノカーボンと白金触媒の混合溶液中でのパルスパワー放電を用いて白金で表面修飾された白金担持水溶性ナノカーボン(ハイブリッドナノカーボン)の創製技術を開発することを目的とする。平成24年度は、固体高分子型燃料電池(PEFC)の動作特性における電極材料の効果について主に検討した。得られた主な成果を以下に示す。 (1) 燃料である水素に水分を含ませることによって燃料供給停止後の電圧、電流を長時間保持できることを明らかにした。 (2) 膜電極接合体(MEA)の作製方法がPEFC出力の及ぼす影響を検討し、電解質膜の両面に触媒を塗布する方法を用いることにより電極に触媒を塗布する方法よりも出力特性を向上できることを示した。 (3) 電極材料として、カーボンブラック、CNT 及び水溶性CNT を用いてMEAを作製し、PEFCにおける出力特性を比較検討した。その結果、CNT を用いてMEAを作製することにより最も出力特性を向上できることを明らかにした。一方、水溶性CNTを用いたPEFCでは、出力がほとんど得られなかった。 (4) 触媒である白金の粒径サイズがPEFC出力特性に及ぼす影響を検討した。その結果、粒径が小さいナノサイズの白金微粒子を使用することによって出力特性が向上した。特にナノサイズの白金微粒子を担持させCNTを用いてPEFCを作製することにより出力特性が極めて改善できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するために、平成24年度は以下の研究計画に基づいて研究を遂行した。 【固体高分子型燃料電池の動作特性における水溶性ナノカーボンの効果】水溶性ナノカーボンの効果を検討するために、一般に利用されている電極材料であるカーボンブラックを用いた実験との比較により研究を遂行した。具体的には以下の要領で実施した。 (a)固体高分子型燃料電池の作製と動作特性試験:固体高分子型燃料電池の電極材料として種々のカーボン電極材料(カーボンブラック、CNT、ナノホーン、水溶性CNT)を用いて膜電極接合体(MEA)を作製する。このとき電極材料と塩化白金酸及び固体高分子膜溶液(ナフィオン)の混合溶液を超音波分散することでカーボン電極材料へ白金を担持させる。超音波分散によるこのプロセスは、平成25年度に実施予定のパルスパワー放電を用いたハイブリッドナノカーボンの創製技術の研究と比較するためである。なお、超音波分散には本年度研究費で購入した超音波分散機を用いた。作製したMEAを用いて固体高分子型燃料電池の動作特性試験(電圧と電流密度の関係等)を行った。また、水溶性に関連して水分を含ませた水素の供給による効果も検討した。 (b)水溶性ナノカーボンの効果:動作特性試験の結果を踏まえて、水溶性ナノカーボンの効果を種々の分析装置(赤外分光光度計、X線光電子分光分析装置、走査型電子顕微)を用いた検討。 以上の研究計画項目(a)に対して「研究実績の概要」に記載した通り、当初の計画を概ね達成できている。水溶性CNTの効果が予想と反する結果が得られたが、非常に興味深い結果であるため、平成25年度に継続して検討を行う。(b)についても現在様々な評価分析を行っており、本研究を進展できていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究内容を継続するとともに、パルスパワー放電を用いた水溶性ナノカーボンの表面修飾及び固体高分子型燃料電池への応用の観点より、(1)固体高分子型燃料電池の動作特性における水溶性ナノカーボンの効果、(2)パルスパワー放電を用いたハイブリッドナノカーボンの創製技術の開発について研究する。(1)は、昨年度の継続内容である。(2)は本年度の新たな研究課題であり、ナノカーボンと白金触媒の混合溶液中でのパルスパワー放電条件(電圧、周波数、処理時間等)をパラメータとして、白金によるナノカーボンの表面修飾を行い、種々の分析装置を用いてナノカーボンと白金のハイブリッド化の可能性を探求する。本研究では、ナノカーボンと白金触媒の混合溶液として塩化白金酸溶液を用いる。この混合溶液中ではパルスパワー放電によって化学反応性に富む種々のラジカルやオゾン、衝撃波等が生成される。これらの放電生成物とナノカーボン及び白金との化学的な相互作用によってナノカーボンの水溶化と白金担持を試みる。生成された白金担持水溶性ナノカーボンを用いてMEAを作製し、固体高分子型燃料電池の動作特性試験を行なう。本研究では、放電パラメータなどを制御できる自作のパルスパワー電源(ブルームライン型及び磁気パルス圧縮型)を用いて、主に以下の項目について検討する。 ハイブリッドナノカーボンの創製における表面官能基の定量評価(フーリエ変換赤外分光光度計、X線光電子分光分析装置)、結晶構造の観察及び分析(TEM、SEM、ラマン分光器、X線光電子分光分析装置)および固体高分子型燃料電池における動作特性試験及び評価
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【当該研究費が生じた状況】 平成24年度は、概ね当初の研究計画通りに研究を遂行することができた。そのため、平成25年度に実施予定の下記の研究課題を平成24年度に実施することも検討したが、時期的な問題(年度末)で備品の購入(高電圧プローブ)が困難であるため、研究費を次年度に繰り越した。 【翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画】 平成25年度の主な研究課題として、ナノカーボンと白金触媒の混合溶液中でのパルスパワー放電を利用した白金によるナノカーボンの表面修飾技術(ナノカーボンと白金のハイブリッド化)の構築に関する基礎研究を実施する。液体中でパルスパワー放電を発生するためには、パルス高電圧を必要とする。パルスパワー放電条件(電圧、周波数、処理時間等)をパラメータとして研究を遂行する際には、パルス高電圧の測定が必要不可欠である。そのため、「次年度使用額」の主な用途は、パルスパワー放電現象の研究を遂行するために必要な「高電圧プローブ」を購入するためである。この購入予定の「高電圧プローブ」を用いて研究を遂行することが可能となる。
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