2013 Fiscal Year Research-status Report
遠隔操作する対象物にワイヤレス給電できるミリ波送電システムの開発
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24560358
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Research Institution | Toyota National College of Technology |
Principal Investigator |
安藤 浩哉 豊田工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (30212674)
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Keywords | ワイヤレス電力伝送 / ミリ波 / マイクロ波 / 移動体 / 暗号化 / ガウシアンビーム |
Research Abstract |
回転楕円体面アンテナを距離1.5mを隔てて対抗させてガウシアンビームを利用したワイヤレス電力伝送路(ガウシアンビーム伝送路)を設計・製作した.具体的には,周波数18GHz~20GHz(電磁波の波長15.0mm)での電力伝送を想定して,設計・製作を行った. 位置zでのガウシアンビームのビーム半径w(z)と電磁波の曲率半径R(z)は,それぞれ,w(z)=w0×sqrt(1+(z/zc)^2),R(z)=z+(zc^2/z) という式から計算できる.ここで,zcとw0は,それぞれ,共焦点位置(confocal distance)とビームウエスト半径である.これらの式を用い(ガウシアンビーム伝送路の各場所でのビーム半径と電磁波の曲率半径に着目して)今回のガウシアンビーム伝送路は設計された.回転楕円体面アンテナとあわせてホーンアンテナが用いられるが,今回の設計・製作には,開口部での電磁波の曲率半径が113mmで開口部でのビーム半径が22.4mmと見積もることのできるホーンアンテナを用いた.ホーンアンテナに関わるこれらの値から,ホーンアンテナから放射されるガウシアンビームのビームウェイストの位置と開口部の距離が52.6mm,ビームウェイストでのビーム半径が16.4mmと計算された.このビームウェイストの位置から400mmの位置に回転楕円体面アンテナを配置することを想定すると,回転楕円体面アンテナの位置での電磁波の曲率半径とビーム半径が,それぞれ,408mmと11.8mmと計算できた.これを距離1.5mを隔てた同じ構造のアンテナと結合させるには,曲率が785mmの回転楕円体面のアンテナを用意(曲率半径が10.4mの電磁波に変換)すれば良いことが分かった. 上記の数値の電力伝送路(アンテナ直径40cm)を制作し,伝送路全体の伝送効率が18GHz~20GHzで10%~20%であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は-20dB以下の伝送効率を確認するに留まっていたが,今回は,同軸と同軸/導波管変換器とホーンアンテナから構成される一次放射器を用い,回転楕円体面を有するアンテナをアルミ板を切削加工して制作し,電力伝送路の設計・製作をおこなった結果,全長1.5mの伝送路全体の伝送効率が18GHz~20GHzで10%~20%であることを,実験的に確認した. 今回のガウシアンビーム伝送路でホーンから放射している電力を100%とすると,計算上は,ホーン→楕円面→焦点面の間の電力伝送効率が78.62%であり,ホーンによるブロッキングが15.9%である.したがって,これらを対向させた今回のワイヤレス電力伝送路(ガウシアンビーム伝送路)全体の電力伝送効率は約40%であると見積もられる.計算値と実験値の差異に関する考察はまだであるが,壁掛け時計を動作させるのに必要な小電力を送るための電力伝送路が制作できた.さらに,今回作成した回転楕円体面のアンテナには,移動体に電力を送電するために必要な光軸を合わせられるような仕組みが細工されている. 効率の良い整流回路の製作がまだできてはいないが,実用に耐えうる電力伝送路(ガウシアンビーム光学系)が開発できており,目標に向けておおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,今回のガウシアンビーム電力伝送光学系が18GHz~20GHzの周波数で使えることが実験的に確認できているので,通常のSMAコネクタを用いることができる18GHz近辺の周波数で整合回路を設計し,壁掛け時計ではなくLEDに高効率で電力をワイヤレスで給電する実験を行う.また,1.5mの伝送路の長さが若干変化した際の影響を調べる.さらに,これと並行して,アルミの薄板等で軽量な回転楕円体面のアンテナをクワッドコプターで持ち上げ,位置決め制御をする実験を行う.さらに,上記のものを組み合わせて,ガウシアンビーム電力伝送光学系によって送られた電力のみでクワッドコプター上のLEDを点灯させる実験を行い,どの程度の範囲でLEDを点灯させるのに有効な電力伝送が行えるのかを確認する. 次に,送電側の向き等の情報をIEEE 802.11i等に準じて暗号化して,クワッドコプター側に送り,電力伝送路上の適切な位置にクワッドコプターを移動・静止させ,LEDを点灯させることができることを確認する. システムの開発に必要な議論や研究成果の発表を行うための国内出張旅費(名古屋⇔東京,名古屋⇔大阪 等),研究成果の発表のための海外出張旅費(日本⇔米国 等)としても使用する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ガウシアンビーム電力伝送系の準光学的な設計や光学系に使用する重量が10kgを超える回転楕円体面鏡の製作に時間を要し,それ以外にかかる物品の購入や研究発表関係に関わる予算執行が次年度となる見込みとなったため. 次年度使用額は,ガウシアンビーム電力伝送系改良ための材料費,電力伝送系以外にかかる物品の購入,研究発表関係に関わる経費として使用する.
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