2012 Fiscal Year Research-status Report
直接熱窒化層を用いたSiCMIS構造の作製と電力用FETへの応用
Project/Area Number |
24560371
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上村 喜一 信州大学, 工学部, 教授 (40113005)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | SiC / MOS / FET / 窒化 |
Research Abstract |
直接熱窒化法の確立により電力用SiCMISFET開発にブレークスルーをもたらすことを目的に,窒化後に堆積法で絶縁膜を形成することにより実用的な絶縁膜厚と良好な界面特性を持つSiCMIS素子を実現するため,24年度は主に高品位エピタキシャル基板を使用した堆積SiO2膜/直接窒化層/SiC構造の界面特性評価を行った。本助成金により,高品位なエピタキシャル基板を購入し, MIS型ショットキー接触の電気的特性を利用した界面解析方法の確立,金属/直接窒化層/SiC構造の作製と界面特性の最適化,堆積SiO2/SiC MISダイオードの作製と界面特性の解析等の実験を行った結果,以下の点を明らかにすることができた。 (1) あらかじめSiC表面に窒化層を形成することにより,界面準位密度を低くすることが可能である。 (2) SiO2膜を堆積する過程でSiC表面の窒化層が酸化されSiO2となる。直接窒化層は化学的に安定とは言えず容易に酸化される。 (3) 堆積SiO2膜との界面特性は基板濃度に依存し,高ドナー濃度基板の方が低い界面準位密度となる。 これらの成果は,SiCに関する国際会議(ECSCRM2012:ペテルブルグ)において発表され,評価を得た。熱酸化で形成したMOS構造では界面準位密度の低減に限界が見られており,堆積法に対する期待は大きい。さらに新たな試みとしてアンモニアを用いる窒化方法に加えてグロー放電プラズマを用いる窒化方法を開発し,この方法による表面直接窒化が界面特性の向上に有効であることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の24年度計画である堆積酸化膜/直接窒化層/SiC構造に関して,基本的な評価によりその可能性を示すことができた。とりわけ,高品位エピタキシャル基板を使用したことの効果は大きく,容量電圧特性の変化幅がより大きくなり,説得力のある基礎データを得ることができた。この結果,これまで見かけ上,容量電圧特性の変化幅が小さいためデータ自体の信頼性が疑われて来た点を解決できた。加えて,基板の結晶欠陥による界面特性の影響を無視することが可能となり,プロセス自体の効果をより正確に評価できた。 しかしながら,基板の品位を高くしたことの影響は実験結果の信頼性向上以外は明らかではなく,プロセスパラメータ等の効果に関してはこれまでの結果を確認したことに留まった。逆の見方をすれば,基板品位に問題があったこれまでの実験結果の有効性が確かめられたと言える。 堆積酸化膜/直接窒化層/SiC構造に関して詳細に界面評価を行った結果,これまでの一般的な認識に反して直接窒化層が化学的に安定ではなく,容易に酸化されることを見出した。ただし,この酸化は界面特性向上に対しては有効に作用し,窒化後に酸化されることにより界面準位密度が減少する傾向が示された。また,これまでの方法では窒化層の形成が不十分であり,さらに反応性を向上させてより厚い窒化層を形成する必要性が示唆される結果が得られた。これらの結果を考量し,新たな試みとしてプラズマ窒化による直接窒化を試み,アンモニアによる方法と同等またはそれ以上の界面特性が得られる可能性を確かめた。 以上のように,ほぼ計画通りの結果が得られている。新たに開始したプラズマによる直接窒化はこれまでの結果を超える効果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
堆積SiO2/直接窒化層/SiC構造をゲート絶縁膜に用いたMISFETの作製と高い電界効果移動度の実現のための基礎技術を確立することを目的として,プラズマ窒化法により形成した直接窒化層による堆積SiO2/直接窒化層/SiC構造の作製と界面特性の評価を進める。 堆積SiO2膜とSiC界面に直接窒化層を介在させることにより,より安定で界面準位密度の低い良好な界面特性を実現できる見通しが平成24年度の結果から明らかとなった。堆積法では,基板となるSiC表面の状態で界面特性が大きく変化すため,熱酸化により極薄酸化膜を界面制御層として挿入する方法がしばしば用いられている。これらに対して本研究では,直接窒化層を界面制御層として用いることを提案し有効性を実証したが,単なる熱窒化では窒化層の形成が不十分であり,より反応性の高い形成方法が必要であることが示唆された。このため,グロー放電プラズマを用いた窒化装置を作成し予備的な実験を行った結果,界面層の形成としては熱窒化を超える効果が得られる可能性が示された。そこで,この方法について詳細な検討を行うことにより実用的な界面特性の実現を図る。 さらに,堆積法によりSiCへのソース・ドレイン電極の基本構造であるpn接合を形成し,ソース・ドレイン電極としての特性を評価する。一般的にはイオン注入による電極形成が主流であるが,プロセス全体を考慮するとより低温過程で形成可能な堆積法による電極形成も詳細に検討する必要があると考える。 これらの結果を総合して,堆積SiO2/直接窒化層/SiC構造をゲート絶縁膜に用いたMISFET作製のための基本技術を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度,実験の進展にあわせて注意深く助成金を使用した結果,次年度使用額11,205円が生じている。これを25年度申請額とあわせて本年度使用する。 本研究の主要な研究費は,SiC 基板の購入費である。平成25年度は新たにソース・ドレイン電極のpn接合について検討するため,p形4HSiC単結晶基板を購入する。現在安定的に基板を供給している米国のCree社から入手するが,為替レートが円高傾向にあることから,標準的な基板2枚で概ね600千円を要すると見込まれる。MOS構造の界面解析に要する基板は,平成24年度購入したものを再生・再利用する。 また,平成24年度の使用状況から,実験を継続するための原料ガス,キャリアガス等の高純度ガス類,有機溶剤,酸・アルカリ類,反応装置改良のための配管部品類等の消耗品類で711千円を要する。 今年度宮崎市で開催されるSiC 研究の最も中心的な国際会議ICSCRM2013(International Conference on Silicon carbide and Related Materials 2013)において研究成果を発表するとともに最新の研究に関する情報収集を行う。このための参加費等を含めて旅費として300千円を要する。 以上のように,本助成金の主要な使途は実験を継続するための消耗品類,単結晶基板ならびに成果発表のための旅費である。
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Research Products
(3 results)