2013 Fiscal Year Research-status Report
直接熱窒化層を用いたSiCMIS構造の作製と電力用FETへの応用
Project/Area Number |
24560371
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上村 喜一 信州大学, 工学部, 教授 (40113005)
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Keywords | 炭化ケイ素 / 直接窒化 / プラズマ / 電界効果トランジスタ / 界面準位 |
Research Abstract |
直接熱窒化法の確立により電力用SiCMISFET開発にブレークスルーもたらすことを目的に,窒化後に堆積法で絶縁膜を形成した構造を用いて実用的な絶縁膜厚と良好な界面特性を持つSiCMIS素子を実現するため,25年度は主にプラズマ窒化法によるSiC表面の直接窒化について検討するとともに高品位エピタキシャル基板を使用した堆積SiO2膜/直接窒化層/SiC構造の界面特性評価を行った。本助成金により配管部品類等を購入することにより,プラズマ窒化装置の製作と調整を行い,SiC表面の直接プラズマ窒化に関する基礎実験を行うとともに,堆積SiO2/SiC MISダイオードの作製と界面特性の解析等の実験を行った結果,以下の点を明らかにすることができた。 (1) グロー放電により窒素をプラズマ化することにより,単なる熱窒化にくらべ窒化反応の反応性を高めることが可能であり,より低温でSiC表面に窒化層を形成することが可能であることが確かめられた。 (2) SiC表面がプラズマに暴露されているにもかかわらず,窒化層とSiCとの界面特性は直接熱窒化と比較して著しい劣化は認められなかった。 (3) SiO2 膜とSiC界面に窒素プラズマによる窒化層を介在させることにより,界面順位密度を一桁程度低減することが可能であることを見いだした。 これらの成果は,SiCに関する国際会議(ICSCRM2013:宮崎)において発表され,評価を得た。熱酸化で形成したMOS構造では界面準位密度の低減に限界が見られており,堆積法に対する期待は大きい。さらに新たな試みとしてアンモニアを用いる窒化方法に加えてグロー放電プラズマを用いる窒化方法を開発し,この方法による表面直接窒化が界面特性の向上に有効であることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度計画であるプラズマ窒化による堆積SiO2膜/直接窒化層/SiC構造に関して,基本的な評価によりその可能性を示すことができた。とりわけ,プラズマ窒化装置の製作と調整を完了したことの効果は大きく,アンモニア等の不安定なガスを使用せずに安全で安価な窒素ガスのみで表面窒化が可能になったことの意義は大きい。さらに,この方法で作製した窒化層とSiCの界面特性に関する基礎データを得ることができた。この結果,これまで不可欠であった廃ガス処理装置が不要となり,コストと安全性をともに向上させることができた。このプラズマ窒化層をSiO2 膜とSiC界面に介在させることにより,界面順位密度を一桁程度低減することが可能であることを見いだした。 このように,窒化反応に関してはプラズマを用いることで向上させることが可能であったが,SiCとの界面特性に関してはアンモニアを用いた直接熱窒化の場合と同程度の結果に留まり,プラズマ窒化法の優位性を示すことはできなかった。逆の見方をすれば,プラズマ暴露という比較的過酷な反応条件を用いたにもかかわらず,SiC表面は熱平衡下のアンモニア熱窒化と遜色のない特性が得られたとも言える。堆積SiO2膜/プラズマ窒化層/SiC構造に関して詳細に界面評価を行った結果,界面準位密度は堆積SiO2膜/アンモニア熱窒化層/SiC構造の場合とほとんど同等であった。 一方,窒化層への酸素の混入が問題点として残されている。プラズマ窒化ではアンモニアを用いた熱窒化に比べ,窒化層への酸素の混入割合が高い。反応温度や放電電力を増すと,酸素混入割合がより高くなる傾向が現れた。 以上のように,ほぼ計画通りの結果が得られている。これらに基づいてFET試作のためのp-形基板の購入やマスク設計を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
堆積SiO2/直接窒化層/SiC構造をゲート絶縁膜に用いたMISFETの作製と高い電界効果移動度の実現のための基礎技術を確立することを目的として,プラズマ窒化法により形成した直接窒化層による堆積SiO2/直接窒化層/SiC構造の作製と界面特性の評価を進める。 堆積SiO2膜とSiC界面にプラズマ窒化層を介在させることにより,アンモニア熱窒化層を用いた場合と同程度の安定で界面準位密度の低い良好な界面特性を実現できる見通しが平成25年度の結果から明らかとなった。堆積法では,基板となるSiC表面の状態で界面特性が大きく変化するため,熱酸化により極薄酸化膜を界面制御層として挿入する方法がしばしば用いられている。これらに対して本研究では,直接窒化層を界面制御層として用いることを提案し有効性を実証したが,単なる熱窒化では窒化層の形成が不十分でありより反応性の高い形成方法が必要であることが示唆された。このため,グロー放電プラズマを用いた窒化装置を作製し実験を行った結果,界面層の形成としては熱窒化を超える効果が得られた。酸素の混入の排除や界面特性の向上について検討を行うことにより実用的な界面特性の実現を図る。 さらに,MOSFETを実現するため堆積法によりSiCへのソース・ドレイン電極の基本構造であるpn接合を形成し,ソース・ドレイン電極としての特性を評価する。一般的にはイオン注入による電極形成が主流であるが,プロセス全体を考慮するとより低温過程で形成可能な堆積法による電極形成も詳細に検討する必要があると考え,多結晶Siとのヘテロ接合を用いることを計画している。 これらの結果を総合して堆積SiO2/直接窒化層/SiC構造をゲート絶縁膜に用いたMISFET作製のための基本技術を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
p形SiC基板を当初予定していたエピタキシャル基板から通常のウェーハに変更して予算の効率的な使用を図ったことにより,次年度使用額が生じた。 当初計画の平成26年度分総額800,000円中の物品費650,000円に次年度使用学額14,624千円を加えて664,624円とし,実験に不可欠な酸・アルカリ類等の購入に充てる。(平成26年度総額814,624円)
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Research Products
(4 results)