2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560373
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
飯田 和生 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80135425)
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Keywords | 絶縁材料 / トリー / 劣化抑制 / 耐電圧寿命 / 金属水酸化物 |
Research Abstract |
金属水酸化物のトリーイング劣化抑制剤としての効果をエポキシ樹脂に3種類の金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト)を充填剤として加えた複合体で確かめたので、トリー進展に対する抑制効果に影響を及ぼす要因について実験的に確認するとともに得られた結果の分析から抑制効果の機構について検討を進めた。トリーに曝された水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムともに形態変化は大変大きいものの、水酸化物から酸化物へと変化しているのは充填剤の表面から0.2μm程度のごく薄い層に留まっていることが、TEMを利用した電子線回折分析から分かり、充填剤全体がトリー進展の抑制に効く訳ではないことが明らかになった。 当初計画にはあげていなかった充填剤であるが、高温になると脱二酸化炭素・吸熱反応を生じる炭酸カルシウムについてもトリー抑制効果を持つことが確かめられた。ただ、その効果は水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムに比べると小さかった。これには、反応温度がエポキシの熱分解が生じる温度よりも高いことと界面の接着性の良否のどちらが関係しているのかは現在検討中であるが、トリー抑制剤として金属水酸化物以外にも金属炭酸塩も使えることが明らかになり、母材となる樹脂の分解温度と充填剤の分解温度の最適化の可能性が広がったものと考えられる。得られた結果は電気学会の研究会などで発表するとともに、水酸化マグネシウムに関して得られた結果は電気学会論文誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第1の目的である金属水酸化物がトリーに曝されたときに吸熱・脱水反応を起こしてトリー進展を抑えるトリー劣化抑制剤として機能することは確かめられた。また、その抑制機構の根幹を構成する現象である吸熱・脱水反応が起こっていることを、充填した水酸化マグネシウムの一部が反応生成物である酸化マグネシウムの検出したこと、絶縁破壊直の部分放電による試料温度上昇もエポキシ樹脂単独試料よりも低いことなどから証明することができた。 金属水酸化物のトリー劣化抑制効果には脱水・吸熱反応の際の吸熱エネルギーの大きさ、反応が起こる温度と母材樹脂の分解温度の関係、金属水酸化物と樹脂との密着性が大きな影響を及ぼすことが分かった。 金属水酸化物以外にも高温になると吸熱反応を伴いながら分解する金属炭酸塩もトリー抑制剤としての機能を発揮すること見いだしたのは当初計画以上の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
金属水酸化物あるいは金属炭酸塩を充填した高分子複合体のトリー劣化を通じた耐電圧寿命に大きな影響を及ぼす要因として、1.充填剤の吸熱・脱水反応の際の吸熱エネルギーの大きさ、2.反応が起こる温度と母材樹脂の分解温度の関係、3.金属水酸化物と樹脂との密着性の3つがあることが分かった。 今後は耐電圧寿命に影響を及ぼす要因と考えられることを一つ一つ実験により確認を行いながら、まずはエポキシ樹脂に対して最適な充填剤の種類、粒径、表面処理方法、分散状態を明らかにし、その他の樹脂へと展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験用の材料費の購入金額が予定より安く抑えられたため、繰り越しました。 次年度の交付金と合わせて消耗品として使用する予定です。
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Research Products
(4 results)