2013 Fiscal Year Research-status Report
タリウム系化合物が示す局所的な巨大光誘起変形現象の起源解明とその応用
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24560381
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
沈 用球 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20336803)
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Keywords | 多元化合物半導体 / タリウム化合物 / 光熱変換 / 誘電率スペクトル / 光駆動アクチュエーター |
Research Abstract |
平成24年度の研究実績を元に平成25年度は3元タリウム化合物の光誘起変形効果の応用に向けた性能評価を詳細,広範囲な条件で行った。また,本効果の原因解明に向けた実験及びシミュレーション計算を行い考察し,光駆動機構の開発に向けた実験も行った。 鎖状タリウム化合物(TlInSe2,TlGaTe2,TlSe)に関しては,前年度の膨張率評価に加えて,局所性および時間応答性を評価した。その結果,光照射スポット付近では1秒以下の時定数で変形を示し,比較的速い応答性を持つことから実用への可能性を示した。本結果を国際会議,国内学会で発表を行った。 一方,層状構造を持つタリウム化合物(TlInS2,TlGaSe2)についても,光誘起変形の定量的な評価を行った。その結果,層状型タリウム化合物において,鎖状型よりも大きな変形率を局所的に示すことを明らかにした。また,その応答性においても,鎖状型と同程度であり,光駆動機構としての高い性能が期待できることを示した。 有限要素法によるシミュレーション計算により,光照射時の熱膨張による変形量を見積もった結果,タリウム化合物の低い熱伝導性が大きな局所的変形の要因と予想できた。この結果から,タリウム化合物より低い熱伝導率を持つ材料(BiTe系化合物)と比較実験を行ったが,タリウム化合物のような局所的な光誘起変形効果は見られなかった。このことから,熱伝導率以外の要因も考慮する必要があることがわかった。 3元タリウム化合物の基礎物性評価として,光学遷移エネルギーとバンド構造計算結果との比較から,光学遷移の起源を明らかにした。また,光学遷移エネルギーの温度特性から各タリウム化合物の相転移とバンド構造変化の関係について示し,その成果を発表した。 光駆動アクチュエーターの開発の予備実験として,光誘起変形効果によるマイクロサイズのシリカビーズの駆動実験を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定していた研究内容は,本現象の原因解明に向けた「シミュレーション計算」と時間応答を評価する「過渡的応答計測」である。有限要素法によるシミュレーション計算により,各物性パラメータと変形現象の関係性を検討し,低熱伝導率が重要なパラメータであることを明らかにしており,その目標は達成している。過渡的応答時間計測は,ナノ秒パルス光を用いた過渡応答計測を平成24年度に既に実施している。平成25年度は,CW光照射時の変形の時間応答について研究を行い,光スポット中心では,1秒以下の応答時間で変形が生じていることを示し,光駆動機構への応用に向けた性能を明らかにした。今後,光誘起弾性波の過渡的応答計測も検討が必要であるが,まずは,実用性検討に向けた変形の応答時間に関する実験を優先し,その目的を達成している。 平成24年度に達成できていなかった光誘起時の試料の結晶構造調査については,ラマン散乱測定を用いて評価しており,構造相転移や結晶構造の変化が,光誘起変形現象の要因ではないと推測できる結論を得ている。 また,平成26年度課題である,「新光駆動機構用材料としての性能実証」に関する研究の予備実験として,シリカビーズの駆動実験を開始している。 このように,当初予定の研究課題の時期的な前後はあるが,全体的には,順調に研究は進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成26年度は,本研究の目標である光誘起変形現象を用いた光駆動素子の実証実験を中心に研究を遂行する。まず,平成25年度から準備を進めている,マイクロサイズの物質を光により駆動させる光駆動機構を構築し実証する。また,片持ち梁を利用したマクロサイズの駆動機構構築も試みる。さらに,マイクロ流路の光による非接触の遠隔液流制御機構の構築も試み,実証実験を行う予定である。 基礎物性的な観点からは,熱伝導率だけでなく,弾性係数の温度特性など他の物性にも着目し,本現象の要因解明に向けた研究を継続する。 最終年度として,本研究の成果を総括するとともに,適宜,得られた成果を学会発表や論文発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に繰越金が生じているが,これは,平成24年度から25年度への繰越金が多かったためであり,繰越金額総額としては,光誘起変形効果の可視化を目的として,新たにデジタル顕微鏡やポンプ光の強度プロファイル測定用のビームプロファイラーを導入することで,圧縮している。 平成26年度は,応用に向けた実証研究を遂行するため,光駆動機構構築のための部品,材料購入費に研究費を充てる。また,このためのタリウム化合物の加工費にも用いる。特に,平成25年度からの繰越金は,当該年度に導入できなかった,波長の異なるポンプ光用レーザー光源の購入に充てる予定である。 また,得られた成果の発表を行うための旅費,論文投稿費も計上する。
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[Journal Article] Electronic structures of ternary-layered semiconductor TlGaSe2 investigated by photoemission spectroscopy2013
Author(s)
Satoru Motonami, Kojiro Mimura, YongGu Shim, Kazuki Wakita, Hitoshi Sato, Yuki Utsumi, Shigenori Ueda, Masashi Nakatake, Kenya Shimada, Yukihiro Taguchi, Keisuke Kobayashi, Hirofumi Namatame, Masaki Taniguchi, Guseyn Orudzhev, and Nazim Mamedov
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Journal Title
Physica satus solidi C
Volume: 10
Pages: 1001-1004
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Photoluminescence of TlGaSe22013
Author(s)
Masashi Hagiwara, YongGu Shim, Kazuki Wakita, Oktay Alekperov, and Nazim Mamedov
Organizer
The 4th International Symposium on Organic and Inorganic Electronic Materials and Related Nanotechnologies
Place of Presentation
石川県立音楽堂,金沢
Year and Date
20130617-20130620
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