2012 Fiscal Year Research-status Report
光吸収層を持つ新規圧電体の開発とレーザ誘起衝撃波・電界パルスによる遺伝子導入
Project/Area Number |
24560384
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
會澤 康治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (40222450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小木 美恵子 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (50410288)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 圧電体 / レーザ / 衝撃波 / 電界 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
平成24年度は圧電体と光吸収材との組み合わせとレーザ誘起衝撃波および電界パルスの測定を通して「光吸収層を持つ圧電体」の基本特性を把握した。また従来構造のレーザ誘起衝撃波素子を用いた実験を行い、細胞生存率や導入効率など細胞に与える影響を検証した。 研究目的を遂行するためには、生体に衝撃波(パルス応力)と同時にパルス状の電界を印加する必要がある。本研究では、生体を2枚の圧電体(音響インピーダンスが生体に近いPVDFを用いる)で挟み込み、一方の圧電体に光吸収材として黒色ゴムを用いた衝撃波発生素子を取り付けた構造を提案した。実験では、電極が付いたPVDF圧電膜(各厚さが9、40、200μm)を用いて擬似生体(厚さ0.5mmPET膜)に印加される電界強度を測定した。厚さ200μmのPVDF膜を用いた構造に、レーザフルエンス2.8 J/cm2のパルスレーザ照射により発生した衝撃波を加えたところ、ピーク強度がおよそ84kV/m、時間幅がおよそ1μsの電界パルスが擬似生体に印加できることを確かめた。またPVDF膜は厚いほど大きな電界を印加でき、かつこの電界パルスは2枚のPVDF間を電気的に短絡することで発生できることなどが分かった。以上のことから提案した構造は、衝撃波と電界パルスの同時発生に有効であると結論した。 次に従来構造のレーザ誘起衝撃波素子において、光吸収材(黒ゴム)の厚みを薄くした場合に発生する衝撃波の特性を調べた。黒ゴムの厚みを従来の0.5mmから0.05mmまで薄くしたところ、同一レーザ照射条件においてピーク強度を約2倍、波形立ち上がり時の傾きを約2.5倍大きくすることに成功した。衝撃波による細胞への物質導入において、本研究結果は大変重要である。本研究では、厚さ0.07mmの黒ゴムを用いたHeLa細胞へのFITCデキストラン導入実験において、取り込み作用の亢進を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画は、①「光吸収層を持つ圧電体」の検討と基本特性の把握と②従来構造との比較実験から細胞への影響を実験的に検証することであった。 ①に関しては、2枚の圧電体を生体で挟み込む新構造を提案し、その有効性を確認した。②に関しては、従来よりも薄い光吸収材とすることで、細胞への物質取り込みに有利なピーク強度と圧力勾配の増加に成功した。また薄い光吸収材による素子を用いたHeLa細胞へのFITCデキストラン導入実験を行い、デキストランの取り込み作用の亢進を実験的に確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、擬似生体を用いて電界効果の検証を行ったが、電界効果の培養細胞への影響や安全性評価までは十分に行えなかった。なぜならば、その実験を行うために適した培養容器が無かったからである。現在、この実験を行うための有力な培養容器が見つかったので、今後はこの容器を用いて電界効果の培養細胞への影響評価を行う。また同時に「光吸収材を持つ圧電体」と「レーザ誘起衝撃波・電界パルス発生素子」の完成を目指す。平成24年度は、光吸収材と圧電体を接着剤で接合していたが、従来構造の他に既設のスパッタ装置を用いて黒鉛などを圧電体上に接着層なしで形成した構造や接着層を光吸収層とする新構造も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用研究費は、主にトリパンブルー色素排除法による細胞生存率評価に用いたり、必要に応じて培養後の染色体検査による核型異常の有無を調べるために使用する。
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Research Products
(20 results)