2013 Fiscal Year Research-status Report
高品質な非c軸配向Bi-2223単結晶薄膜の作製と新構造高出力THz素子への応用
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24560386
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
遠藤 和弘 金沢工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50356606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立木 昌 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (20028111)
有沢 俊一 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導物性ユニット, 主幹研究員 (00354340)
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Keywords | テラヘルツ発振 / 高温超伝導 / 薄膜 / MOCVD法 / 配向制御 |
Research Abstract |
本研究で提案した新しいデバイス構造をもつテラヘルツ波の発振素子を実現するためには、高品質な非c軸配向のビスマス系銅酸化物の作製が不可欠である。我々は前年度に有機金属化学気相成長法(MOCVD法)によりビスマス系の各種超伝導酸化物、Bi-2201、Bi-2212、Bi-2223薄膜について、c軸、非c軸の配向制御に成功した。本年度はそれぞれの膜の高品質化を進め、最適な作製条件を明らかにするため、酸化物超伝導体の組成(あるいは単位胞中のCuO2面の数)、結晶の配向性、結晶基板の面方位、原料として供給するBi、Sr、Ca、Cuの有機金属や金属錯体の組成比、および成膜中の基板温度に着目して、各々の相関を調べた。その結果、(115)Bi-2201、(117)Bi-2212、(119)Bi-2223の非c軸配向膜の低温作製に成功し、さらに高品質化を行う手法を格子エンジニアリングの視点から明らかにした。これと同時に、高品質な非c軸配向膜を作製するためには、評価手法の開発も必要である。とくに、本研究で提案している新しい構造のテラヘルツデバイスは、電極間でc面が繋がっていると発振しないので、双晶のない非c軸配向の単結晶膜を作ることが重要である。そこで、X線回折を用いた構造解析により非傾斜の基板上に成長させた(117)配向薄膜の評価を行い、c軸配向膜とは異なる2回対称の空間対称性を持つことを明らかにした。この結果、テラヘルツ発振に向けて、双晶のない非c軸配向の単結晶膜の作製が必要であることがわかり、低誘電率の傾斜基板を用いた成長機構の制御を検討した。また傾斜基板上に成長した非c軸単結晶薄膜を評価するため、X線回折の評価手法の開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新構造のテラヘルツデバイスの実現に不可欠な高品質非c軸配向膜を得るための、クリアーすべき課題が順次解決されている。
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Strategy for Future Research Activity |
高品質な非c軸配向膜の作製を進める。X線回折により、傾斜基板上の非c軸配向膜の構造解析を行う。また、非c軸配向の薄膜を走査SQUID顕微鏡で観察することにより、理論的に予測された発振のメカニズムの検証を行う。新しい構造のテラヘルツデバイスを試作し、発振動作を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度に向けて最適な作製条件の解明を続け、最高品質の非c軸配向の単結晶膜を作製し、これを用いた新しい構造のデバイスを試作する。傾斜基板の角度や薄膜の膜厚などを変えて行うため、実験の展開により消耗品の使用量が変わる。これを事前にできるだけ正確に予測することを試みた結果、次年度に繰越して、単結晶基板や原料などの消耗品代に充当することが良いと判断した。 主として、MOCVD法によるBi系銅超伝導薄膜作製用の有機金属・金属錯体原料、高純度アルゴン・酸素のガス原料、単結晶基板、およびデバイス構造作製用材料・部品の購入に使用する。その他、真空ポンプ用フォンブリンオイル、ガスケット、サセプター、石英トレー等、装置のメンテナンス材料の購入に使用する。
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