2012 Fiscal Year Research-status Report
エネルギーアシスト記録及び瓦記録方式ハードディスク対応超高速サーボ信号転写の研究
Project/Area Number |
24560394
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
杉田 龍二 茨城大学, 工学部, 教授 (20292477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小峰 啓史 茨城大学, 工学部, 准教授 (90361287)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ハードディスク / 磁気転写 / エネルギーアシスト記録 / 瓦記録 / ドメイン / サブドメイン |
Research Abstract |
エネルギーアシスト及び瓦記録方式等の次世代ハードディスクに対応できる超高速サーボ信号記録法を実現すべく研究を推進し,本年度は以下の成果を得た. 1.磁気転写法を次世代ハードディスクに対応できる性能にするためには,これまでに得られている転写特性を更に向上させなければならない.そのために,S/N 改善,特にノイズ低減を目的として,ハードディスクの消磁状態におけるドメイン構造を調べた.その結果,面内に磁場を印加して消磁した場合に,垂直に磁場を印加した場合と比べてノイズが低くなることが明らかになった.これはS/N的に,ビット転写法よりもエッジ転写法が優れていることを示している. 2.マスター媒体用磁性層の基礎検討として,CoPtスパッタ膜の磁気特性の膜厚依存性を詳細に調べた.その結果,CoPt膜の磁気特性は膜厚によって大きく依存することが明らかになった.膜厚が薄い場合には磁気転写に適した角型比1.0の垂直膜が得られるが,膜厚の増加に伴って垂直磁気異方性が低下する. 3.次世代ハードディスクは10kOe程度の高保磁力を有する積層構造からなることが推測されるので,そのような媒体に対する転写特性を計算機シミュレーションを用いて明らかにした.計算においては,磁気転写過程における,積層構造を有する記録層のソフト層とハード層の磁化の時間変化に着目した.転写磁場を印加すると,まずソフト層の磁化が反転し,次にハード層が反転すること,さらに,ハード層の磁化がソフト層の磁化に影響を及ぼすことが明らかになった. 4.ハードディスク記録層のドメイン構造のマイクロマグネティック計算を行った.その結果,1.で述べた,面内消磁の場合にノイズが低くなる原因はサブドメイン構造にあることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は当初,以下に説明する4項目に関する研究推進を計画した.上記,研究実績の概要の項に記載したように,必ずしも当初の研究計画と一致していない部分があるが,研究計画以上に進展した成果とそうではないものがあり,従来の転写特性を飛躍的に向上させエネルギーアシスト及び瓦記録方式HDへの超高速サーボ信号記録法を実現する,という本研究の最終目的に対して,概ね順調に進展していると考えられる.以下に当初計画した4項目のそれぞれについて概略を説明する. 1.高い垂直磁気異方性Kuと飽和磁化Msを有する積層膜を作製するための成膜条件についての検討:高いKuを有するCoPt膜,及びL10構造FePt規則合金膜の検討を行った.その結果,CoPt膜においては,上記,研究実績の概要の2に記載したような結果が得られ,FePt膜においては,成膜する際のガス圧,基板温度に関する検討を行い,垂直磁気異方性を有する膜が得られた. 2.平坦基板を用いた単層膜及び積層膜の作製,その磁気特性の基礎検討,パターニングされた基板上に作製した積層マスター媒体を用いた転写基礎実験:パターニングされた基板上に積層膜をスパッタした積層マスター媒体を作製し,転写実験を行った.その結果,積層マスター媒体を使用することにより,転写された信号のS/Nを改善できることが明らかになった. 3.極小スペーシング領域における転写実験のためのマスター媒体試作:磁性層表面に膜厚の異なる非磁性層をスパッタし,スペーシング依存実験を行うためのマスター媒体を作製した. 4.マイクロマグネティックシミュレーションを用いた,単層膜及び積層膜の磁区構造,磁化状態,転写特性の解析:シミュレーションの結果,上記,研究実績の概要の3及び4に記載した結果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後以下に示す内容の研究を計画している. 1.平成24年度に確立した成膜条件に基づいて,種々条件を変えて単層膜及び積層膜を作製する.単層マスター媒体及び積層マスター媒体を用いて,高保磁力ハードディスクへの転写実験を実施する.転写されたハードディスクを磁気力顕微鏡を用いて観察し,転写性能を評価する.転写実験においては,転写磁場強度と転写された磁化状態との関連に着目して,マイクロマグネティックシミュレーション結果と照らし合わせつつ検討を進める. 2.積層マスター媒体用高Ku磁性層の膜厚としては,10 nm前後が適していると推測される.積層マスター媒体において優れた転写特性を実現するためには,高Ku磁性層単層として優れている必要がある.そこで,膜厚10 nm前後の高Ku膜を作製し,その磁気特性,磁区構造を詳細に検討する.その際,マイクロマグネティックシミュレーションによる解析も併用する. 3.現状では,エネルギーアシスト記録対応HDあるいは瓦記録対応HDの特性や構造がまだ確定しておらず入手も困難なので,スレーブ媒体としての高Ku膜の作製検討を実施する. 4.エネルギーアシスト記録対応HDあるいは瓦記録対応HDの特性や構造はまだ確定していないが,ECC(Exchange Coupled Composite)構造の媒体が適しているものと考えられている.そこで,高保磁力を有するECC媒体への転写の際の磁化反転プロセスをマイクロマグネティックシミュレーションを用いて解析し,最適マスター媒体構造の指針を得る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用計画は,消耗品費(薄膜作製用ターゲット,磁気力顕微鏡用プローブ,磁気転写用治具など)90万円,旅費(成果発表のための学会出張,国際会議出張)40万円,合計130万円である.
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