2012 Fiscal Year Research-status Report
機能的半導体ヘテロ構造を持つ共鳴トンネルダイオードによるテラヘルツ発振器高性能化
Project/Area Number |
24560398
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 左文 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (40550471)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | テラヘルツ |
Research Abstract |
24年度では、共鳴トンネルダイオード(RTD)により、高速無線通信などのテラヘルツ(THz)アプリケーションに幅広く、そして簡便に用いることのできるTHz発振器の実現を目指し、素子の高周波化・高出力化を行った。 現在、RTDのトンネル領域滞在時間と空乏層走行時間で形成される遅延により、デバイスの応答が高周波で悪化し発振周波数が低下するため遅延減少が必要となっている。井戸幅の狭いRTDを用いれば、共鳴準位の上昇によるトンネル時間の短縮ができ発振周波数向上が期待できる。また、負性抵抗領域も広がり高出力化にも有効である。そのため、4.5nmから3.9nmに井戸幅を狭めた素子を作製し発振特性を測定したところ、0.7THzから1.31THzへと発振周波数が大幅に向上することが分かり、狭井戸化が周波数向上に有効であることが示せた。さらに、この結果から得られた素子のパラメータを用いた理論計算から、RTDとマッチングする最適なアンテナ構造を用いれば、500GHz帯においておよそ1mWが、1THzにおいても100μWが単体のデバイスから得られることが分かった。 この様な単純な狭井戸化では共鳴準位の上昇により必要なバイアス電圧も大きくなってしまうため、次に、初期実験として共鳴準位上昇をキャンセルしつつ遅延の短縮及び、負性抵抗領域の拡大が可能なIn組成の高いInGaAs薄膜井戸の提案と作製を行った。井戸のIn組成が0.8で厚さが3.5nmのものから、組成が0.9で厚さが3.0nmに狭井戸高In組成したところ、ほぼ変わらないバイアス電圧と1.5倍程度に拡大した負性抵抗領域が得られ、さらに発振周波数は960GHzから1.27THzに上昇した。前述の素子よりも周波数は低いのはコレクタ側スペーサ層が薄いためであり、この厚さの最適化を理論的に行ったところおよそ2THzの発振が得られることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究により、発振周波数は1.3THzまで得られている。この素子を用い、構造を最適化したアンテナを用いれば、数10Gbpsの大容量通信を行うには十分な500GHz帯で1mWの大きな出力が期待でき、25年度はその目標に向かい素子を作製する予定である。これには既に本研究室で培われ発展してきた独自のアンテナ構造を用い、既存技術で達成可能である。さらに当初目標に掲げた2THzの発振は、コレクタ側のスペーサ層厚さの最適化で可能と見積もられており、研究期間内に十分目標の達成は可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に行った理論計算から数10Gbpsの通信を行うのに必要な500GHz帯で1mWの出力はアンテナ構造の最適化により達成可能であるため、25年度はその構造を作製する予定である。また、コレクタ側のスペーサ層厚さの最適化により、2THz付近の発振を狙う。 これらに加えさらに25年度はバイアス電圧の低下のためのワイドエミッタ構造、コレクタ空乏層走行速度を観察するためのInAlGaAs/InPコンポジットコレクタ構造などの機能的構造を導入しさらなる高性能化を図る。高In組成化すると結晶の格子不整合が大きくなり、綺麗な結晶構造が作製出来なくなってしまうため、バイアス電圧を上げずにさらに狭井戸化するには他の構造が必要になっている。エミッタにワイドバンドギャップの半導体(InAlGaAs)を用いれば、準位が禁制帯に入り負性抵抗が発生する電圧が低くなるため低バイアス化が期待できるため、25年度はこの構造の導入を行う。低バイアス化が実現できれば、さらなる狭井戸化構造と組合せ周波数の向上を目指す。また、コレクタ側のスペーサ層を走行する速度が速くなれば高周波化につながるため、InPなどの異種の材料、また、InAlGaAsをそのAl組成を変化させながら多層化することにより電界を小さくした構造などを導入し、速度がどのように変化するかを見極め、速度向上の足がかりとする。速度上昇に必要な構造が分かればこれも従来構造に取り入れ、発振周波数の向上を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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